中国遼寧省の丹東、瀋陽、吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉などに長期滞在し、外貨稼ぎに精を出してきた北朝鮮の貿易駐在員たち。当局から与えられる厳しいノルマをこなす対価として、本国にいるよりは豊かで自由な暮らしを享受してきた。そんな生活を守るべく、違法行為に手を出す向きも少なくなかった。

ところが最近、彼らを取り巻く状況は悪化している。昨年来ほとんどの駐在員がノルマを達成できない状況だというのだ。

某国境都市に住むデイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、北朝鮮当局は、あまりの惨状に、駐在員に課すノルマを軽減する措置を取った。無理なノルマを押し付けると、自暴自棄になって脱北などの問題を起こしかねないからだという。軽減はされたが、それでもノルマ達成は難しい状況だと駐在員たちは訴えている。

ノルマ達成が困難になったのは、北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルの実験を繰り返していることに対して、国連や国際社会が厳しい経済制裁を行っているからだ。商品を売り込もうにも、北朝鮮のイメージが以前にも増して悪くなったため売れず、売れたとしてもその利益を銀行から送金することすらできない。

駐在員たちは毎年春、北朝鮮に帰国して「総和」――1年間の事業報告を強いられる。以前なら、成績の悪い人や問題を起こした人以外は中国に戻ってきていたが、今年は戻ってこない人が多い。当局が、過当競争を抑えるために、駐在の数を大幅に減らしているからだとのことだ。

別の情報筋によると、帰国させられることは百も承知で、ノルマそっちのけで生活費を稼ぐことで必死になっている駐在員もいるという。

一方で、当局から課せられた年初の肥料調達のノルマを100%達成した人はほとんどいない状況なのに、今度は白頭山観光鉄道の建設費調達を指示され、駐在員は頭を抱えている。