トランプ政権の規制緩和方針によって、「ネットの中立性」が守られるのかに注目が集まっています。今回は、この動向に影響を受ける可能性がある企業について紹介します。

■揺らぐ「ネットの中立性」

 普段あたりまえのように使っているインターネットですが、行き交う情報や利用者が公平に扱われるべきという「ネットの中立性」が規制によって担保されていることにはあまり目が向けられていないでしょう。

 米国議会は先月、インターネット利用者のプライバシーに関する規制を破棄する法案を可決しました。これによってインターネットサービスプロバイダ(以下、ISP)は利用者のウェブ閲覧履歴を利用者の同意なく販売することもできるようになるという指摘があります。

 トランプ政権の規制緩和方針によって現在は「ネットの中立性」が守られていくのかという局面にあり、今後の動向によっては影響を受ける企業が出てくるかもしれません。本稿では「ネットの中立性」をキーワードに、「ネットの中立性」を守ってきたFCCの動向と、影響を受ける可能性がある企業について紹介しています。

■FCCの委員構成

 FCCとは連邦通信委員会(Federal Communications Commission)のことであり、米国内および国家間の電気通信・放送分野における規則制定、行政処分を行う、米国議会の監督下にある政府機関です。FCCは通信料金の審理・設定、通信事業の拡大・縮小・廃業の認可などを所管しており、係争者による主張や反論に対して聴取した上で裁定を下す権限もあります。

 新しい大統領が選出された場合には、FCC委員長が辞任するのが慣例となっています。オバマ政権下で委員長を務めたトム・ウィーラー氏の退任にともない、FCCは1月23日にトランプ大統領がアジット・パイ氏を指名したと発表しました。共和党に属するパイ氏は2012年5月からFCCの委員を務めており、後述する「ネットの中立性」に関してトム・ウィーラー氏と対立していたとされる人物です。

 FCCの委員は5人であり、大統領によって指名されますが、5人の委員のうち3人までは同じ政党に所属することができます。トム・ウィラー氏の退任の少し前にジェシカ・ローゼンウォーセル氏も委員を退任していますが、この2人は民主党系です。FCCに残る他の委員としては民主党系のミニョン・クライバーン氏と共和党系のマイケル・オライリー氏がいますが、パイ氏は共和党系なので3人の委員のうち、2人は規制緩和推進派の共和党系という構図になっています。

■「ネットの中立性」とは

 委員長の人事に注目が集まるのは、FCCが「ネットの中立性」の番人とも言える役割を担ってきたからです。ネットの中立性とは、インターネットの利用者やインターネット上を行き交うコンテンツなどさまざまなトラフィックについて、ISPや政府は公平に取扱うべき、という考え方です。

 FCCによるネットの中立性に関する規制としては、ISPが合法的なウェブサイトやサービスへのアクセスをブロックする行為、通信速度を引き下げる行為、特定のウェブサイトに有償で優遇措置を与えることがあり、ISPが自社系列のトラフィックを優遇することなども規制されています。

 前委員長のトム・ウィーラー氏はネットの中立性について厳格に規制してきたので、通信業者は批判的でしたが消費者団体からは支持を得ていました。今回、規制緩和を是とする共和党所属委員がFCCの多数派となったことで、オバマ政権下で守られてきたネットの中立性は守られなくなるかもしれません。パイ氏をトップとするFCCが通信業者に対する規制を緩和することが考えられるからです。

小野田 慎[著]