米社会の分断を煽って勝利を収めたトランプの余波が訪れ始めていると語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソン。

奴隷制には反対していたが、今では存在自体が白人至上主義者のアイコンとなっている、南部連合の軍司令官を務めたロバート・E・リー(リー将軍)について語る。

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19世紀のアメリカ南北戦争は、現在に続く北部=合衆国と、奴隷制存続を訴える南部=連合国が激突した内戦です。あれから約150年たった昨年の米大統領選で、ドナルド・トランプは米社会の“分断”を煽(あお)って勝利を収めましたが、その深刻な余波が訪れ始めています。

当時、南部連合の軍司令官を務めたロバート・E・リーという人物がいます。彼は南北戦争以前には合衆国軍の大佐でしたが、郷里バージニアが合衆国脱退を決めると(奴隷制には反対しながらも)強い郷土愛から南軍の指揮官となり、北軍を最後まで苦しめました。「リー将軍」の愛称で今も多くのアメリカ人、特に南部の白人から尊敬されています。

地元バージニアなど南部諸州には彼の名を冠した公園や銅像・記念碑などが無数にありますが、近年はそれを撤去する動きが広がっています。リー将軍を“顕彰”することは人種差別を助長しているのではないか、というのがその理由です。

大きな契機となったのは、2015年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で発生した銃乱射事件でした。襲撃犯の男が白人至上主義者で、南軍の象徴である南部連合旗を“信奉”していたことが判明し、各地の南部連合旗撤去と並行して、「リー将軍をたたえること」に対する反対運動も拡大したのです。

しかし、白人至上主義者や一部の保守層はこの動きに危機感を抱き、「黒人による歴史修正だ」と反発しました。“被害者たる黒人の目を通じた歴史”しか語ることが許されないのはおかしい―と。

もちろん、歴史に対する姿勢として、現在の価値観に合うものしか残さないというのは過剰です。白人であれ黒人であれ、大人が子供に「過去にはこういうことがあった」と語り継ぐことも必要でしょう。ただ、リー将軍や南部連合旗の存在が白人至上主義者の“よりどころ”となっているのも事実で、リー将軍をたたえる年に一度のパレードには、ネオナチや南軍兵士のコスプレをした連中も集まってくる。こうした“差別の源泉”を断つための対処療法として、仕方なくリー将軍の痕跡を撤去しているという事情もあるのです。

最近も、バージニア州シャーロッツビルの市議会でリー将軍の銅像撤去が決定されたのですが、その過程で象徴的な動きがありました。トランプ大統領を後押しする極右メディア「ブライトバート・ニュース」が、撤去賛成派の黒人議員をひどい人格攻撃で執拗(しつよう)に非難。今年行なわれる同州知事選に出馬予定の、“ミニ・トランプ”とも呼ばれる泡沫(ほうまつ)候補もこれに便乗し、リー将軍像を取り戻すとの公約を掲げているのです

彼はつい先日も、「俺はリー将軍をたたえるために『リー公園』に行く」とわざわざ宣言し、撤去賛成派のデモ隊との衝突をスマホ動画で生中継。「こんな罵声(ばせい)を浴びせるヤツらから、民主主義を守らなければいけない」と、もっともらしく語りかけるフェイスブックの投稿には、保守層から「いいね!」の嵐……。

トランプ大統領やブライトバート・ニュースが罪深いのは、「アメリカ人の本音」を盾に人間の差別意識をあぶり出し、社会の分断を深めたこと。これはそう簡単に元に戻せるものではありませんが、どう落とし前をつけるつもりでしょうか?

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など