三菱重工・宮永俊一社長(AAP Image/アフロ)

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 フランスの原子力大手アレバは、2月3日に開いた株主総会で総額50億ユーロ(約6000億円)の増資案を承認した。仏政府が45億ユーロ(約5400億円)をまかない、残りは三菱重工業と日本原燃が、アレバが設立する核燃料再処理会社のアレバNewCo(ニューコ)に5%ずつ出資する。

 アレバはフィンランドの新型原発の建設で費用が膨らみ、2016年12月期の純損失は6億6500万ユーロ(約800億円)と巨額だ。これにより6年間の累積赤字は105億ユーロ(約1兆2600億円)となった。そんなアレバに三菱重工と日本原燃が、それぞれ300億円の出資を決めた。

 当初、中国企業の出資が有力視されていたが、仏メディアによると、安全保障の観点から米国や日本政府が強い懸念を伝え、仏政府が断念したとされる。そこで、三菱重工にお鉢が回ってきた。アレバには廃炉技術がある。1月31日には関西電力美浜原発1、2号機の廃炉事業を三菱重工はアレバと共同で受注した。

 ただ、原発の輸出が目的なら、原子炉事業のアレバNPに出資するのが筋だ。1年以上前にアレバの救済が話題になった時、三菱重工はNPへの出資検討を表明していた。それにもかかわらず、原子炉製造を除くニューコに出資するのは、核燃料サイクル維持という狙いがあるとみられているからだ。日本原燃との共同出資が、この見方を裏付ける。日本原燃は、青森県六ヶ所村の再処理工場建設でアレバから全面的な技術協力を受けている。

 仏政府は外国企業に、NPへの出資を呼びかけている。ニューコに出資した三菱重工がその有力候補だ。

 三菱重工が期待をかけるのは、アレバと共同で開発する新型中型炉「アトメア1」だ。新幹線と並ぶインフラ輸出の要として、日本政府が後押ししてきた。だが、アトメア1の売り込みは、はかばかしくない。ベトナムでの採用が有力視されていたが16年11月、財政難から白紙撤回された。安倍晋三首相のトップセールスで、エルドアン・トルコ首相(現大統領)と結んだ「アトメア建設計画」も正式契約はまだだ。テロなど安全面の問題などが影響しているとされる。

 本業である造船の不振や“日の丸”旅客機、MRJの開発の遅れなど、経営上の重荷を抱える三菱重工にとって、ニューコへの出資がさらなる重石になることは避けられない。

●米原発事故の賠償金は141億円

 三菱重工は3月14日、米原子力発電所の事故をめぐり、米電力会社の南カリフォルニア・エジソン(SCE)から66億6700万ドル(約7500億円)の損害賠償を請求されていた問題で、仲裁機関の国際商業会議所(ICC)から損害賠償金を1億2500万ドル(約141億円)とする裁定を受けたと発表した。

 三菱重工は、契約上の上限は1億3700万ドル(約155億円)と主張。ICCは三菱重工の主張を認め、支払い済みの費用や金利などを調整した金額として1億2500万ドルを提示した。

 問題となったのは、カリフォルニア州のサンオノフレ原子力発電所。12年に三菱重工製の蒸気発生器の配管から放射性物資を含んだ水が漏れ、SCEが廃炉を決めていた。

 三菱重工はすでに損失を引き当て済みで、17年3月期の業績への影響は軽微とのコメントを出した。

 三菱重工の16年4〜12月期の連結決算は最終損益が112億円の赤字(前年同期は533億円の黒字)だった。同期間の最終赤字は、04年3月期に四半期決算の公表を始めてから初めて。航空機関連が振るわず採算が大幅に悪化した。

 17年3月期通期は、純利益が1000億円という従来予想を据え置いた。前期(638億円の黒字)に多額の特別損失を計上した大型客船事業の損失が減るためだ。

 米国の原発事故に絡み米電力会社から7500億円の損害賠償請求を受けていたため、年度内にも出る仲裁の結果次第では大幅な業績の下方修正の可能性があったが、三菱重工の主張がほぼ認められたことで、17年3月期への影響は軽微にとどまる。

 売上高は前期比1%減の4兆円、営業利益は22%減の2400億円の見込み。交通・輸送部門が赤字に転落する。同部門のセグメント営業利益は前期の545億円の黒字から250億円の赤字となる。航空機関連では米ボーイングなどの減産に伴い、販売が落ち込んだ。一方で国産初のジェット旅客機MRJ関連費用が膨らんだ。MRJが三菱重工の喉に刺さった骨となっていることがよくわかる。

 こうした厳しい環境のなかで、累積赤字が1兆円を超えるアレバに出資する。東芝は米国の原発子会社ウェスチングハウス(WH)の巨額赤字に巻き込まれ、今や存亡の危機に立たされている。三菱重工のアレバへの出資は東芝の二の舞になる懸念が強い。
(文=編集部)