リアルサウンド映画部

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 4月1日放送の『バイプレーヤーズ』を最後に、冬ドラマの放送がすべて終了した。視聴率は、日曜劇場『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)、水曜ドラマ『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)がワンツーフィニッシュ。「長年の放送実績を持ち、固定ファンのいるドラマ枠が勝つ」という想定内の結果に終わった。

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 その一方で、『カルテット』(TBS系)や『バイプレーヤーズ』(テレビ東京系)がクチコミで支持を得るなどの現象も見られ、「話題性では圧勝していた」と言っていいだろう。これこそが、現在の連ドラが抱えるジレンマなのかもしれない。

 全作の全話を見終えた今、頭に浮かんだのは、「脚本は無難、演出は個性の二極に進んでいるな」ということ。

■敢えて選んだ分かりにくさが魅力に

 まず脚本では、『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)、『嘘の戦争』(フジテレビ系)、『東京タラレバ娘』、『就活家族〜きっと、うまくいく』(テレビ朝日系)、『嫌われる勇気』(フジテレビ系)、『三匹のおっさん3〜正義の味方、みたび!!〜』(テレビ東京系)、『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)、『下剋上受験』(TBS系)、『A LIFE』と、大半の作品が、当初のイメージ通りに話が進み、フィナーレも無難な着地を見せた。

 現在の連ドラ界では、「高視聴率を狙うためには、分かりやすさが不可欠」が定説だけに、どの作品もそれを狙っていたことは間違いない。また、前期大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のような“いい人キャラ”ばかりの穏やかな作品が多かったのも、無難と感じた理由の1つ。『東京タラレバ娘』、『就活家族〜きっと、うまくいく』『下剋上受験』のような「すべての人々を尊重・肯定する結末」も目立った。

 その点、サスペンス、ラブ、ヒューマン、会話劇などの要素を混在させ、敢えて分かりにくさを追求した『カルテット』が熱狂を呼んだのは合点がいく。また、「バーター」「共演NG」などの業界話を虚実や自虐を交えて描いた『バイプレーヤーズ』の脚本も、視聴者の思考回路を試すような分かりにくさが魅力となっていた。

■「演出目当てで楽しめる」多彩な仕上がり

 一方、演出は作り手の個性を前面に出した作品が目白押し。

『突然ですが、明日結婚します』は、並木道子らが若者受けする鮮やかな色彩の映像を手がけた。
『嘘の戦争』は、三宅喜重らが得意のダークヒーローをドロドロではなくエンタメに昇華。
『カルテット』は、土井裕泰らが人間関係の距離感を繊細なカメラワークで描き分けた。
『東京タラレバ娘』は、南雲聖一らが最近の水曜ドラマで定番のアニメ演出を大胆に進めた。
『お母さん、娘をやめていいですか?』は、笠原友愛らが静かなトーンと美術でホラー要素を高めた。
『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)は、樹下直美や小松隆志らが80年代ドラマ風のドロドロ愛憎劇に。
『バイプレーヤーズ』は、松居大悟らがおじさんのじゃれ合う癒し空間を作り上げた。
『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)は、福田雄一が深夜ドラマのやりすぎ感を薄め、ゴールデン仕様にマイナーチェンジ。
『真昼の悪魔』(フジテレビ系)は、千葉行利らがバイオレンスとサイコパスの恐怖を間接的に描いた。
『A LIFE』は、平川雄一郎らが手術シーンのディテールやリアリティにこだわった。
『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)は、堤幸彦らがCGを多用したファンタジックな映像に、ギャグを織り交ぜた。

 前述したように、「無難な脚本が視聴率を取りやすい」という状況の中、「じゃあ、演出に個性を出して差別化しよう」ということなのだろうか。または、「無難な脚本だからこそ、演出で思い切り個性を出せる」という面があるかもしれない。いずれにせよ、演出目当てで楽しめるほど、多様な仕事ぶりが見られた。

■さらに思い切った演出への期待感

 『カルテット』『バイプレーヤーズ』がドラマの楽しみ方を広げただけに、視聴者は今後も無難な脚本ばかりになるようなら、不満の声をあげるだろう。「見たことのないような設定」「想像がつかない展開」「驚かされる結末」。脚本家の頑張りとプロデューサーの英断による無難な物語からの脱却を切に願っている。

 反面、演出に関しては、「春ドラマでも、やりがいとこだわりを持って個性的な演出を見せてくれるのでは」という期待感が増すばかり。個人的には、演出家の高齢化が叫ばれているだけに、「今がチャンス」とばかりに若手の起用やアイディアだけでも採り入れるなどのポジティブな姿勢を望みたい。

 『カルテット』『バイプレーヤーズ』は、「脚本・演出ともに個性を出した」ことで、視聴者に「分かりにくいものへの魅力」を感じさせた。もちろん視聴率獲得に全力を注ぐ作品があってもいいが、それだけでは物足りないことを冬ドラマが教えてくれたのではないか。(木村隆志)