今後の活躍が期待される原菜乃華

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 原菜乃華、13歳。あどけない笑顔でインタビューに応じたかと思うと、ひとたび芝居の話になるや表情が一変する。大きな目には意志の炎がともり、口元はキュッと引き締まる。女優の顔だ。4月1日から公開されている映画「はらはらなのか。」。またひとり、大きな可能性を秘めた新たな女優が生まれた。

 テレビ番組「おはスタ」の“おはガール”や、フジテレビ系ドラマ「朝が来る」で存在感を示した原が、本人役で映画初主演。「いいにおいのする映画」で注目を集めた新鋭・酒井麻衣監督がメガホンをとり、伸び悩む子役上がりの女の子・ナノカ(原)が、亡き母親が参加していた演劇集団「Z-Lion」の舞台「まっ透明なAsoべんきょ〜」のオーディションに挑み、“女優”へと成長していくイニシエーションを描いた力作だ。

 「まっ透明なAsoべんきょ〜」は実際に原が主演した舞台でもある。本人役であることを含め虚実皮膜の間を縫う「はらはらなのか。」は、劇映画、ドキュメンタリー、演劇、ミュージカルなどが複合した不思議な魅力を持ち、破綻することなく観客の心情にそっと寄り添う。撮影中に13歳の誕生日を迎えた原の、「少女から大人になる瞬間」という“一回性”も、作品にオーラを与えている。

 初主演が決まった瞬間は、歓喜と不安がない交ぜの複雑な感情を抱くもの。原も例外ではなく、「題名に自分の名前が入っているので、ビックリしちゃいました。嬉しい気持ちもありましたが、不安のほうが大きくて、毎晩寝られないくらいでした。お芝居をちゃんとできるかなとか、酒井監督に『芝居が違う』と言われてシーンが進まなかったらどうしようとか、そんなことばかり考えてしまいました」と吐露する。それでも、自分自身を演じることに「チャレンジできることが楽しみ」と興味を持ち、「主人公に『そうだよね、オーディションって緊張するよね』と、ずっと共感していました」と振り返った。

 酒井監督との初対面は、小学6年生の11月ごろ。「監督さんだと言われていない状態で、デートをしたんです。浅草でもんじゃ焼きを食べて、上野の博物館に行って、学校での生活や友だちとどんなことで遊ぶかとか、好きなグリム童話の話をしました」といい、「そのおかげで稽古や撮影で緊張せず、言いたいことを伝えられる関係になりました。撮影中は『このシーンをどう思う?』と聞いてくれたり、たくさんお話して、たくさん悩んで、たくさんのいいシーンが撮れたんだと思います」と姉妹に似た信頼を寄せる。

 約2週間におよんだ撮影では、初日のシーンに試練が待ち構えていた。劇団入りに反対し、庇護しようとする父(川瀬陽太)に、ナノカは憤慨。家を飛び出し、偶然出会ったリナ(松井玲奈)が営む喫茶店に泊まることになるが、差し出されたゼリーを口にした瞬間、ナノカの胸に安どと寂寥がいっぺんに押し寄せ、ポロポロと涙を流す。

 「監督にものすごく厳しいことを言われたんです。すごく悔しかったし、『もっとできると思う』と言われ、期待に応えなくちゃというプレッシャーもありました」。

 それまでは、ダメ出しを受けると「すぐ後ろ向きな気持ちになっていた」という原。しかし、今回は挫けることはなかった。「その次の日はラストシーンの撮影だったんですが、監督にも『よかったよ!』と言っていただける、自分でも納得いくお芝居ができたんです。悔しさをバネにできるようになれたこと、撮影中『いつまでもうじうじしていられない、がんばろう』という気持ちになれたことは、成長したところだと思います。後日、監督に『実は初日に悔しい思いをしてほしかったんだ』と言われて、『そうだったの!?』と驚きました(笑)」。

 黒い雨に打たれながら泣き叫んだり、ポップな歌唱とダンスを披露したり、喜怒哀楽あらゆる表情を見せたり……。今作のいたるところに、原が酒井監督とともに試行錯誤しながら、演技の可動域を押し広げていった痕跡が見て取れる。“成長痛”とも言える艱苦に耐え抜いたことで、大きな自信とさらなる意欲がもたらされた。

 中学生になり、勉強面では英語科目に苦労しているそうだ。あこがれの二階堂ふみと杉咲花の背中を追い、今後も女優としてまい進していく。原菜乃華、13歳。「将来、皆さんに『はらはらなのか。』を見ていてよかったと思っていただける、そんな女優さんになることが一番の目標です」と、瞳に遥かな道筋が見える。