稀勢の里の快進撃で大いに盛り上がった春場所。その一方で大横綱に限界説が! 後釜として早くも名前が挙がったのは?

 19年ぶりに誕生した日本人横綱・稀勢の里(30=田子ノ浦)と西関脇・高安(27=同)の活躍で、大いに沸いた大相撲春場所。同部屋に所属する2力士だけが初日から10連勝したのは、一場所15日制が定着した1949年7月場所以降、初の快挙だった。「地位が人を作るといいますが、今場所の稀勢の里は大関時代とは別人のように落ち着いた相撲を取っていた。まさに横綱相撲。平幕に取りこぼす悪い癖が影を潜めたのも、連勝できた理由でしょう」(スポーツ紙相撲担当記者)

 その好例が8日目の松鳳山戦だろう。出足鋭く当たった松鳳山にもろ差しを許し、一気に土俵際まで押し込まれた稀勢の里だが、重い腰で踏み止まると、左からの小手投げ。続けて振った右腕が、相手の左頬をカウンターパンチのように捉えると、松鳳山はなすすべなく崩れ落ちた。「これまでの稀勢の里なら慌てて左右に回り込むか、引くかして、そのまま土俵を割っていたかもしれません。苦労の末に綱取りが実現したことでプレッシャーから解放され、心にゆとりが生まれたんでしょうね」(相撲専門誌記者)

 その弟弟子にあたる高安も、東小結で迎えた今年初場所で11勝を挙げ、西関脇に返り咲き、今場所は破竹の10連勝。次の夏場所で大関取りに挑む。「高安は、小結で迎えた昨年7月の名古屋場所で11勝。関脇に昇進した秋場所で10勝を挙げるなど、着実に力をつけています。続く11月の九州場所で負け越さなければ、大関昇進の条件とされる“直近の3場所で33勝”をクリアして、今年初場所で大関になっていてもおかしくなかった」(前出の専門誌記者)

 新横綱の誕生で17年ぶりに4横綱時代を迎えたが、角界には「4横綱時代は長く続かない」というジンクスがある。横綱が4人いると成績の振るわない横綱への風当たりがきつくなり、結果“4番目の横綱”の引退が早まることが多いのだ。実際、4横綱時代は過去15回あるが、うち10回は1年持たずに終焉を迎えている。

 現在の4横綱は、稀勢の里を除く3人がモンゴル人力士だが、白鵬(32=宮城野)、日馬富士(32=伊勢ヶ浜)、鶴竜(31=井筒)ともに30歳を超えている。

「日馬富士は満身創痍。鶴竜もケガが多く、本来の力を発揮できていない。ですが、最も深刻なのは、白鵬かもしれません」(前同)

 幕内優勝37回他、大相撲の記録の多くを塗り替えてきた白鵬だが、最近はケガに泣かされ続けている。今場所も4日目まで2勝2敗。5日目から「古傷の右足親指の捻挫と右太腿筋肉群の損傷で3週間の加療が必要」との診断書を提出して、休場している。

「4日目に平幕の勢に寄り倒しで敗れた一番は“こんな白鵬、見たことない”と言いたくなるほどの脆さ。場所前の稽古で右足裏の皮が剥がれ、踏ん張れなくなったそうですが、それを差し引いても足腰の衰えは隠せなくなってきた。昨年9月に手術した右足親指の経過も万全ではないようです」(前出の専門誌記者)

 横綱に昇進して10年。昇進後、約8年間、一度も休場のなかった白鵬が、この1年半で3度の休場に追い込まれているのだ。

「遅咲きの稀勢の里が、心技体ともに充実期を迎えつつあるのと比べると、白鵬の衰えが嫌でも目立ってしまうのは寂しいですね。おそらく、今後3年くらいは稀勢の里の黄金時代でしょう。白鵬の場合、体調面もさることながら、精神面が気がかり。自分の後継者と言える日本人横綱が誕生したことで、相撲への意欲が保てるかどうか」と、スポーツコメンテーターの大野勢太郎氏は心配を口にする。続けて、「実現してほしくはないですが、白鵬の年内引退も視野に入ってきたと言えるのではないでしょうか」

 当の白鵬は32歳の誕生日(3月11日)に、こう語っている。「ケガをしやすい体になったのかな。歴代の横綱も30歳から31歳で、力士としての活躍がだいたい終わっている。(自分は)やっていけると思うけど」

 白鵬らしくない弱気な発言である。となると、気になるのは「次の横綱は誰か?」ということだろう。前出の大野氏が言う。

「ここ1〜2年、生きのいい若手力士が増えてきましたが、大関までは想像できても横綱となると難しい。そんな中、いずれは横綱になるだろうと思わせてくれるのが高安です。高安の強みは兄弟子の稀勢の里と毎日、稽古ができること。強い横綱のいる部屋は相乗効果で、強い力士が生まれるものなんです。若貴兄弟がいた頃の藤島部屋しかり。千代の富士と北勝海がいた九重部屋しかり。今の田子ノ浦部屋にも同じことが言えます」

 稀勢の里と高安の師匠は、ガチンコで鳴らした先代・鳴戸親方(元横綱・隆の里=故人)。そして、不器用に稽古を重ねることで強くなった新横綱の背中を追ってきたのが高安だ。大学出身の力士が増えた昨今の角界で、中卒で入門した“叩き上げ”であることも2人の共通点である。「2人とも茨城県出身。中学までは野球をやっていたことも同じです」(スポーツ紙相撲担当記者)

 高安が、初場所で稀勢の里と1敗で並んだ白鵬に土をつけ、稀勢の里の初優勝、横綱昇進をアシストしたのは記憶に新しいところだ。腰高で脇が甘いのが欠点とされる高安だが、ゴムまりのようだと形容される柔軟性に富んだ肉体は、大きな武器。突き押しを基本に左四つも得意としている。

「最近の高安は当たりが強くなりました。右肩から当たり、右からカチ上げることで、自分の相撲の形に持っていけるようになった。大関は当確。経験を積めば、横綱も狙えるところまで来ています」と、相撲評論家の三宅充氏も高安を高く評価する。

 では彼以外、未来の横綱候補はいないのか? 今場所の成績は振るわなかったが、東小結の御獄海(24=出羽海)、西小結の正代(25=時津風)も、今後の角界を背負って立つ逸材だ。正代は東農大、御獄海は東洋大で学生横綱に輝くなど、2人は学生時代からしのぎを削ってきた。

「正代はのけ反るようにして胸から当たる立ち合いに課題ありですが、スケールの大きな相撲は魅力十分。御獄海は突き押しにも四つ相撲にも対応できる相撲巧者。2人とも経験を積めば、もっと強くなりますよ」(前出の三宅氏)

 イケメン力士・遠藤(26=追手風)や“角界のマツコ・デラックス”の異名を取る宝富士(30=伊勢ヶ濱)にも期待がかかるが、「遠藤は2年前の春場所で負った左膝半月板損傷、左膝前十字靱帯損傷の大ケガが尾を引いています。本来の力を発揮できていれば、とっくに三役にいてもおかしくないんですが……。宝富士も地力のある力士なので関脇復帰、さらに大関昇進を目指してほしいですね」(相撲専門誌記者)

 小兵ながらアクロバティックな相撲で小よく大を制す宇良(24=木瀬)や、体は小さいが、けれん味のない相撲で人気の石浦(27=宮城野)も注目の存在だ。「宇良は体が柔らかく、当たりも強い。相撲自体は正統派なので、この先が楽しみです」(三宅氏)

 一方、昨年、綱取りに挑んだ琴奨菊(33=佐渡ケ嶽)は、まさかの関脇陥落。同じく綱取りに失敗した大関・豪栄道(30=境川)は、今場所6日目から休場。夏場所で5回目のカド番を迎えることになった。「琴奨菊も豪栄道も、いいときのほうが少ないんだから話になりません。綱取りは厳しいでしょうね」(同)

 こう見てくると、次の横綱の大本命は高安ということか。大関昇進がかかった夏場所に注目しよう!