“静岡ダービー”勝利をもたらした中村俊輔、38歳の成長を支える飽くなき向上心

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「だからこそ練習するから、良いんだけど」

 38歳にして初めて経験した“静岡ダービー”。得意の左足から全3得点を演出し、チームとして4年ぶりに公式戦で宿敵・清水エスパルスを破った。しかしそれ以上に、ジュビロ磐田MF中村俊輔には、充実感につながる収穫があった。

 4月1日に行われた2017明治安田生命J1リーグ第5節の磐田vs清水。4万人を超える観客が集まった静岡スタジアムエコパで、見せ場は早々に訪れた。6分、右サイド寄りの位置でFKを得ると、中村の左足から放たれた浮き球のボールは中央に飛び込んだDF森下俊の頭にピタリ。37分には再びFKからムサエフの追加点を呼び込み、48分には川又堅碁への絶妙なスルーパスを通して川辺駿のダメ押し弾を御膳立てした。中でも森下が挙げた先制点は、中村自身も「一番好きなのは1点目」と振り返る会心のアシストだった。

「俊が(キッカーを)信じて走って、しっかり相手をブロックして、相手より前に出て、その奥でも誰かが競り勝っていた。そうなると信頼関係ができて、蹴りがいがあるんですよ。そういう場面が増えるとどんどん得点が生まれるので、今日は得点というよりも、そういう形ができたことが良かった」(中村)

 名波浩監督は「個で勝ち点3を持っている」という言葉で中村のプレーを称賛した。「セットプレー云々もそうですが、何気ない“ため作り”とか、豪快なサイドチェンジとか、見ている人が喜ぶようなゲーム作りをしてくれたのではないかなと思います」(同監督)

 清水戦前の紅白戦から先発メンバーが急遽代わり、中村は「4−2−3−1」システムの2列目右で起用された。不慣れなポジションながら指揮官からの評価は上々だったが、中村自身は「反省というか、不安」と心境を明かした。

「(右サイドに入ると)ボールに関わる回数が少ないので、もっと強い相手に支配されて僕のボールタッチ数が1試合で20回くらいしかなかったらと考えた時に、僕以外のところでチームが勝てる何かをあちこちに作らないといけない」

「逆に相手に支配されている中でも、チームを勝利に導ける何かを自分がサイドで作らなきゃとも思います。右サイドに入ったらもっとセンタリングを上げるとか、いろいろなことをやっていかないと」

 新たに見つかった反省点や課題は、今後の伸びしろとなる。大ベテランとなった今もなお、チームメイトと切磋琢磨しながらレベルアップすることを望む中村は、ポジティブな思考で言葉を続けた。

「だからこそ練習するから、良いんだけど。川又もトラップが下手だと自分で言っていたけど、そういうことに気づいて、また練習するから上に上がっていく。そういう仲間との関係が大きいと思う」

 この日、トラッキングデータ上ではチーム内2位となる12.654キロの走行距離を記録し、技術だけでなく運動量や戦う姿勢の面でも存在感を示した。静岡のサッカー史に新たな1ページを加えた男は、自身と、仲間と、チーム全体の成長を期して、充実の表情を浮かべていた。

文=平柳麻衣