612日ぶりに味スタでプレーした鳥栖GK権田修一

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[4.1 J1第5節 FC東京3-3鳥栖 味スタ]

 試合後、FC東京のゴール裏に歩み寄るサガン鳥栖GK権田修一の目に涙があふれた。ピッチに膝をつき、頭を下げる。手を合わせて“謝罪”する、かつての守護神にFC東京サポーターからは拍手とエールが送られた。

「無理、でしたね」。感情を抑えることはできなかった。「このスタジアムで育ててもらって、このスタジアムでうれしい思いも悔しい思いもした。どれだけミスした次の試合でもゴール裏から名前を呼んでくれた」。FC東京の下部組織で育ち、07年からトップチームに昇格。常に背負ってきた青赤のゴール裏を目の当たりにし、思いが溢れ出た。

 背番号1に変更となった15年シーズンの夏にオーバートレーニング症候群を発症。長期離脱を強いられ、同年中の復帰は果たせなかった。16年1月にはオーストリアのSVホルンに期限付き移籍し、同年3月に実戦復帰。今年1月には欧州での移籍を目指し、FC東京と合意のもと契約を解除したが、交渉は難航し、2月6日に鳥栖への加入が発表された。

「こういう移籍の仕方になると、いろんな思いがあるのは当然。ブーイングしたい人もいると思う」。FC東京サポーターの気持ちが分かるからこそ、感謝と謝罪の思いを伝えたかった。「こういう移籍の仕方で、自分がFC東京のサポーターだったら“ふざけるな”と思う。謝らないといけないと思っていた」。権田なりの“けじめ”だった。

 FC東京で最後にプレーしたのが15年7月29日の仙台戦。会場はこの日と同じ味の素スタジアムだった。チームを率いていたのは現鳥栖監督のマッシモ・フィッカデンティ監督。612日ぶりとなった味スタでのプレーに「最後にここで試合をして、ダメになって、ここで試合をするのはそれ以来。うれしい半分、でもユニフォームはFC東京ではない。複雑な気分だった」と、率直に胸の内を明かした。

 練習からいつもと違う自分を感じていた。「この試合は負けたくない思いがあった。毎日、練習が終わってグラウンドから家に帰るとき、熱くなり過ぎたなと反省していた。普通ではいられなかった」。気合が空回りしたのか、後半31分、41分の2失点は味方選手との連係ミスからだった。「こういうことで動じないつもりだったけど、まだまだだなと。キーパーは冷静でいないといけないのに」と、自らの未熟さを責めた。

「勝てる試合だったので、そこが引き分けになった責任はすごい感じている」。そう反省した権田は試合後のミックスゾーンでも「今は割と頭の中が整理できていない。ロッカールームでもボーっとしていた」と、なかなか平静を取り戻せずにいた。報道陣から途中出場でピッチに入ってきたFC東京DF吉本一謙の名前が出ると、目に涙がにじみ、言葉に詰まった。

 下部組織からの同期で、ともに切磋琢磨し、互いに支え合ってきた仲間。「カズ(吉本)はずっと支えてくれて、しんどかったときに一番連絡を取っていた。カズのつらいときも知っているし、あいつは僕のつらいときを知っている。僕は鳥栖が勝っている前提で考えていたので、あいつは出てこないと思っていた。出てきちゃったなって。正直、あまり対峙したくなかった」。その背番号にも特別な感情があった。

 今季、29番から念願の4番に背番号が変わった親友の姿に「カズはずっと4番のイメージがあった。テレビでは見ていたけど、カズの4番をピッチで見れてうれしかった」と柔和に微笑んだ。明日2日はオフ。「髪が伸びたので髪を切って、明後日からまたサガン鳥栖のために練習していきたい」。そう気持ちを切り替えようとする28歳は「次はもうちょっと成長した姿を見せられるように頑張ります」と、11月にホームで迎えるFC東京戦へ思いを馳せた。

(取材・文 西山紘平)


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