世界フィギュアスケート選手権女子。ショートプログラム(SP)を終えて平昌五輪の出場枠3の獲得が極めて厳しい状況になっていた日本勢だが、4月1日のフリーでは、一時は「もしかしたら」と思わせるような、粘りの戦いを見せてくれた。

 その火つけ役となったのが、SPで冒頭からノーミスの演技を続けながら、最後の3回転フリップが2回転になったうえに転倒するという痛恨のミスを犯し、59.59点で15位になっていた三原舞依だった。


フリーでは自己最高点で4位。総合5位となった三原舞依「ショートのあとで、気持ちの中では『切り換えてフリーで挽回しよう』と思っていましたが、部屋に帰ってから涙が止まらなくて大変でした。でも憧れの浅田真央選手の、ソチ五輪フリーでの挽回の演技を思い出して、気持ちを切り換えることができたし、6分間練習の時から客席の上の方までお客さんが入っていてくれているのを見て、その視線をひとりで受けられる幸せを感じた。この大舞台に立たせていただけるチャンスをしっかり自分のものにして、ショートの挽回をしようという気持ちでフリーに臨めました」

 こう語る三原は、持ち味でもある力みのない柔らかなジャンプを次々に決めるなど、落ち着いた演技を続けた。そして「スパイラルシークエンスのあたりから涙がこみ上げてきたけど、ここで終わりじゃないと気持ちを切り換えて、ループやサルコウも最後のスピンも回れた」と、ノーミスで演技を終え、自己最高の138.29点を獲得。合計を197.88点とした。

「ショートが終わってから『この舞台に立たせていただけたことがすごく幸せなことだ』と、あらためて考え直すことができたので……。あの失敗があったからこその緊張感も味わえたし、だからこその今日のフリーかな、と思うことができたのが一番の収穫だと思います」

 SPのミスがなければ、この大舞台で200点を超えることができたという無念さもあったし、もったいないと感じる結果でもあった。だが、それを自分自身の経験として、これからずっと心の中に残して滑っていけることも、幸せなのだと思えると三原は言う。

 整氷後に始まった次の第3グループは、韓国のチェ・ダビンが、地元開催の平昌五輪へ向けて10位以内に入り、出場枠2を確保しようとする執念を見せたノーミスの演技で始まった。

 だが、続いて登場した本郷理華は、出場が決まったのが1週間前という厳しい状況の中で調子を上げきれず、ジャンプのミスを連発して16位にまで順位を落とす結果になった。

 その後もエリザベート・ツルシンバエワ(カザフスタン)、ベテランのアシュリー・ワグナー(アメリカ)やカロリーナ・コストナー(イタリア)らが、細かなミスを出して得点を伸ばせず、順位で三原を下回る。「もしかしたら……」という期待が膨らんだ。

 そんな中でSP9位発進の樋口新葉は、「こっちへ来てからはいい練習ができていたし、ショートもよかったので、そのままいこうと思って、最初からスピードも出していけた」という攻めの滑りを見せて、前半はノーミスの演技だった。

 ところが「最初から3つ目のジャンプまではすごく集中していましたが、ステップが終わってダブルアクセルになった頃に『ふたつ目の3回転+3回転を跳ばないと』と強く思い過ぎてしまって少し力んだので……」と振り返るように、3回転ルッツが2回転になってしまう。その後はミスのリカバリーをしようと最後まで諦めない攻めの滑りをしたが、最後のダブルアクセル+3回転トーループは、ダウングレードになって転倒という結果に。結局フリーは122.18点で、合計188.05点にとどまった。

 この時点では、まだ三原が1位で樋口は6位。だが最終グループになると、さすがというしかない演技が続いた。SP4位のアンナ・ポゴリラヤ(ロシア)は大きく崩れて順位を13位まで落としたが、全米選手権優勝のカレン・チェンはフリーの得点では三原を下回ったものの、合計では1.41点上回る。そしてSP1位のエフゲニア・メドベデワ(ロシア)が、圧倒的な強さで歴代最高の合計233.41点を獲得すると、ケイトリン・オズモンドとガブリエル・デールマンのカナダ勢も、ほぼノーミスの演技で、合計をそれぞれ218.13点と213.52点に伸ばした。

 結局、日本勢は三原が5位、樋口は11位で、平昌五輪の出場枠は2に決まった。それでも三原はフリーで4位と、十分に世界で戦っていける可能性を見せた。また樋口も、今シーズン苦しんできた表現とジャンプの両立に手応えを得て、攻めの滑りを取り戻したことは収穫だった。

 2枠になった来季の日本女子の五輪代表争いは厳しいものになる。だがそんな厳しさがあってこそ、全体のレベルは上がるのだとプラスに受け止めるしかないだろう。今回の結果をどうやって平昌五輪以降につなげるか。日本女子フィギュアの真価が問われる。

フィギュアスケート特集号
『羽生結弦 平昌への道 ~Road to Pyeong Chang』

 


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