女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、都内のデザイン事務所で契約社員として働く森田弥生さん(仮名・35歳)。都内の専門学校を卒業してから、ブラック企業を転々としていると語ります。

身長は155cmくらいと小柄で、体型はちょっとぽっちゃり目。服は90年代のギャル風で、レモンクリーム色のオフショルダーのニットに、黒タイツ+デニムのショートパンツ。というファッションです。ほとんど日にあたっていないから、顔とデコルテが青白く、肩の肉やバストがこんもりと盛り上がっており、太ももがかなり丸く、どことなくエロティックです。バッグはセレクトショップなどで売っていそうな、キャンバス地のトートバッグ。ニューヨークの街の地図がプリントされています。現在の収入は手取り月18万円程度で、借金が100万円ほどあると言います。

「今、勤務しているのは、広告代理店の孫請けのデザイン事務所。前に大手広告代理店の女の子が自殺したことがニュースになりましたが、彼女と同じくらいのブラックな職場です。ただ私の方が給料も安く、社会的にも不安定ですが。彼女は徹夜でボロボロになっているときに、上司から“女性は睡眠不足でも化粧をしろ”というようなことを言われたらしいですが、私なんて社長から“美人はこき使えない、お前みたいなブスなら、いくらでも文句が言える”と2日徹夜した朝に言われましたからね。でも、仕事は減っていることがわかっているし、いつ切られるかわからないから、言うことを聞くしかありません」

弥生さんは、社長がいかに自分にきつく当たるか、という話を続けるので、その内容について伺いました。

「営業も担当する社長は38歳でバツ2、早稲田大学を卒業してから、1年くらい世界を放浪し、大手広告代理店に就職し3年で退職したという、典型的な“夢破れた男”ですよ。たぶん人生の頂点が、そこそこ名門男子校の中高一貫校に合格した時点、というタイプ。もちろん開成高校とかのスゴイところじゃないですよ。ラテン系の濃い顔をしていて、ネイビーとかのスーツを着ていて、嫌味なんですよ。仕事をいつもギリギリまで自分で握っていて、直前に“あと1時間でこの修正やっとけ”とか言うんです。できないと答えると、椅子を蹴って“できないっていう選択肢はねえんだよ、ブス”と怒鳴るんです」

どれだけ罵倒されても、周囲の人は助けてくれない……

弥生さんが勤めているデザイン事務所は、社長を含めて男性社員3人と契約社員の弥生さんが1人、9時から15時まで勤務の事務職員が1人。

「デザイナーって草食系というか、男性2名は何も言わず黙々と働いています。一番古株の男性は、社長が起業した8年前から一緒に仕事をしており、もう一人は新卒からこの会社にいるから、“社会はこんなもんだ”と思っているみたい。この2人の男性社員に対しては、社長は一緒に性産業のお店に行ったりして、連帯を強めているんです。いじめっ子とその舎弟、という関係。彼らはぜったいに“できない”と言いません。おそらく24時間会社に泊まり込んで、いつでも対応できるように仕事をしているんですよ」

そんな働き方をしていて、今まで問題にならなかったのかという疑問をぶつけました。

「問題って、自分自身がこれはおかしい、と思って問題提起しない限り、表には出てこないんですよ。2人の社員は、社長のちっさいカリスマ性に魅了されて、マインドコントロールされていると感じます。私なんて入社1か月目から心療内科に通っているのに、2人とも淡々と仕事していますからね。70年代のB級ホラー映画に『悪魔の植物人間』という作品があり、これはマッドサイエンティストが人間を植物にして、戦意がない平和な世の中を作る……という話なんですが、あれを思い出しました。ちょっとおかしい人は、人を支配するんですよ」

弥生さんの贅沢は、激安ファミレスで食べるから揚げ3人前。

 支配された結果、弥生さんは社長から言葉の暴力に加え、セクハラを受ける〜その2〜に続きます。