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●第一印象は「朝から何をやっているんだ?」
tvk(テレビ神奈川)で16年半もの間放送された、朝のバラエティ音楽情報番組『saku saku』が、3月31日の放送で最終回を迎えた。同番組は、毎週月曜日から金曜日まで30分放送され(夕方や深夜の再放送も)、今や神奈川県民なら誰もが知っている"朝の顔"として、長年にわたって愛されてきた。

音楽番組ではあるものの、1つの固定カメラで女の子とマペット(人形)がひたすらシュールなトークを展開し、話題はガンダムやアニメ、ゲーム、神奈川のマニアックなご当地ネタが中心。さらに番組スタッフが変装・仮装して登場する姿に、「朝から何をやっているんだ?」と呆れつつも、気が付けばかわいらしい女性MCと、マペットが繰り出す毒舌トークに魅了されているという唯一無二の番組であった。本稿では、『saku saku』とはどんな番組であったのか、そのかけがえのなさ、魅力と歴史を振り返る。

○『saku saku』の歴史

『saku saku』はその歴史の中でも女性MC、マペット、マペット操縦士、ガヤ、そしてトークの場所を幾度となく替え、新たな風を吹き込み続けた。『saku saku』とひと言で言っても、実は見た時期によってそれぞれの『saku saku』がある。参考までに、その変遷を表でまとめてみた。

○歴代女性MCの魅力

『saku saku』の初代MC・あかぎあいの時代は、とにかくフリーダム。トークが退屈になると爪をいじり始めたり、「香取慎吾と結婚したい」と妄想を爆発させたり、ジゴロウがふるネタをすべてやってのけたりと、歴代女性MC史上、最も自由にトークを繰り広げていた。また、あかぎの卒業ラストにおいてジゴロウがボケをかまし、「笑いがないと生けていけないの? アンタはっ!」と激しいツッコミを入れた姿は、今もサクサカーの記憶に深く刻まれている。

さらに受験生の合格祈願のため、おへそを披露するコーナーも評判で、当時の学生を悶えさせた。また、謎の小学生・ケンタロウ(中身はご意見番)との不毛なトークも注目度は高かった。現在は、横浜で三児の母となり、子育てに奮闘中。

2代目MCは、現在も抜群の認知度を誇る木村カエラ。MC就任当初は、初対面のジゴロウに対するタメ口や(ジゴロウ命名:タメ口姫)、番組出演者による「すたーうぉーずごっこ」で強烈な棒読みを見せ、視聴者をハラハラさせるも徐々に覚醒。『saku saku』人気をイッキに引き上げた人物だと言っても過言ではない。ジゴロウの足を肘でクニクニする姿や、お腹が空くと不機嫌になる素直さ、自作した"ナウシカの虫笛"を調子に乗って振り回し、頭に激突させる姿に爆笑したサクサカーも多かったことだろう。

3代目MCの中村優の時代は、優等生すぎる性格のおかげで、笑いの少ない"笑いの大飢饉"が起きた時代だと、白井ヴィンセントは語っていた。しかしその一方、トークの流れを止める「台無しちゃん」(いきものがかり吉岡聖恵がそろうと「台無しシスターズ」にレベルアップ)や、「身長約170cmチョップ」「ピュアピュア光線」などの独自の必殺技、覚えたてのギターでオリジナルソング「中村優のテーマ」を歌うひたむきな姿に心を撃ち抜かれ、今なおコアなファンは多いという。現在はフリーランスとなり、タレント活動やスマイルランナーを続けており、昔と変わらない笑顔をサクサカーに見せている。

4代目MCは、番組内のランキングガールから華麗な転身を遂げた三原勇希。持ち前のルックスとチャラいキャラ、関西弁バリバリの超個性派で、多くのサクサカーを呼び戻したとまことしやかにささやかれている。また、高音を発したり、「武者返し」「鉄仮面ガール」「ヨガのポーズ」などでヴィンセントを翻弄した。そのほかDVDの特典映像ロケをした際、ちまちまと巨大パフェを食べるギフト☆矢野に対して「手ぐらい汚れればいいでしょ!!」と放ったひと言は伝説となっている。現在は、音楽番組のMCや、ゴルフや釣り番組で活躍中。

5代目MCは、岐阜県の飛騨高山からやってきた天然娘・トミタ栞。タレント活動やテレビ出演は『saku saku』が初めてで、登場当初は緊張でしゃべれず、ヴィンセントからは「土器」呼ばわりされていた。しかし「屋根の上」と、レンタルショップ「カシカシ」という2つの時代を経て、トミタは急成長。ヴィンセントと共に歌う「杵築のうた」をはじめ、往年のアイドルを彷彿とさせる「八丁畷のうた」「伊奈のうた」でサクサカーの心をキャッチした。

また、番組内において、岐阜県・飛騨高山にある実家が有名ラーメン屋「豆天狗」であることが発覚。それ以降、トミタが生まれ育った土地や、幼い頃から食べてきたラーメンを求めて、今も多くのサクサカーが飛騨高山を訪れている。現在は、アーティスト活動を続ける一方、タレントとしても絶賛活躍中。

6代目MCは、沖縄からやってきたバンド『7!!』のボーカリスト・NANAE。キュートな笑顔と、沖縄ワールド全開のトークが魅力で、初代ポンモップ(カンカン)と、あゆみくりかまきが中堅スタッフとして出演した「カシカシ」一期に引き続き、二代目ポンモップ(鈴木啓太)と、さわやか五郎がフロア・スタッフを務めた「カシカシ」二期のMCを見事にやり遂げた。

コントを披露するコーナーでは、何かが憑依したような鬼気迫る演技でサクサカーをざわつかせ、アーティストならではの切り口でゲストに質問する姿が印象深い。また、イラストを披露するコーナーでは、まるでおばさんのような自画像を披露し、意外な一面も見せた。

そして、メインMCではないが、トミタとNANAEの「カシカシ」時代を共に支え続けたあゆみくりかまきも忘れてはならない。毎週3人でオリジナルコントを披露したほか、体を張った実験コーナー「あゆじろう先生の実験コーナー」で爆笑させてくれたあゆみ、「くぅ散歩」のロケで「またぎ」(あゆみくりかまきのファン)の聖地を増やしたくりか、視聴者の悩みを解決する「まっちゃんの人生相談してくまさ〜い」や、結局米の収穫までにはいたらなかった「まき田んぼ」など、それぞれの個性で番組を盛り上げた。現在は「熊仙人様からのお達し」によりクマから人間の姿となり、全国各地でパワフルなライブ活動を続けている。

○歴代マペットと操縦士

そして『saku saku』において重要なファクターが、マペットとその操縦士。あかぎあい時代〜カエラ時代中期までを「増田ジゴロウ」(Ver.1.0/2.0/2.5/3.0)が、カエラ時代中期〜「屋根の上」終了までを「白井ヴィンセント」(初代/YK-150型/3代目ヤマブキカラー)が、「カシカシ」では「ポンモップ」(初代/2代目)が登場し、時代と共にバージョンアップを重ねてきた。中には口が開きすぎるという理由で2週間で変更されたレアなジゴロウ「Ver.2.5」も存在した。

そして、マペットを操る操縦士としては、「屋根の上」時代を支えた黒幕、「カシカシ」では、ガヤ芸人としても活躍したカンカンと、そして番組ラスト1年を上々軍団・鈴木啓太が担当。13年間マペットを操縦し続けた黒幕の、毒舌キャラから次々と繰り出されるガンダムや戦国武将トーク、そしてアーティストのプライベートを巧みに引き出す話術に魅了され、「黒幕こそ『saku saku』だ」と、「カシカシ」シリーズ突入後、番組を見なくなったサクサカーも残念ながら多かったようだ。しかし、2代目操縦士・カンカンと3代目操縦士・鈴木啓太も、黒幕が去った後のプレッシャーを感じつつも、芸人ならではの軽快なトークと、独自のコーナーで新生『saku saku』を盛り立て、新たなサクサカーを獲得し続けた。

●『saku saku』の最大の魅力とは
○『saku saku』で生まれたブーム&流行語

『saku saku』では、番組内の発言や勢いから、さまざまなブームや流行語が生まれた。あかぎあい時代のブームといえば、「仮面ハライター」や「ファックスジャンプ」「シーガイヤ!(ヤーイガシ!)」などが思い出される。木村カエラ時代には、「巨神兵がドーン!」フィーバーが巻き起こり、ジゴロウの必殺技としてはもちろん、サクサカー同士で「巨神兵が?」「ドーン!」(さらに「おっことぬしが?」「ブモー!」)などのあいさつにも使用された。さらに「フォッサマグナ」「鮭の産卵」「シャチホコ」、ヴィンセント時代には「ツバカッター!」「ボルケーノ!」といった必殺技が「屋根の上」で繰り出され続けた。

中村優時代では、中村の「DAISUKI!」ポーズのほか、「どっかで誰かがバルス!」、「あーっ! 目がーっ! 目がーっ!」などラピュタネタがブーム。三原勇希時代では、「三原マジック!」「武者返し」「萌え顔」「タニュー」のポーズ、さらに、三原の友人「マホコ」などが大きな話題を呼んだ。

また、トミタ栞時代には、トミタの「タメパンチ」や「ブラマヨ小杉のマネ」、怒られた人の体を小さくする「豆天狗ー!」などが猛威をふるっていた。そのほか、イベントにおいて、カンカンや、ギフト☆矢野が登場すると、サクサカーが大ブーイングで声援するスタイルもお馴染みの光景。そして、「カシカシ」では、おはようのあいさつ「おはピヨ」や、さようならのあいさつ「サクナラ」などが定番化し、NANAE時代には「おはっぷす」のあいさつや、出演者の似顔絵を募った「N(似顔絵)-1グランプリ」などがブームとなった。

そして忘れてはならないのが、「屋根の上」時代の人気コーナー「みんなでうたおうZ」。神奈川を中心としたご当地ソングをはじめ、出演者のテーマソングなど、数多くの歌が披露された。このコーナーで歌われた曲は600曲を超えるが、驚くべきはほとんどの曲を黒幕が作詞・作曲していること(すべての曲を繋げると27時間以上にも及ぶ)。

ちなみに昨年、著者がツイッター上で「みんなでうたおうZ」のベスト10を個人的に募集をしたところ(回答者数45名)、1位「サクサカーのうた」、2位「海老名のうた-ゴイゴイに捧ぐ-」、3位「伊勢原のうた」、4位「杵築のうた」、5位「八丁畷のうた」「三島のうた」というサクサカーなら誰もが知ってる名曲が数多くランクインする結果となった。

「カシカシ」時代では、上々軍団が学生時代に結成したというバンド「岡ちゃんバンド」の曲「バイバイみんな」「FREE MAN」「記憶の片隅」「僕らに愛を」を全力で歌い上げたほか、さわやか五郎作詞・作曲の「ランドマークタワーで秘密のデート」を番組やイベントで歌い、サクサカーの間で「名曲だらけ」と評判となった。

○『saku saku』で輝きを放ったアーティストたち

『saku saku』では数多くのアーティストたちがトークを繰り広げたが、中でも番組でコーナーを持ち、『saku saku』ならではの顔を見せてくれたアーティストもいた。番組当初の「それ行け! ちくわ部」や「週刊コブクロ塾」を受け持ったコブクロをはじめ、DEPAPEPEの「インストDE委員会」、Rihwaの「リファのソング・ファクトリー」などがあった。一風変わったところでは、「新星堂・神奈川県内週間CD売り上げランキング」に元「さくら学院」メンバー・菊地最愛と水野由結が登場し、カリフォルニア米との不毛なトークを繰り広げた。

また、出演時に強烈な個性を放ったのが、毎回緑系の服を着て体を透けさせた一青窈や、黒幕とコラボし、「練馬のうた 第二章」を完成させたオーノキヨフミ、DEPAPEPEに続く番組の最多出演者・いきものがかりも、ほかの番組では聞けない私生活の部分を披露してくれた。そのほか、声優の林原めぐみが出演した際には、林原がイラストを披露したり、『新世紀エヴァンゲリオン』を一緒に視聴しジゴロウを悶えさせたこともあった。

○『saku saku』事件簿

『saku saku』はその奔放なトークが魅力で、予期せぬ化学反応が起こることもしばしば。あかぎあい時代には、ジゴロウグッズが2か月前に発売されたにもかかわらず、あかぎが視聴者のオリジナルグッズを見て「これなら、かいたい」と発言し、ジゴロウに詰め寄られたり(実際には"買いたい"ではなく"飼いたい"であった)、「セミを喜ばせる話題は?」と聞かれ、あかぎが「あと、何日なの?」と回答。ジゴロウから「死のカウントダウンしなきゃいけないの?」と返されたりして、視聴者の笑いを誘った。また、当時漢字が苦手だった木村カエラが小児科を「こじか」と読んでしまったエピソードは、もはや伝説の領域。

さらに、中村は、デビューシングル「Questions?」の収録風景が放送されたが、運悪く(?)ハモリのパートだったため、「…クエスチョン! …クエスチョン!」と連呼するシュールな姿をお茶の間にお届けすることとなった。三原勇希は腕を骨折したばかりに「骨折のうた」をヴィンセントに作られてしまうという展開に。また、トミタは、ちくわぶを食べた際に「モチャモチャする」「あの物体に歯を入れるのがイヤ」とコメントし、キョーレツな拒否顔を番組で披露。出演者と視聴者を爆笑させた。

そしてNANAEは、さわやか五郎が地元・沖縄ロケをNANAEに内緒で敢行し、愛犬と公園で散歩する姿を見た時、懐かしさや驚きなどの感情が押し寄せて大号泣したシーンが記憶に新しい。その号泣っぷりについてNANAEは、DVD&Blu-ray発売記念イベントにおいて「番組ラストより泣いた」と告白している。

○『saku saku』はどんな番組だったのか。

『saku saku』の最大の魅力は、やはり、視聴者との距離感。投稿メールを、ただの1コーナーの補足として扱うのではなく、MCが一緒になって笑って、共感して、突っ込んで、転がしてくれた。昔は一部のコーナーの採用者にはプレゼントがあったものの、見返りはほとんどない。ただ、MCに見てほしくて反応してほしくて投稿してしまう……そんな風通しのいい、視聴者密着型の番組であった。

なにごとも長続きしなかった筆者も、『saku saku』の風通しのよさに引きこまれたサクサカーの1人。毎週かかさずイラストを投稿したり、ネタのために白井ヴィンセントのマスコットを毎週1体ずつ2年間買い続けて100体集めたり、「みんなでうたおうZ」で歌われた歌のリストを11年かけて完成させたりと、気が付けば生活の一部となっていた。そんな『saku saku』が2017年3月31日をもってついに終わりを迎えた。非常に残念だが、素晴らしい番組と出会えたことに感謝し、最後はサクサカー・「川崎市宮前区ぱぴい」として締めたいと思う。

黒幕さん、あいちゃん、カエラちゃん、優ちゃん、勇希ちゃん、栞ちゃん、NANAEちゃん、あゆくまちゃん、カンカン、ギフちゃん、浪人さん、米さん、IKAさん、ゴイゴイさん、啓太兄ぃ、五郎さん、本当にありがとう!! そして、ViVa! かながわ、ViVa! 県民、ViVa! サクサカー!

もちろん最後は、サクナラ〜!!

(担当ぱぴい)