ヘッドホン(イヤホン)のモバイルリスニングと、スピーカーのインドアリスニングのSwitchも、いいかも。

時代、時代においてトレンドとなる音源は移り変わってきました。1971年生まれの僕の経験でいくと、テープ/レコードの時代からMML(Music Macro Language)、MIDIを経てCD/DATへ。CD&SACDと平行して着うた文化と共にMP3をはじめとする圧縮音源が本格化。そして現在はダウンロード販売のハイレゾ音源と、月額おいくらでストリーミングのサブスクリプション型音楽サービスの人気が高まってきています(超個人的な見解ですが、MDはMDサイバーショットことDSC-MD1でしか使わなかったのでスルー)。

アナログレコード回帰の流れもありますが、あちらはドリップコーヒーを入れるかのごとくのプロセスも楽しむもの。またはジャケットという物質的パッケージの妙も楽しむもの。傍流ではないかと。メインカルチャーの媒体として主流なのは、扱いやすさを含めてやっぱりデジタルファイルではないでしょうか。

ハイレゾ音源とサブスクリプション型音楽サービス。どちらにも、良さと面倒さがあります。まずハイレゾ音源のGOODとBADからまとめましょうか。


ハイレゾ音源のGOOD


・音がいい(ものが多い)
・微細音の再現性に優れる(ものが多い)
・大きな音が鳴る前後の音が残っている(ものが多い)
・再生環境を整えれば立体的な音場が感じられる(ものが多い)

ハイレゾ音源のBAD

・1曲(1ハイレゾ音源ファイル)あたりの価格が高い
・好きな曲のハイレゾ音源を探すのが面倒
・音質を引き出す環境を整えるのにもお金がかかる
・CDクオリティのマスターをなんとなくアップコンバートした音源もある

CD音源よりも高ビットレートで可聴範囲外の情報も残せるハイレゾ音源。しっかりと鳴らしきれる音響機器を使えば、圧縮音源との差がクッキリとしてきます。ダイナミックレンジを従来よりも広くとることができるし、MP3などのようにレベル差が大きい部分を積極的に圧縮しないため、大きい音も小さい音も聞き取りやすい。圧縮音源、または音圧高すぎなマスタリングがされたCDとは違って、高密度、高音圧でありながら広い音場の再現もできるのがウリです。一度聴くと、その良さに惚れ込みがち。

「ヴェールを1枚、とったような...」というオーディオ機器のレビューコメントが古くから言い伝えられてきましたが、あれ、本当なんです。良質な音源を良質な環境で再生すると、1音1音がクリアに聴こえるから聴力が上がったかのように思えてくるんです。その印象を視力で表したのがこの文言なんですね。

過去の音源であっても丁寧にリマスタリングすることによって、CD/MP3では聴き取れなかった音が細かく入っているのがわかります。1つの曲を作り上げるのに、作編曲者、ミュージシャン、ディレクター、エンジニアがどれだけの想いを込めたのかを想像して、涙がこぼれることも。ココロが動かなくなってきた人にもハイレゾリスニングはオススメ。感動装置といってもいいほどです。

しかしBADのところで並べたように下手なリマスターものがあるし、販売サイトの横断検索ができないし、再生環境も考えなくてはなりません。ハイレゾ対応のイヤホンで検索すると1万円以下のものもありますが、10万円超えのプロダクトもある。何をどう揃えたらいいのかわかりづらい...。

どうしても、式居が高いところがあるんですよね。ハマった結果、ココロの中の遠峰先生が「お...おお...」と悦びの声を上げてくれることは間違いないのですが。


サブスクリプション型音楽サービスのGOOD


・無料でおためしできる(広告も入る)
・どんなジャンルも基本聞き放題
・再生中の曲の詳細がわかる
・人気フェスのセットリスト/プレイリストが見つかる
・新しい音楽との出会いが多い

サブスクリプション型音楽サービスのBAD

・無闇に聴いているとデータ通信量が多くなる
・フル機能を使うとなると月々の有料に
・圧縮音源のデータが使われている

各国の最新ヒットチャートを聴いてみたいという音楽に対して前のめりな人も、なんとなく音楽を聴きたいという受け身な人にも人気なのがサブスクリプション型音楽サービス。当初は邦楽が苦手という印象があるサービスが多かったものの、大手レーベルの曲であればカバー率は高くなってきています。

屋外で長時間聴いているとデータ通信量が多くなってしまうので、Wi-Fiのある環境である程度ダウンロードをしておくことが重要。うまく使いこなすために知識は必要ですが、ハイレゾと比べて式居は低め。ポピュラーなアーティストの曲を求めてレンタルCDを私用目的でリッピングして圧縮音源にしたり、iTunes Storeなどで1曲ごと購入している人にはオススメなんですよね。


リスニングスタイルのSwitchを考える


さて今回のコラムのテーマは「Switch」。春だし、スタイルの切り替えを考えます。音源を切り替えるというSwitchはアリなのでしょうか。

すでにハイレゾ音源を聴いている人にとって、サブスクリプション型音楽サービスに切り替えるメリット。これはもう「新しい音楽との出会いが多い」という強烈かつ強力なメリットが存在します。音楽ジャンルが成長し、細かなカテゴリで枝分かれするシーンの目撃は、音楽鑑賞の醍醐味の1つ。

逆にサブスクリプション型音楽サービスを使っている人が、ハイレゾ音源に切り替えるメリットは...正直不透明です。数多くの音楽を自由に聴けるメリットを捨ててまで、音質を極める旅に出るのは厳しいかもしれません。しかし、いつまでも聞き続けたい曲のハイビットレートデータが欲しいという、サブスクリプション型音楽サービスとハイレゾ音源の併用はアリでしょう。

気に入った曲があったら「曲名 ハイレゾ」で検索。購入できるサイトを探してダウンロード。普段はサブスクリプション型音楽サービスで音楽をたしなみつつ、自分の中での殿堂入りとなったハイレゾ音源も別枠で聴いて楽しむ。...うん、このスタイルが一番幸せな気がしますね!

1曲単位ではなく数曲並べて聴いた状態で惚れたアルバムがあるなら、サブスクリプション型音楽サービス&アナログレコードもよさそう。好きなアルバムのジャケットを見て愛でられる楽しさもトッピングされますし、朝に気持ちが高まるアルバムをかける、夜にリラックスできるアルバムを聴くシチュエーションに置いて、レコード針を落とすというプロセスは気持ちをSwitchするキッカケにもなりそうですよ。

いろいろなお話を聞くと、ハイレゾがいい&アナログがいい。だから圧縮音源やサブスクリプション型音楽サービスはダメだ。という声があることにびっくりします。音質がいいこと。それはすばらしいこと。でも、手軽さを追求してきた圧縮音源や、多くの音楽を聴くサービスを否定するのはもったいなあ、と思うんですよね。

こだわりと言う言葉は近年、ポジティブな意味でも使われるようになりました。でも、もし、あなたのこだわりがネガティブな意味によっているものなら。ぜひ一度、違った音源&サービスも試してください。食わず嫌い、もったいないですよ。


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(武者良太)