素晴らしい演技を見せた子役のパワー(『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』より)
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 第89回アカデミー賞で作品賞など6部門にノミネートされた話題作『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』の実在モデルにして、驚くべき半生をつづった自叙伝の著者サルー・ブライアリーさんが、映画公開に先立ち初来日し、迷子のまま養子縁組でインドからオーストラリアに渡った経験を振り返って「生き残るために、このチャンスをつかむしかないと思いました」「国境を越えた養子縁組について、もっとオープンに考えてほしい」と熱い思いを吐露した。

 サルーさんの自叙伝「25年目の『ただいま』 5歳で迷子になった僕と家族の物語」が原作の本作。5歳で迷子になり家族と生き別れたインドの貧困層の少年が、養子縁組でオーストラリア人夫妻の子として成長。それでも、断ち切れぬ自らのルーツに対する思いから、幼い頃の記憶を頼りに Google Earth を使って探索を行い、ついにインドの実母と25年ぶりの再会を果たすまでを描く。キャストは『スラムドッグ$ミリオネア』などのデヴ・パテルをはじめ、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンら。監督は、これが長編デビューのガース・デイヴィスだ。

 「本作を観ていると当時の自分に戻ってしまい、強く感情を揺さぶられます」と述懐するサルーさん。「私が原作を映画にしたら、10時間以上の作品になってしまうと思う。自分には全てが大切なシーンですから」と笑いつつ、「ガース監督はそれを多くの人が共感できる真実として描いたので、人間の記憶の不思議さや、人間には何ができるかを考えさせてくれる作品になったと思います」と監督の手腕を称える。

 また、サルーさんの幼少期を演じた子役サニー・パワーと、青年期役のデヴに対しても、「2人とも本当に素晴らしい役者」と特別な思いをうかがわせる。サニーについて「これが初めての演技なのに、恐るべき才能で観る人の心をすぐにつかんでしまう。彼の表情を観ていると、観ている私たちが、彼の感じていることをそのまま感じ、共感しないわけにいかないんです」と語れば、本作でオスカーの助演男優賞にノミネートされたデヴについて「今では、もうA級のスターですが、役者としても、また本人自身もすごくいい人で、彼とは現在も連絡を取り合っているんですよ」とプライベートでの親交が続いていることを明かす。そんなデヴは、サルーさん本人になりきるため、かなりの肉体改造をしていたとのことで、「彼は痩せ型だから、もうちょっと肉を食べた方がいいかも。でも私も、そんなに大きいってわけじゃないですよね?」と笑顔を見せる一幕も。

 家族と生き別れてから25年後に再会するという驚愕のストーリーになっているが、自分の故郷を根気強く探し続ける原動力があったからこそ。「映画『ジェイソン・ボーン』もそうですが、自分の起源や出自がわからないと、どこか人生に迷った感じになってしまうんです」「自分がどこから来たのかを知ることで、自分が何者かを学ぶことができると思ったんです」と当時の心境を告白。

 では、養子縁組でオーストラリアに渡った決断には、どんな意味があったか。「カルカッタ(当時)の孤児院に入って、養子縁組を勧められたわけですが、5歳児にして、ここにいても自分の家族が見つかる望みは全くない、(養子縁組は)いいチャンスだし、生きるためには、このチャンスをつかむしかないと思いました。今でも良い決断だったと思います」ときっぱり。「オーストラリアで私を迎え入れてくれた母は、自分の子供を作るより、助けを必要としている子供にチャンスをあげたいという考えから、私たち(サルーさんと弟)のような子供を引き取っていたんです。私も、家族というのは、血のつながり以外にも選択肢があっていいと思うし、養子を取って家族を作りたいという希望に対して、国境を越えて、国家はもっとオープンであるべきだと考えています」と熱弁。サルーさんは現在、自身の養子縁組をアレンジし、今もコルカタ(旧カルカッタ)で孤児院を運営する女性“ミセス・スード”の活動の支援を続けているという。(取材/岸田智)

映画『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』は4月7日よりTOHOシネマズ みゆき座ほかにて全国公開