朝5時から仕事などの時間が決められ、18時に国旗を降ろし、瞑想や僧侶の説法を聞いて就寝する

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 タイ中央部の端にあるサラブリ県。日本では栃木県や群馬県に当たるこの県にはタイ人に有名な寺がある。麻薬中毒者を受け入れて更生させる「タムグラボーク寺」だ。

 この寺院は1957年に僧院として始まった。近隣で修行を終えた僧侶ジャルーン・パーンジャンとジャムルーン・パーンジャンがここで1970年から麻薬中毒患者を受け入れ始め、更生させる施設を設立した。5年後の1975年にその活動が評価され、アジアのノーベル賞とも呼ばれるフィリピンのマグサイサイ賞を受賞。世界にその名を知られるようになった。そして、2012年に僧院から寺院となることが認められた。

 現在、この寺では4月のタイ旧正月の期間を除き、常時麻薬中毒患者を受け入れている。

 それはタイ人にとどまらない。外国人も同時に懐広く受け入れている。取材時にも白人男性がふたり、白人女性がひとりいた。また、ここで治療を受けた白人の何人かは寺院に残り、ボランティアとして施設の裏方となっている。白人女性のひとりは尼僧にもなっていた。

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 ここで暮らし、麻薬中毒患者の面倒を看る僧侶は言う。

「私たちは仏教の教えの元、困窮している人々を受け入れています。ここに来るにはなにもいりません。しかし、自分の意志で今の状況から抜け出したいと強く決心している意志だけは必要です」

 ここではタイ伝統医学に基づいた治療法と薬を用意しているが、最終的には個人個人が自分の意志でここに来て、自分から今の自分を捨てて生まれ変わることを望んでいなければならないのだ。

◆薬抜きの薬草汁は「二度と飲みたくない」

 この寺院では麻薬患者だけでなく、アルコール依存症やタバコ依存症患者も受け入れている。しかし、麻薬患者はその常習性の強さから隔離された宿舎で過ごし、自由に敷地から出ることも許されない。

 また、僧侶はなにもいらないと言ったが、実際には食費として1日200バーツを目安に滞在日数分持参し、最初に事務所に預ける。それ以外は費用は一切かからない。国籍も地位も名誉も関係ない。やめたいという自発的な意志があれば受け入れてもらえる。

 ここでの生活は最低15日間になる。最初の5日間と最後の日は午前と午後に薬草を煮詰めた汁を飲まされ、体に残る毒を吐き出させる。薬草は数十種類にもおよび、飲むと胃の中がぐるぐるとしてすべて吐き出さないと頭がくらくらして数時間は寝込む羽目になる。

「最初はうまく吐き出せないのですが、慣れれば毒が吐き出されて体が浄化していくような気持ちです」と、滞在10日目の中毒患者が言った。ただ、飲めと言われるともう嫌なのだとも苦笑い。取材した日、ちょうどその薬を飲用するのが最後の日だというアメリカ人男性は「もうやらなくていいのが最高に嬉しい」と喜んでいた。

◆最年少滞在者はなんと13歳!

 ここで治療を受ける人は日々およそ40人前後になる。年間で平均およそ1000人弱。毎日1〜3人が治療を終えて家族のもとに戻り、また同じ数がやってくる。

 取材時は42人ほどおり、最高齢者はおそらく40代くらい。夫婦で来ている者もいた。夫婦そろってアンフェタミン系の覚せい剤「ヤーバー」から抜け出せず、子どもを想ってふたりでやってくることを決心した。子どもは親に預けて来たのだという。

 そして、取材時に最も若かったのは13歳の少年だった。中学1年生だ。この少年は学校の教師にここのことを教えられた。麻薬遊びにハマる友人も誘ったが一笑に付される。だから、ひとりで来たのだという。

「小学校のときに友だちに大麻やヤーバーを勧められて始めました」

 クスリを買うカネは、自分で買ったクスリを転売して次の資金にした。これはこの少年に限らず、ほとんどの患者がそうしていた。クスリを手に入れるために最初は友人らにカネを借り、返せなくなって人間関係が壊れ、善悪の判断もつかなくなって、最後に密売の片棒を担いでいく。