レギュラーシーズンも各チーム残り10試合を切り、プレーオフのシード順争いが熾烈を極めてきた。同時に選手たちは、個人タイトル争いでも激しいラストスパートを繰り広げている。なかでも、得点王争いの行方は必見だ。


2年ぶり2度目の得点王を狙うラッセル・ウェストブルック 3月31日現在、得点王争いは平均31.8得点のラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー/PG)、平均29.3得点のジェームス・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ/PG)、平均29.2得点のアイザイア・トーマス(ボストン・セルティックス/PG)の3選手の間で繰り広げられている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 注目してほしいのは、3選手のポジションがともに「ポイントガード(PG)」だということ。NBAの歴史を振り返っても、得点王を争う全選手がPGということはなかっただろう。1990年代〜2000年代は「PGが得点王に絡むようなチームは勝てない」が常識だった。2000-2001シーズンにアレン・アイバーソンが得点王に輝き、所属するフィラデルフィア・76ersをNBAファイナルに導いているが、このシーズンはエリック・スノウがPGだったためにアイバーソンはSGだった。

 話を戻せば今季、得点王争いを繰り広げる3選手の所属するチームは、すべてプレーオフ出場圏内。トーマス率いるボストン・セルティックスは、クリーブランド・キャバリアーズを抑えてイースタン首位に立ち、ハーデン率いるヒューストン・ロケッツは、ゴールデンステート・ウォリアーズ、サンアントニオ・スパーズに次ぐウェスタン3位をほぼ確定。ウェストブルック率いるオクラホマシティ・サンダーも、ケビン・デュラント(現ゴールデンステート・ウォリアーズ/SF)の移籍で「プレーオフ出場は困難」とシーズン前は評価されていたにもかかわらず、堂々のウェスタン6位だ。

 つまり、3選手はPG本来の役割である「司令塔」としてチームを勝利に導きながら、自身の得点を量産していることになる。

 昨季のステファン・カリー(ウォリアーズ)や、2014-2015シーズンのウェストブルックといったように、近年はPGが得点王に輝くことも多く、今季3人のPGが得点王争いを繰り広げているのは偶然ではない。

 デュラントの加入でシュート機会が減り、今季のカリーは平均25.0得点(リーグ12位)という数字だが、リーグ屈指のスコアラーであることは疑いようもない。さらには、リーグ7位に平均26.7得点のデイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、同11位に平均25.2得点のカイリー・アービング(キャブス)といったPGがランクインするように、近年のNBAは「得点を獲るPG」がトレンドだ。

 さらに興味深いのは、得点ランク上位3選手のウェストブルック、ハーデン、トーマスがまったく異なったタイプのPGだという点だろう。

 ウェストブルックは平均31.8得点で得点ランキング1位に君臨するだけでなく、平均10.6リバウンド、平均10.4アシストを記録するオールラウンダータイプのPGだ。3月29日のオーランド・マジック戦では57得点・13リバウンド・11アシストを記録し、史上最多得点によるトリプルダブルを達成した。

 このままウェストブルックが成績を維持すれば、「NBA史上最高の選手は誰か?」というトピックスで必ず登場するオスカー・ロバートソンが半世紀以上前の1961-1962シーズンに達成して以来となる、史上ふたり目の「シーズン平均トリプルダブル」を達成した選手となる。

 一方、ハーデンがSGからPGにコンバートされたのは今季から。しかし、PG1年生にもかかわらず、現在平均11.3アシストでアシストランキング1位。まさにハーデンは、天才的バスケセンスを持った超オフェンス特化型のPGだ。

 そんなハーデンだが、今季ヘッドコーチ(HC)に就任したオフェンス志向の強いマイク・ダントーニに未経験のPGへのコンバートを告げられた際は、「クレイジーだと思った」と語っている。

 それでもハーデンは、過去にダントーニHCが率いて旋風を起こしたフェニックス・サンズのPGスティーブ・ナッシュの映像を繰り返し見て、PGについて学んだという。その結果、ロケッツのオフェンスシステムの変更もあるが、昨季の平均7.5アシストから平均4本近くアシスト数を増やしているのだから、天才的センスとしか言いようがない。

 もちろん、ハーデンの爆発的なオフェンス力も健在。12月31日に行なわれたニューヨーク・ニックス戦で53得点・16リバウンド・17アシスト、1月27日の76ers戦では51得点・13リバウンド・13アシストを記録。ちなみに1シーズンに50得点超えでのトリプルダブルを複数回達成したのは、過去に4人しかいない(ハーデン、ウェストブルック、ウィルト・チェンバレン、エルジン・ベイラー)。

 そしてトーマス。高さよりもスピードやハンドリング能力が求められるPGの身長が低いことは、もはや常識と言っていいだろう。それでも175cmのトーマスは、190cmのウェストブルック、196cmのハーデンと比べても格段に小さい。そのためトーマスは、「NBA史上もっとも身長の低い得点王」アイバーソン(公称183cm)と比較されることも多い。

 だが、トーマスとアイバーソンのプレースタイルは対極と言っていい。アイバーソンは群を抜く身体能力と、理屈よりも本能的なムーブで得点を量産した。もちろん、トーマスも高い身体能力を誇るが、アイバーソンには及ばない。しかし、本能よりも日々の練習で技術を向上させ、年々得点力を向上させている。その高いスキルは、全世界の身長の低いプレーヤーの手本となるはずだ。

 低身長をカバーするために、シュートは必ずステップバックやフェイドアウェイ、もしくはあえてマークマンに身体をぶつけてファウル狙いで打つ。また代名詞と呼ぶべき、ディフェンスにボールを隠すような位置で一度ドリブルしたのちに急加速して置き去りにする「ハーフターン・ヘジテイションムーブ」は、まさに低身長の選手が必ず身につけるべきムーブだろう。

 ただ、アイバーソンとトーマスには共通点もある。以前、引退したケビン・ガーネット(211cm)がトーマスを「彼はハートを持ってプレーしている」と賞賛したことがあった。それを聞いたトーマスは、こうコメントしている。

「俺は175cmのガーネットになりたい。サイズが違うことはわかっている。ただ彼は、誰を相手にしようとひるまなかった」

 一方、現役時代のアイバーソンは「バスケットボールで大切なのは、身体のサイズじゃない。ハートのサイズだ」との名言を残している。両者とも「ハート」を最大の武器にしていることは同じだ。

 得点王争いは、現時点で唯一の平均30得点オーバーのウェストブルックが有利。しかし、3月24日のセルティックス戦でデビン・ブッカー(フェニックス・サンズ/SG)が70得点を記録したように、世界最高峰の選手たちが集うNBAという舞台では何が起こるかわからない。

 ウェストブルック、ハーデン、トーマス――。大量得点も十分にあり得る3人だけに、レギュラーシーズン最後の試合が終わるまで得点王争いの行方は確定しない。

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