貨物列車が活躍の場を広げている

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 日本貨物鉄道(JR貨物)の鉄道事業が、24年ぶりに黒字化を達成した。人手不足やモーダルシフトなど、黒字化には様々な理由が考えられるJR貨物が黒字化を果たした経緯と理由について、ライターの小川裕夫さんがリポートする。

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 今年、JRは発足から30周年を迎える。7社に分割された国鉄は、経営危機に瀕する北海道、民営化の成功モデルと謳われる東日本、絶好調の東海道新幹線を抱えリニアの建設にも意欲的な東海など、各社の明暗は分かれている。

 7社のなかでも旅客営業をしない貨物は異色な存在として知られる。分割民営化時の議論がなされていたとき、すでに物流業界はトラック配送が主流になっていた。そのため、JR貨物は産まれる前から無用の存在になると目されていた。

 JR貨物が発足した1987(昭和62)年度、JR貨物の年間輸送量は5627万トンもあった。それらは年を経るごとに減少し、2014(平成26)年度には3031万トンにまで落ち込んでいる。

 苦境に立たされたJR貨物だったが、物流を取り巻く環境が変化したことによって経営状態は改善する兆しを見せている。今般、ネットショッピングの隆盛によって貨物輸送の需要が増加する一方、それらを各家庭に配達するトラックドライバーは不足している。

 トラックに依存した物流体制は、すでに崩壊寸前。物流が機能不全に陥れば、その影響は小売店にも及ぶ。そうした事情から、メーカーや流通大手はトラックから鉄道へと切り替え始めている。

 トラック輸送を貨物列車に切り替える潮流は、今年に入ってからも加速している。従来、トヨタ自動車は自動車部品を愛知県から岩手県まで輸送する貨物列車「TOYOTA LONG PASS EXPRESS」を運行してきた。今年3月のダイヤ改正で、「TOYOTA LONG PASS EXPRESS」は一日2往復に増便。流通大手のイオングループもメーカー各社と協力し、東京−大阪間の商品配送に貨物列車の活用を模索している。

 今年1月には、ビール業界1位のアサヒと2位のキリンが鉄道貨物で北陸地方への共同配送を開始。両社のビールは大阪の吹田貨物ターミナルから同じコンテナに積載されて、石川県の金沢貨物ターミナルへと運ばれる。さまざまな業界がトラック輸送から鉄道貨物へシフトしたことで、JR貨物は24年ぶりに黒字化を達成した。

 社会環境の変化が貨物列車の需要を拡大させたことは間違いない。だからと言ってJR貨物が手をこまねいていたわけではない。JR貨物も赤字に苦しみながら、どうにか売上を伸ばそうと地道に努力をつづけてきた。

 例えば、1992(平成4)年前後から輸送力を増強するために一編成の長大化を進めている。一編成が長大化すれば、一度に運べる荷物の量は増え、より効率的になる。

 JR貨物は一編成を最大で26両で運行できるように待避線を増設。貨物駅のコンテナホームの延伸・拡張工事も着手。同時に電力施設を強化した。こうした貨物列車の輸送力増強を裏で支えるインフラ整備が、ここに来てようやく花開いたのだ。

「JR貨物は荷物を積み込むコンテナの大型化も進めて、現在は31フィートコンテナが主流になっています。31フィートコンテナは10トントラックの荷物に相当しますので、トラックの荷物を列車に積み替える際の手間や時間が大幅に削減されました。また、事業者がスムーズに列車を予約できるようにGPSとICタグによる荷物管理を徹底するなど、IT化も推進しました。こうした取り組みによって、貨物列車が輸送手段として使いやすくなり、貨物列車の需要を掘り起こしたのかもしれません」(JR貨物総務部広報室)

 30周年を目前にして復権する貨物列車。JR九州は2016(平成29)年に上場を果たしたが、JR貨物にも同様の期待が寄せられている。