中国で韓国叩きがものすごい勢いで広がっている。中国政府が韓国の「THAAD」(サード、終末高高度防衛ミサイ)配備に抗議して、官製の一大反韓キャンペーンを展開し始めたのだ。

 韓国系商店のボイコット、韓国の芸能人の公演禁止、韓国ドラマの放映禁止、民間交流の規制、中国人の韓国訪問の禁止、さらにはキムチの販売や購入の禁止まで、中国で異様なほどに韓国排斥運動が高まっている。韓国ではこの反韓運動に音をあげて米国に助けを求める動きまで出てきた。

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驚くほどの豹変ぶり

 韓国は北朝鮮の核兵器やミサイルの脅威に備えて、米軍の新鋭ミサイル防衛システム「THAAD」の配備を2月上旬に決めた。この配備に対して中国政府は強い抗議を表明するとともに、国内各地の共産党組織を通じて大規模な韓国叩きのキャンペーンを開始した。

 手の平を返すとは、まさにこんな事態を指すのだろう。つい最近まで、中国は韓国との交流を大々的にアピールし、日本との間の歴史問題でも韓国と連合を組んできた。2015年9月の「抗日勝利70周年記念」の大軍事パレードには韓国の朴槿恵大統領が出席し、中韓連帯を誇示した。

 それが、驚くほどの豹変ぶりなのだ。中国は韓国との関わりがあるイベントをすべて中断し、官営メディアを総動員して国民にボイコットを呼びかけ、国民も「愛国」の名の下に一斉に韓国叩きに走った。

 米国メディアも、中国の激しい韓国叩きを報道している。たとえば3月中旬の「ニューヨーク・タイムズ」の記事は、中国各地で合計112店ある韓国企業のロッテのスーパーが消費者からボイコットされ、また、当局から突然の立ち入り検査を受けたことで半数近くが臨時閉店に追いこまれたことを詳しく報道していた。韓国の化粧品やマスク、キムチなどが輸入や販売を規制されたことも伝えられた。

「韓国叩きをやめるよう中国に圧力を」

 この動きによって、韓国側は米国に救済の訴えをするまでに追い詰められた。

 3月下旬、ワシントンの大手研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のハワイ支部にあたる「太平洋フォーラムCSIS」は、「THAADをめぐる中国の韓国叩き=ワシントンにとって他人の問題なのか」と題する論文を発表した。

 執筆者は、韓国の政府系シンクタンク「韓国統一研究院」(KINU)の元院長で現在は建陽大学教授の金泰宇氏である。

 金氏は同論文で、まず中国の韓国叩きの内容を列挙する。例えば「韓国の芸能人の中国での出演および公演の禁止」「韓国ドラマの中国での放映の禁止」「中国人の韓国観光訪問の禁止」「韓国企業に対するダンピング容疑の追及強化」「韓国産物を輸入する際の検疫強化」「中国観光客の韓国訪問禁止」などだ。

 金氏はこうした中国当局の措置は不当であり間違っていると断じ、その理由を以下のように挙げる。

(1)韓国がTHAADを配備したのは、北朝鮮の核兵器とミサイルによる挑発への対応のためである。韓国は自衛のために対抗策をとったにすぎない。

(2)THAADは純粋に防衛のためのシステムであり、攻撃用の弾頭は装備していない。その目的は韓国軍と米軍を北朝鮮のミサイル攻撃から守ることのみだ。

(3)THAAD の迎撃対象は北朝鮮のミサイルであり、中国を対象にしていない。また、その偵察対象範囲は800キロほどにすぎない。

(4)THAADの偵察能力がたとえ中国領内にまで及ぶとしても、中国が韓国、日本、西太平洋を偵察するレーダーの方がずっと強力である。

(5)中国は韓国の安全保障を無視している。韓国は北朝鮮の核とミサイルという脅威に直面しているのに、中国に対するその種の脅威は存在しない。

 金氏は同論文で、韓国は米国からの要請を受けた結果、THAADを配備しているのであり、そもそも米国の関与の度合いが大きい、だから米国政府は中国に圧力をかけて韓国叩きを止めるよう求めてほしい、と要請する。

 4月上旬に米国のトランプ大統領が中国の習近平国家主席と米国フロリダ州で会談する。その際に、トランプ大統領が習主席に韓国叩きを止めることを求めてほしい、というのが金氏の主張だ。

 中国は、このようにある国の行動が気に入らないと、中国国内でその国を徹底的に叩こうとする。日本もその標的となってきた。今後もまた起こり得るだろう。その際はどのように反撃するべきか。今回の韓国の対応はその指針となるはずだ。

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筆者:古森 義久