大阪府の「瑞穂の國記念小學院」の設置認可について、「ミス」を強調する橋下前知事に疑念を抱く古賀茂明氏

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連日、世間を騒がせている森友学園問題。果たして、設置認可は正当に行なわれたのか?

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、火消しに余念がない元・維新コンビへ疑惑の目を向ける。

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森友学園の不正に関与した疑いで、安倍政権の支持率が急落した。直近の調査によれば、前月比7.3ポイント減の47・6%という数字も出た。そんな政権を見て、二の舞いになるのはゴメンとばかり、火消しに余念がないのが橋下徹前大阪市長と松井一郎大阪府知事の元・維新コンビだ。

森友学園をめぐる疑惑の主な論点は(1)なぜ、国有地を8億円も安く買えたのか、(2)なぜ、「瑞穂の國記念小學院」の設置が認可されたのか、の2点だ。

この(2)の疑惑、小学校の設置認可のプロセスに関与してきたのが橋下、松井両氏が知事を務めてきた大阪府である。

それまでの設置基準では森友学園のように、幼稚園しか経営していない学校法人は借入金で小学校を設置・開校することはできなかった。規模の小さな幼稚園しか経営していない法人は、自己資金で学校をつくれるくらいの財力がないと持続的な学校経営は難しいと行政は判断していたためだ。

しかし、2011年7月頃、籠池理事長はこの条件が厳しすぎると、当時の橋下知事に緩和を要望。その後、松井現知事が12年4月に規制緩和を決めた。

その結果、「瑞穂の國記念小學院」は15年1月、府の私学審議会から条件付きで認可されることとなった。規制緩和後、小学校の設置申請は森友学園1件のみだという。これではまるで橋下、松井両氏による規制緩和は、森友学園に便宜を図るためのものだったかのようだ。

それだけではない。実は、極めて明白な重大問題がある。

規制緩和された設置基準には「学校の土地は“自己所有地”でなくてはならず、(一部例外はあるものの、その例外の場合でも)特に校舎だけは“借地”の上に建てられない」とある。

ところが、森友学園は財務省と10年以内(計画では7年後)に土地を買い取れるという契約を交わしていたが、それまでは借地で学校を運営する計画だった。つまり、小学校の新設は規制緩和後の設置基準に明確に違反していたのだ。なのに、府の私学審議会は「瑞穂の國記念小學院」を審査の対象とし、設置適当の認可を出している。

14年10月に森友側が認可申請を出したときに、大阪府は基準違反だとして申請を受理しないのが普通だ。しかし、なぜか府はこれを受理した。その理由は、それ以前に森友側と何回も打ち合わせして、当初は借地のままでもよいという判断を示していたからである。これは明らかに「故意」だ。

にもかかわらず、橋下前知事はツイッターで「(規制緩和後の)審査体制強化をワンセットでやるべきだった。ここは僕の失態」「財務状況の確認がなかった。府の判断はミス」と繰り返し「ミス」だったことを強調している。自分の「ミス」が事務方の「ミス」を呼び、不適切な認可につながったというストーリー。問題の矮小化(わいしょうか)を狙っているかのようだ。

しかし、財務ウンヌンの前に、7年間借地という時点で森友学園の認可申請は即却下するのが当然だ。それがされなかったのはなぜか?

忖度(そんたく)なのか? 府政与党である日本維新の会の関与、口利きはなかったのか?

「ミス」という軽い表現で、この闇をスルーしてはならない。

古賀茂明(こが・しげあき)

1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中