<気になっていることに関する情報はなぜだか目に飛び込んでくるもの。それを意識的な作業とするのが「カラーバス」だ。アイデア本のロングセラー『考具』より>

ビジネス書の世界には、定番と呼ばれるものがある。古い本なのに内容が古びず、読者のニーズに応え続け、ロングセラーとなっている。

いわゆるアイデア本でいえば、ジェームズ・W・ヤングの『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)や、フレドリック・ヘレーンの『スウェーデン式アイデア・ブック』(ダイヤモンド社)などがそれに当たる。前者は原書の初版が(なんと!)1940年、後者も2003年の刊行だ。

【参考記事】「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」とヤングは言った

もちろん翻訳書だけではない。日本人の著者による本では、おそらく最も有名なのがこの本、『考具』(CCCメディアハウス)だ。

大手広告代理店の博報堂に勤める加藤昌治氏が「考えるための道具、持っていますか?」と問いかけた本書は、2003年に刊行された。現在までに37刷、15万部のロングセラーとなっている。

カラーバスやマンダラート、オズボーンのチェックリストなど、発想術のさまざまなテクニックをこの本で知ったという読者も少なくないようだ。翻訳書にありがちな小難しさがなく、読みやすいのも人気の理由だろう。

といっても「考具(こうぐ)」なんて知らない、という人は多いはず。これまでアイデア本を手に取る人は、企画などを仕事にしている人が主だったからだ。

時代は変わった。右肩上がりの経済成長は消え去り、多くの業界が激しい競争にさらされるなか、ビジネスパーソン1人1人の「考える力」がより一層問われるようになってきた。さらに今後は、人工知能(AI)の発展により、単純作業など、多くの仕事が失われるとも言われている。

そこで人間に残された生き残る道は......などと小難しいことを考えずとも、これだけは確かだ。ビジネスの世界で生きていくのに、ベテランも若手も、考える道具があるに越したことはない。

このたび『考具』のサブテキストとして基礎編『アイデアはどこからやってくるのか』と応用編『チームで考える「アイデア会議」』(いずれも加藤昌治著、CCCメディアハウス)が刊行されたのを機に、『考具』から一部を抜粋し、5回に分けて転載する。第1回は「【考具その1】カラーバス」。

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【考具その1】カラーバス

色につられてヒントになるアイテムが集まってくる

 カラーバス。聞いたことがありますか? バスはBATH。色を浴びる、ということです。

 方法は簡単。朝、家を出る前に「今日のラッキーカラー」を決めます。赤? 青? 黄色? 何色でも構いません。例えば「今日は赤だ!」と決めます。そしていつものように会社まで通勤してください。

 すると「今日は赤いクルマが多いなあ」......何だかよく分からないけど妙に赤いクルマが目につくんです。屋外看板広告も赤いのが目に入る。これがカラーバス効果。

 たぶん統計学的には赤いクルマの通行量はいつもと同じはずです。違っても数パーセントでしょう。ところが自分が「今日は赤」と意識しただけで、やたらと目につくんですね。不思議です。

 見えるから見る、へ。SEEからLOOKに変わるんです。

 これは色に限りません。自分が気になっていることに関する情報ってなぜか向こうから自分の目に飛び込んでくる気がします。そんな経験はないですか?

 わたしたちの頭や脳は「これが知りたいな」となかば無意識に思っていることを命令として捉えているのかもしれません。勝手に探してくれている感じがするほどに。その経験を意識的な作業として変換してみるだけです。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部