MAGiC BOYZ(写真=Shigeo Kosaka)

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 “3MC&1DJ小中学生HIPHOPグループ”MAGiC BOYZ(以下マジボ)の『平成28年度 卒業パーティー』@渋谷HARLEM。フロアの観客を前方に手招きし、そこに次々とダイブしていったMCのリュウト、トーマ、マヒロ。それを満面の笑みで見守る、小学生DJ・ジョーと大人ラッパー・ZEN-LA-ROCK……。

 2014年の結成以来、オリジナルメンバーだったフウト、ユウトの卒業、DJだったマヒロのMCへの転向、小学生メンバー・ジョー&ミロの加入、約4カ月でのミロの卒業……と怒涛の変遷を遂げてきたマジボ。この歴史の中でもホーミー(=マジボファン)をあっと驚かせたできごとがラッパーとして20年近いキャリアを誇るZEN-LA-ROCKの加入だった。作品の制作過程やステージを通してMC3人をより本格的に“ヒップホップ道”へと誘い、DJジョーとは26歳という年の差もありつつ絶妙なコンビ感をかもし出した彼が、“アルバム制作と婚活のため”このたび卒業することに。

 この日はまずジョーとZEN-LA-ROCK、時々MC3人も参加するにぎやかなDJタイムを経て、ヒップホップ界から豪華ゲストが集結した。トップバッターは紅一点のあっこゴリラで、フリースタイル風の「ドンキーコング」など、パンチとしなやかさを併せ持つフロウで会場を瞬時にヒートアップさせていく。

 マジボの最新シングル『3.141592』(3月29日発売)のタイトル曲を手がけたTOKYO HEALTH CLUBは、制作時のメンバーとのエピソードなどを笑顔で語りつつ、センチメンタルな代表曲「CITY GIRL」など、同曲と世界観の連なる佳曲を聴かせる。

 続いて登場したのはZEN-LA-ROCK。ホーミーたちのノリを熟知しているだけあり、ラストの「ICE ICE BABY」などではひときわ大きなコール&レスポンスで会場を盛り上げ、ソロラッパーとしての本領を発揮していた。

 そのZEN-LA-ROCKとは旧知の仲であり、マジボのニューシングルカップリング曲「ON & ON」でコラボしたGAGLEから、ベテランラッパー・HUNGERの姿も。「短く言うと、MAGiC BOYZの先生です(笑)」と自己紹介したHUNGERは、“滑舌オバケ”の異名を取る超絶ラップスキルを繰り出していく。

 お祭りらしいモードをいい意味で一変させたのが、NIPPS+CQというヒップホップ界の重鎮とDJ MUTAからなる・BUDDHA MAFIAだ。マジボにとってのデビュー曲「MAGiC SPELL〜かけちゃうぞ!ぴっぴっぴっ〜」、やはりライブの定番曲である「illson feat.NIPPS、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)」などのリリックを手がけたNIPPSを「僕たちの神様です」とリュウトが紹介。MCをほとんどはさまず、BUDDHA BRANDの代表曲「人間発電所」のリミックスなど、ドープきわまりない世界観で異空間を作り上げていく。

 そんな豪華ゲストで温まりきった空間に、マジボの5人が登場。「どうですかジョーさん、調子は?」(ZEN-LA-ROCK)、「今日はめちゃめちゃ調子いいです〜!」(ジョー)というゆる〜いやり取りから、「マジボのテーマ」がスタートした。

 マジボの魅力を端的に語ると、まずヒップホップ界の大人たちが遊び心を存分に詰め込んだ楽曲群が挙げられる。<かけちゃうぞ ぴっ ぴっ ぴっ>のフレーズに加え、この日は水鉄砲で観客を濡らすという含みにニヤリとさせられる先述の「MAGiC SPELL〜」、Taichi Masterによる軽快なトラックでタオル回しの定番曲になった「調子のってる⤴」、ZEN-LA-ROCKプロデュースによるレトロなディスコサウンドの「Oh!!!受験☆Night Fever」……。そしてEDMの注目ジャンル・ジャングルテラーを取り入れた「Do The D-D-T!!」は、ファンの間でも非常に人気の高い一曲。性急なトラックにジョーがホイッスルを吹きながら踊るホイッスルタイムなどが差し込まれ、何度聴いても高揚感が抑えられないこの曲はキラーチューン中のキラーチューンといえる。

 そしてリリースイベントなどでももはやおなじみの光景なのだが、彼らの場合は会場の全エリアがステージであるということ。この日は客席降りやダイブはもちろん、2Fの関係者エリアまでリュウトが突進してきて上から観客を煽るという荒業に出ていた。そのアグレッシブさたるや、もはやパンクの域だ。

 会場の全エリアがステージという意味では、ライブのみで披露される「ナンパラップ」も特徴的だ。特定の観客をロックオンして愛を語るこの曲を、この日は婚活に励む(?)ZEN-LA-ROCKのために特別にアレンジして「婚活ラップ」として披露。フロアでめでたくロックされたホーミーにはバラの花と婚姻届(※ZEN-LA-ROCKサイン入り)が配られたとのことで、卒パならではの粋な演出だった。

 ラップに関してはまだまだ発展途上なマジボだが、MC3人の成長ぶりがとても頼もしい。ステージングを含め研究熱心さが伝わるリュウト、あどけない声質だが小難しいフロウもさらりとこなすトーマ。DJから転向した結果、荒削りながら華のあるMCへと成長しつつあるマヒロ。「DJスキルの進化がハンパない」(ZEN-LA-ROCK)というジョーは、パフォーマンスにおいてもその強心臓ぶりを発揮していた。

 彼らの奮闘ぶりはニューシングル『3.141592』のカップリング曲制作にあたってのドキュメンタリー動画『P!P!P! MiSSiON マジボ、また大人にふりまわされてるってよ』からも伝わってくるのだが、この日はライブ後半でその楽曲群を披露。山梨発のヒップホップユニット・stillichimiyaのYOUNG-Gと甲州弁ラッパー・原田喜照とのコラボによる「『ずら』との遭遇!」は、“原ちゃん”の唯一無二の絶唱フロウに3人が立ち向かうような構成がユニークだ。そして20年選手である餓鬼レンジャーとのコラボ曲「10000000000YEN」は、<地獄の沙汰も金次第>とかましながら偽札をバラまくパフォーマンスがなんともシュール。「ON & ON」では、リリックを手がけた本家GAGLEのHUNGERとともに、“ユニットを続けていく意味”を、熱を込めて伝えているようだった。

 マジボの卒パといえば、オリジナルメンバーのフウト&ユウトを涙で送り出した昨年の卒パをどうしても思い出してしまうのだが、昨年リリースされた「ありのままでマジボ」と、今年の卒パタイミングでリリースを迎える「3.141592」を、本編ラストにパフォーマンスしたセットリストも象徴的だったと思う。「僕たちMAGiC BOYZは何があっても進みます。ついてきてください」というリュウトのMCに、フロアが大きく沸いた。

 本編終了後に行われたのはアンコール……ではなく、“校長”のNIPPSによるマジボ学園卒業証書授与式(!)。この日をもって中学を25年で卒業するZEN-LA-ROCKはもちろん、各メンバーにもそれぞれ卒業証書が贈られた。そして「カノン」をバックに<ホントはやめないで/けれどもその願いは絶対かなわない>などと綴った、去り行くZEN-LA-ROCKへ贈るラップが、ちょっとだけ涙腺に来てしまった。そんなセットリストのラストを締めくくったのはZEN-LA-ROCKとの想い出が詰まった「Oh!!!受験☆Night Fever」。頑張る人への応援ソングといった趣の楽曲なのに、ミラーボールの光が妙にセンチメンタルな空気を感じさせる。

 アンコールがかかり、最後の最後に再びドロップされたのは「Do The D-D-T!!」。本編を上回るテンションで繰り出される全力の振りと「成長期!!」のレスポンス。明るく締めた「Oh!!!受験〜」にすらエモさを漂わせた“第5期”マジボのラストパフォーマンスは、底抜けにエモかった。「転がる石には苔がつかない」というが、本当にいろいろありながらもアーティストとして転がってきた彼らの明るい未来を、これからも見守っていきたいと思うのだ。(古知屋ジュン)