【試乗記】BMW 523d、ステアリングを握れば「駆け抜ける歓び」を堪能でき、搭載されている運転支援システムも感動的:木下隆之

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 7年振りにフルモデルチェンジを受けた新型BMW5シリーズが、日本で発売を開始する。世界で800万台を生産してきたBMWのヒット作であり、世界を代表するミドルセダンとして成功を収めてきた5シリーズであるがゆえに、BMWのこのモデルに対する意気込みも強いように感じた。

 最初に印象深かったのは、車格感があきらかに増していることだ。7代目となる新型は先代に比較して、全長で36mmも延長されているのだ。全幅も6mm広い。
 だが、全高はわずか2mm高くなっただけ。それでも、試乗会場に並ぶモデルをパッと眺めただけで、強く迫ってくるほどの押し出しを感じたのである。一瞬「7シリーズか⁉」錯覚したほどである。

 それでも、徹底した軽量化が計られているから、重量増はない。というより、アルミ合金や高張力鋼板はもちろんのこと、マグネシウム合金を積極的に取り入れることで、先代比で80kgもの軽量化を果たしているというのだから驚きである。ハンドリングや動力性能に与える影響は少なくないわけで、BMWらしい「駆け抜ける歓び」はさらに磨かれているのだろうと期待に胸を膨らませた。

 ただし、新型のウリはそれではないようだった。意外なことに、試乗会場は横浜ベイサイドエリアを中心にしたステージ。BMW流の爽快な走り味を堪能するには、高速走行が可能なハイウエイやワインディングが相応しい。であるのになぜか湾岸高速道路でのお披露目だった。

 その理由は、試乗会が進むにつれて判明してくる。そう、小洒落たカフェで行われたプレゼンテーションでも、動力性能や操縦性自慢へのプレゼンテーションはほんのわずかだった。走りの基本性能のアピールもそこそこに、搭載される運転支援システムの紹介に終始したのである。

 そう、山坂道を駆け回るよりも、交通が穏やかに流れる湾岸高速を選んだのは、運転支援シスム を試すには都合のいいステージだったのである。であるからここでは主に、運転支援システムを味わった感想をお伝えすることにする。


 試乗したのは「532d」である。直列4気筒2リッターディーゼルターボで、最高出力190ps/4000rpm、最大トルク400Nm/1750rpm〜2500rpmを発揮。8速ATと組み合わされる。もちろんFR駆動方式だ。

車両重量は前述の理由により、わずか1700kgに留められている。

 ディーゼルであることを強く意識させられるのはアイドリングサウンドだけであり、一旦走り出してしまえば、上質でかつ安楽な空間に終始する。

 ダイエットされたこともあって、十分すぎる動力性能を誇る。それでいて、どっしりと腰の座った乗り味である。試乗コースの関係で、アップテンポなコーナリング性能を確認することはできなかったが、走りが確かであることは容易に想像がついた。 

 それでいて例の運転支援システムが感動的だった。もはや自動運転レベル2に迫るものだ。自動で車線変更はさせていない。あくまで、ドライバーの疲労を軽くし、安全運転をするための部分運転支援なのだが、その延長線上には完全運転があるのだと予感させるほどのレベルまで追い込んでいたのだ。

 ルームミラーには二つのステレオカメラが内蔵されており、障害物やコースを監視する。さらにはミリ波レーダーセンサーがフロントに3基、リアに2基組み込まれている。前後左右を常に監視続けている。

 アクティブクルーズコントロールが車速を安定させるのは当たり前。障害物を察して急停車もするし、レーンを逸脱すると警報するのも当然の装備である。

 だが、それらの精度が高いことに驚かされた。前車とのディスタンス調整も素直で自然だった。間隔が空いたからといっても慌ててエンジンが唸りをあげるという不自然はないし、認識が遅れて前のめりになった減速をしすぎることもない。いわば丁度いい加減速なのである。前方認識力が高く、制御が緻密だった。運転のちょっと上手ドライバーがボンネットに隠れているかのようなのだ。

 車線や障害物を監視続けながら、自動で走行を続けてくれるのだが、その精度も驚くほどのレベルにあった。やや急なカーブの旋回ですら、車線の真ん中を正しくキープする。ガードレールにギリギリまで迫って慌てて反応するという不快感もない。よって、車線内で蛇行するような失態は犯さないのだ。

 新機能のアクティブ・サイド・コリジョン・プロテクションがまたまた感動的で、例えば隣の車線を走行中のクルマが居眠りしてフラフラしたり、強引に幅寄せしてきたとしても、安全を確認しながら逃げてくれるのである。

 自動運転ではないから、あくまでハンドルには手を添えておくのが基本である。だが、もしそれを無視していいのなら、高速道路のほとんどを、あぐらをかいたまま両手離しで走り切れそうなほどである。自動運転はすぐそこまできているのである。

 新型5シリーズは、現状でもっと進んだ部分支援システムを搭載していると言っていいのかもしれない。それでいて、走りの確かさを予感させる。ステアリングを握れば駆け抜ける歓びを堪能できるのだろうし、それ故に楽で安全な移動が可能なのだ。

 『 感動的である。』

【ギャラリー】BMW523d (116枚)


■BMW Japan 公式サイト