【ライターコラムfrom湘南】クラブに息づく競争哲学…切磋琢磨の日常が築き上げた“湘南スタイル”

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 出番は唐突に訪れた。前節のジェフユナイテッド千葉戦で今季初めてメンバー入りし、初先発を果たしたMF武田英二郎である。

 開幕から4戦はいずれもバックアップメンバーに回っていた。ただ、ゴールに関わっても次の試合でスタメンを外れることなど珍しくないように、湘南ベルマーレにあっては突然の白羽にも大きな驚きはない。

「体の緊張はありましたが、頭は落ち着いていた」そう試合前の心持ちを振り返る武田は果たして、ダブルボランチの一角で立ち上がり早々ボールを奪い、守から攻への起点となるなど特徴を発揮した。曰く、「自分らしいプレーを求めて使ってもらったことが分かっていたので、球際や寄せ、運動量など自分の色を出すことを意識した。普段トレーニングでやっていることがそのまま出たし、戦うことやボールを取りに行くプレーが自分の一番の武器だと改めて思いました」。

 ナイスゲームだったと、曹貴裁(チョウ・キジェ)監督も試合後に語ったとおり、内容の伴う2−0の勝利に武田も84分間ピッチに立って貢献した。ただ、喜びを口にする一方こうも言う。

「勝った嬉しさはもちろんありますが、自分としてはもっと攻撃にかかわらなければいけなかったという意識のほうが強い。僕がもっと勇気を持ってボールにかかわりゲームを作っていたら、もしかしたらより良い試合にできたかもしれないし、逆に言えば、そこにチャレンジしていかないと成長しないと思いました」

 現在28歳、ベテランと呼ばれる年齢も近づく中で、しかし「まだまだ上手くなれると信じています」成長の余白を強く自覚する。

「とくに攻撃面はもっと上手くなれると思うし、上手くならなければダメだと思う。上を目指し、もっともっと選手からも監督からも信頼される選手になれるように頑張らなければと思います」

 週が改まり、切磋琢磨の日常は今週も粛々と続いている。

「ほかのチームだったら、勝った後はメンバーを代えないかもしれないですけど、うちはまったくそんなことはないし、それもまた湘南の良さだと思う。この前は自分にチャンスが来てチームも勝つことができましたけど、ほんとスタンスは変わらないです。また試合に出られるように、毎日全力でやるというふうにしか考えてない」

 そんな美化しないでくださいと、照れ笑いを浮かべるのは、事実特別なことではないからに違いない。世に言う“湘南スタイル”は、こうした彼らの足もとにこそ息づいている。

文=隈元大吾