福田正博 フォーメーション進化論

 代表戦ウィークを終えて再開されるJリーグ。今季は開幕から外国人選手たちの活躍が目立っている。今シーズンを迎えるにあたって各クラブは補強を活発に行なってきたが、彼ら外国人選手の出来、不出来が各チームの開幕スタートダッシュの成否に反映されていると言ってもいいだろう。


リーグ戦4節で5得点を挙げている浦和のラファエル・シルバ 期待通りの働きをしているのが、鹿島アントラーズのボランチ、レオ・シルバだ。2013年から昨季まで、アルビレックス新潟で攻守の要として発揮した存在感を鹿島でも見せている。

 プレー自体も素晴らしいが、彼の加入によってボランチを小笠原満男、永木亮太とでローテーションできるようになったことが大きい。これは、長いリーグ戦とACLを戦うチームに安定をもたらす。中盤を担う選手たちのコンビネーションが深まっていけば、鹿島の攻守の安定感はさらに増していくだろう。

 そのレオ・シルバ以上に、鹿島で目を見張る活躍をしているのがGKクォン・スンテ。開幕戦のFC東京戦は不運なオウンゴールによって0-1で敗れたものの、安定した守備で勝利に貢献している。第2節の甲府戦では終了間際にPKを止めて今季リーグ戦の初白星を引き寄せ、翌節の横浜FM戦でも相手のカウンターを見事に封じて勝ち点3を積み重ねた。

 鹿島のゴールマウスを長く守ってきた曽ヶ端準は、今季で37歳。昨シーズンの終盤はJリーグチャンピオンシップ、クラブワールドカップなど短期決戦でいい働きを見せたものの、「シーズンを通してのベストパフォーマンス」という点での信頼は揺らいでいた。それだけに、鹿島の連覇には安定感のあるGK獲得が課題であったが、クォン・スンテが3年連続Kリーグ・ベスト11の実力を存分に発揮し、チームの期待に応えている。

 しかも、クォン・スンテは日本語の勉強にも熱心だと聞いている。植田直通、昌子源を中心とするDF陣とのコミュニケーションは、これからさらに深まっていくだろう。シーズンが進むにつれて、鹿島の守備はさらに強固になっていくはずだ。

 鹿島のほかにも、川崎フロンターレのチョン・ソンリョン、ヴィッセル神戸のキム・スンギュ、セレッソ大阪のキム・ジンヒョン、コンサドーレ札幌ク・ソニユンという4チームが韓国人GKにゴールマウスを任せている。J1の18クラブのうち5チームが韓国人GKを守護神に起用しているのは、彼らが体格に優れ、技術力も高いことが理由にある。

 GKは勝敗を大きく左右するポジションなだけに、Jクラブが実力のある選手を欲するのは当然なこと。韓国のGKのレベルは、ひと昔前は決して高くはなかったが、韓国サッカー界が一丸となって強化してきたことで優秀なGKを次々と輩出するようになったのだ。

 逆の見方をすれば、身長が高くて当たりに強く、技術力のすぐれた日本人GKの絶対数が足りていないことの表れでもある。今後の日本サッカー界の発展を考えると、韓国人GKの力に頼るばかりではなく、優秀な日本人GKを育成できるシステム作りに取り組まなければいけない。

 攻撃に目を転じると、浦和レッズのラファエル・シルバの活躍が際立っている。昨年までの3シーズンを新潟で過ごした実績から、浦和でもある程度の結果を出すとは思っていたが、これほど早くペトロビッチ監督の戦術を理解し、フィットしたことは予想以上だった。

 浦和は攻撃時に3-4-2-1のフォーメーションを敷くが、ペトロビッチ監督の戦術の特徴は「選手の動き」にある。基本的に、各選手とも上下に動きながらパスコースを作っていく。サッカーではパスコースを作るうえでトライアングルを形成するのが有効で、それを維持するために選手が上下動を繰り返し、連動することがチームの決まりごとになっている。

 ほかのチームの場合、パスを受けようとする選手がピッチを斜めに走ったり、サイドの選手と中央の選手がポジションを入れ替えたりするが、浦和はほとんどそれをしない。浦和で1トップに入る選手は、サイドのスペースに流れたりせずに、常に最前線に位置してプレーすることが求められる。

 ラファエル・シルバのようにスピードがあって、ドリブルで攻め込めるタイプの選手が1トップの位置に入ると、普通は左右のスペースに流れてボールを受けたがるものだ。しかし、ラファエル・シルバはしっかりと前線で待ち構えることができている。だからこそ、開幕戦で2得点を決め、その後もゴールを生むことができているのだ。

 ただ、それがラファエル・シルバの「らしさ」かといえば、そうではない。浦和のシステマチックな攻撃のなかでは、持ち味を最大限まで発揮できていない。彼がこれからも自分の役割をまっとうできるのか。そのうえで、「らしさ」を出せるようになるのかどうかが、これからの課題となる。

 ストライカーでいえば、ガンバ大阪に加入して2年目のアデミウソンが高い得点力を発揮し、スロースターターの傾向が強いチームを序盤戦から上位に導いている。また、FC東京には昨季得点王のピーター・ウタカが加わった。得点王を狙える外国人選手たちがどういったプレーを見せてくれるのか注視したい。

 そして、忘れてはならないのが、ヴィッセル神戸に加わることが決まった元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキだ。2006年、2010年、2014年のW杯を戦った元ドイツ代表は、今年6月で32歳になる。確かに、キャリアのピークは過ぎているかもしれないが、それでもこれほどの大物外国人選手のプレーをJリーグで見られるのは久しぶりのこと。

 神戸は、開幕戦で得点源のレアンドロが負傷して長期離脱になりながらも開幕4連勝を飾った。その要因はボランチのニウトンとGKキム・スンギュを中心に、守備が安定しているからだが、ポドルスキの合流までに粘り強く勝ち点を積み重ねていければ、優勝争いの台風の目になるかもしれない。

 W杯アジア予選が行なわれたブレイク期間中は、各クラブにとって外国人選手とのコミュニケーションを深める絶好の時間になったはずだ。開幕からの1カ月で見えた課題を解消し、さらなる活躍を見せる外国人選手は誰か。4月1日から再開されるJリーグではそこにも注目したい。

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