東芝の半導体メモリー技術は重要であり、軍事や外交にも関わるセンシティヴな問題を孕んでいる。

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 2017年3月期に1兆円を超える巨額赤字の見込みとなり、経営再建に向け厳しい舵取りを強いられている東芝。30日に開かれた臨時株主総会で、半導体メモリー事業の売却を前提とした分社化を決定し、また、アメリカの企業から同事業に対し2兆円程度のオファーでの買収打診があったことも明らかにした。

 30日の総会には約1,300人が参加、議論は3時間半に及び、株主からは東芝経営陣に対する厳しい批判の声が相次いだ。

 東芝の細川智社長は米原発子会社ウェスチングハウスの破綻に伴う巨額の損失と2度にわたる決算発表延期について陳謝、3月末の債務超過によって8月に東証1部から2部へと転落することを報告。しかし、2017年度中には債務超過の状況から回復する、として、半導体事業売却への理解を求めた。

 さて。東芝が活路を求める半導体事業売却であるが、そううまく行くのであろうか?東芝の半導体メモリー事業は、シェア世界第2位(19.4%)である。ちなみに1位は韓国のサムスン電子(30.8%)だ。

 魅力的な「商品」なのは確かである。既に米韓あわせて10社前後からオファーがあるという。中でも高値を提示しているのは、アメリカの投資ファンドであるシルバーレイク・パートナーズと、同じくアメリカの半導体大手、ブロードコム、いずれも2兆円前後であるという。

 東芝が現在の債務超過を補うために必要な売却額は、税金なども考慮すると、おおむね1兆5,000億円程度となる。

 ならば上記2社のどちらかに売却してしまえばいいのではないかという話になりそうだが、そうは問屋が卸さない。半導体事業は、ただの民生技術ではない。情報化社会における、民間から国家レベルまでの機密保持の根幹に関わる技術を一部に含んでいる。東芝が同事業を外資に売却するためには、外為法に基づいた事前審査が必要となり、特に韓国への売却については日本政府からの警戒が著しい。ある経済産業省幹部は、「技術流出がないことが望ましい」との談話を出している。

 かくのごとく売却への道も平坦ではないというわけだが、果たして東芝に復権の日は来るのであろうか。状況は予断を許さない。