photo by  Dick Thomas Johnson via flickr(CC BY 2.0)

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 3月14日、東証や大証などを傘下に持つ日本取引所グループ(「JPX」)とサウジ証券取引所(「タダウル」)は、両市場間の包括的な協力協定(Memorandum of Understanding)を締結した。

 清田 瞭(きよたあきら)日本取引所グループCEOはリリース内で「現在、タダウルは資本市場開放や市場機能の強化を大変早いスピードで実施していますが、お互いの市場の更なる発展のため、今後協業していくことを期待しています」とコメントしている。また、ハーリド・アブドゥッラー・アール・ハサン(Khalid Abdullah Al Hussan)タダウルCEOのコメントの中で「本MOUはタダウルの資本市場育成計画とも整合的で、世界に開かれた先進的な資本市場の構築を掲げる「サウジアラビア・ビジョン2030」とも関連しています」としていることから、資本市場の構築や解放に関しては、JPXの知見がタダウルに活用されることが期待されていると推察できる。

 上場証券の重複上場、共同マーケティング・プロモーションに関しては、2018年に予定されているサウジ国営石油会社のサウジアラムコの新規株式公開(IPO)に際して、JPXがサウジアラムコのIPOを東証で実現したいという意向があるものと見られる。

◆サウジ証券取引所(タダウル)とは?

 サウジ証券取引所(タダウル)は、2007年に設立された、サウジアラビア王国で証券取引所の役割を担う唯一の(国営)企業である。

 タダウルは、証券の上場、売買、決済、保管・振替及び名義書換などの業務を遂行しており、タダウルの法的位置付けとその義務・責任は資本市場法により規定されている。タダウルの資本金はパブリック・インベストメンント・ファンドが全額出資している。タダウルはIOSCO(証券監督者国際機構)の協力会員であり、WFE(国際取引所連合)とAFE(アラブ取引所連盟)に加盟している。

 株価指数としては、上場全株式を対象とした Tadawul All Share Index(TASI)がある。(参照「タダルウ」))

 2017年3月16日時点で、177社がタダウルに上場している。(参照:Tadawul Listed Companies)

 産業セクター別の上場企業数と時価総額とは必ずしも一致しないが、時価総額ベースでは、金融セクターとエネルギーセクターの占める割合が大きい。金融セクターには、世界最大のイスラーム銀行である「ラージヒー銀行」 が上場している。また、サウジアラビアの公的な持株会社でサウジアラビア最大の投資会社「キングダム・ホールディング・カンパニー」、石油化学大手の「サウジアラビア基礎産業公社」なども上場している。

◆外国人投資家に株式市場開放したが限定的

 2015年6月、外国人投資家によるサウジアラビア株式市場での現物株投資が解禁になった。株式投資は、一定の条件を満たした「適格外国金融機関」(Qualified Foreign Financial Institutions(QFI))を通じて行われる。

 当初、「適格外国金融機関」になれる条件は、

ゞ箙圈⊂攘会社、ファンド運用会社、保険会社である
∧殕資産が187.5億リアル(50億米ドル)以上である
上記の金融機関としての業務経験が5年以上である

 の3つであった。

 また、外国人投資家には投資上限も下記のように定められていた。その条件とは

ヽ董崚格外国金融機関」につき1銘柄当たり発行済み株式の5%まで
∩干姐饋妖蟷餡箸1銘柄当たり発行済み株式の49%まで
A缶段舛了価総額の10%まで

となっていた。(参照:アムンディ・ジャパン)

 しかし、2016年9月、外国人投資家に対する規制緩和が進められ、「適格外国金融機関」になれる条件の上記“保有資産が187.5億リアル(50億米ドル)以上”が、“保有資産が37億5000万リヤル(約1010億円)以上”に引き下げられたほか、海外の個人投資家が保有できるサウジ企業の株式も“各「適格外国金融機関」につき1銘柄当たり発行済み株式の5%まで”が、“各「適格外国金融機関」につき1銘柄当たり発行済み株式の10%まで”へ上限が大きくなり、多少条件が緩和されている。(参照:ブルームバーグ)

◆アラムコの東証でのIPOはあるのか?

 東証に上場する外国企業は1991年の127社をピークに、減少傾向が続いた。現在、東証に上場している外国企業は、ワイ・ティー・エル、バンク・オブ・アメリカ、AIG、アフラック、新華ホールディングス、メディシノバの6社だけである。(参照:JPX)

 サウジアラビアの国営石油企業「サウジアラムコ」は、2018年に、新規株式公開(IPO)を計画している。世界最大規模のIPOとなることが予想されている。

 日本とサウジ両政府は、東証とアラムコによる上場研究グループ設置検討協議を支援することで合意している。

 東証でのアラムコのIPOが成功すれば、東証に上場している外国企業の減少傾向が底打ちし、東証のプレゼンスが高まる可能性が期待される。

<文/丹羽唯一朗 photo byDick Thomas Johnson via flickr(CC BY 2.0)>