育休増加が女性の不利益に? インドの「先進的」新法に懸念の声

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インド国会で今月、有給出産休暇の日数を12週から26週に拡大する法案が可決された。この改正により、同国は有給産休の数で50週のカナダ、44週のノルウェーに次ぐ世界第3位となった。

当然ながら、この決定は「先進的」なものとして広く歓迎された。インドのITサービス大手、インフォシスのモハンダス・パイ元取締役は、新法を歴史的と表現し、「とうの昔に実現すべきことだった。これで母親は出産後も6か月にわたり仕事を心配せずに子どもと過ごせる」と話した。

新法は従業員数10人以上の全民間企業に適用され、180万人の働く女性が恩恵を受ける。第2子までが対象で、第3子以降は12週のみ取得できる。パイは「極めて実用的で、政府が企業の視点からも熟慮を重ねた結果」と評価した。

人事コンサルティング企業、TMIグループのT・ムラリダラン会長は、同法改正は長く待ち望まれてきたとの見方に同調し、「従業員にとって素晴らしい出来事だ」と話した。

しかしスタートアップ界では、新法がむしろ逆効果を生む恐れを懸念する声が上がっている。女性を雇用するコストが上がると、零細企業が女性の雇用に尻込みする可能性があるのだ。匿名で取材に応じたあるIoT(モノのインターネット)スタートアップ創業者の男性は、大半の新興企業が創業当初は利益の薄さに苦しむため、この政策の実施は容易でないと語った。

ベンガルール(バンガロール)で36人を雇用するこの男性は「私は女性の能力を評価しているが、これからは男性を雇用しがちになるだろう」と話す。「女性差別だと思われるのは百も承知だが、全く勤務がないまま6か月の給与を払うことは不可能だ。私たちは1ドルの違いも無視できない」

さらに新法により、子育ては主に母親の役割だという固定観念が助長されると主張する人もいる。オンラインプラットフォーム「女性起業家のためのカタリスト(CWE)」を設立したスチャリタ・S・イーシュワルCEOは、26週の有給休暇の提供は零細企業にとって予算面で難しいと受け止められると指摘。

「男性の育児休暇法を導入すれば、子育ての負担を共有する文化を醸成し、出産休暇を理由とした女性差別を防ぐことができるかもしれない」と語り、性別にとらわれない形での規制を制定すべきだったとの見解を示した。

また、女性の職場復帰を支援する長期的なサポート体制が十分でないことも、この法律の導入では解決されない可能性がある。インド商工会議所連合会(ASSOCHAM)の調査によると、インドでは母親の25%が第1子出産の後に仕事を辞めており、多くが育児と勤務日程の折り合いをつけるのが難しいと感じている。

ムラリダランはこれが既婚女性の雇用に影響する最大の問題だとし、働く子持ち女性への支援を家庭と職場の両方で強化する必要があると指摘している。「女性は出産休暇の終了後、ほとんどが職場に復帰しない」(ムラリダラン)

遠隔勤務やパートタイム勤務などで働き方の柔軟性が増す一方、こうした勤務形態はITやITeS(IT活用サービス)などのごく少数の業界に限定される。働く母親が出産前の職務に戻りやすいよう、これらの勤務方針を採用する業界を増やす必要がある。

問題はあるにせよ、インドは新法により、出産直後の女性支援において正しい方向へと一歩踏み出した。賃貸情報を提供するファストフォックス・ドットコム(FastFox.com)のパラブ・パンデイCEOは、この変化がエコシステム全体にとって健全なものだと感じている。

「女性を雇用する数は大企業がはるかに多く、休暇の支給も経営上問題ないはず。全体的には評価できる措置で、より多くの女性の利益になると思う」と語った。