金正恩はアメリカの劣化を喜んでいる KCNA/新華社/AFLO

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 アメリカのトランプ新大統領の言動に世界が注目している。安倍首相も2月中旬、日米首脳会談を行い、新大統領との信頼関係構築を図ったが、過激な発言を繰り返すトランプ氏がリーダーとなったアメリカはいったいどこへ向かうのか? 作家の落合信彦氏が解説する。

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 近著『そして、アメリカは消える』で指摘したように、あの国は50年以上かけて少しずつ劣化してきた。しかし、ここに来て劣化のスピードが急激に加速している。世論調査によれば、トランプの「入国禁止」大統領令を支持するアメリカ国民は49%もいる。残念ながら、アメリカ人も劣化してしまったのだ。

 リーダーを見ればその国の国民のレヴェルもわかる。また、リーダーが劣化すれば、国民も劣化する。かつてケネディが大統領だった頃、アメリカは国家も国民も輝いていた。あの素晴らしい国は、いまや大きく変容してしまったのだ。

 アメリカが劣化して世界の平和にコミットしなくなったことで、今年は全地球的に戦争勃発の危機に見舞われることになるだろう。

 たとえばイランとサウジアラビアが火種になる可能性がある。シーア派国家のイランとイスラム教スンニ派の大国サウジアラビアは一触即発の状態だ。2016年1月には、サウジ政府がシーア派の指導者47名を「テロに関与した容疑」で処刑した。それにイスラム教シーア派指導者ニムル師も含まれていたことから、両国は国交を断絶。現在もさや当てを続けている。

 もしこの2国が戦争になれば、プーティンがイランのことを支えるだろう。一方、これまでサウジアラビアを支えてきたアメリカは傍観を決め込むはずだ。なぜならアメリカ国内でシェールガスが産出されるようになり、アメリカにとってサウジアラビアが「原油の防衛線」ではなくなったからだ。また、トルコも戦争の震源地になる可能性がある。大統領のエルドアンは独裁色を強めていて、何をしでかすかわからない。

 何と言っても日本にとって脅威なのは、北朝鮮だ。金正恩は日米首脳会談の真っ最中に弾道ミサイルをぶっ放し、挑発してきた。日本はそれに対し、「断じて容認できない」とお決まりのフレーズで声明を出しただけだった。

 北朝鮮は、潜水艦発射型のミサイルを地上から発射するタイプに改造した新型弾道ミサイルであり、実験に成功したと主張している。発射準備に時間がかかる液体燃料ではなく固体燃料が使われたとも指摘されている。本当なら、発射の兆候がつかみにくくなり日本の安全保障にとって極めて深刻な事態だ。

 他の国なら、隣国から何発も弾道ミサイルが発射され、目の前の海に撃ち込まれていたら、すぐ戦争になる。ここまでされて何もしないのは、日本くらいのものだ。日本は「ケンカ」を恐がっているから舐められて、北朝鮮の挑発がエスカレートするのである。

 金正恩は異母兄の金正男を暗殺し、暴走を加速させている。アメリカが世界平和にコミットしないとなれば、金正恩にとっては大チャンスだ。習近平が金正恩をバックアップし、極東で戦争が始まる可能性もある。その時、日本は“2つの核保有国”と戦わなければならないのだ。アメリカの劣化により、世界はジャングル化した。日本人は、その中でどう生き抜いていくか、考えていかなければならないのである。

※SAPIO2017年4月号