北朝鮮の金正恩党委員長は昨年末、秘密警察である国家保衛省(以下保衛省)に対して大々的な検閲(監査)を行うよう、朝鮮労働党組織指導部に指示した。その結果、保衛省のトップを務めていた金元弘(キム・ウォノン)氏が解任され、複数の幹部が処刑された。

シラケる国民

この検閲が最近になって終了したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。一方で、4月からは2次検閲が始まるとも伝えている。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、組織指導部が行ってきた保衛省に対する検閲が終了し、3月25日までに1次中間総和(総括)が行われた。

道、市、郡の労働党で行われた幹部学習班(政治学習の場)では、「司法イルクン(保衛省)は、人民の暮らしを豊かにするために与えられた権力で私利私欲を満たしていた」「王として人民の上に君臨し、人民に害を与えた」「保衛省幹部を処罰した」という組織指導部の報告が伝えられた。

(参考記事:口に砂利を詰め顔面を串刺し…金正恩「拷問部隊」の恐喝ビジネス

この内容は、一般住民を対象とした定期的な政治学習会である土曜学習でも伝えられ、保衛省幹部の処刑と粛清は、人民生活と密接に関係する措置であることが強調された。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、保衛省の検閲については、各地域の労働党の会議室で幹部を対象に行われた総和の場で「人民の暮らしを豊かにしようとする金正恩氏の意思を反映したもの」という評価がなされたと伝えた。

しかし、この情報筋は「当局は、保衛省幹部の処刑、粛清が金正恩氏の人民愛の表れであるかのように歪曲、宣伝している」とし、一部住民からも「問題は中央のトップ(金正恩氏)にあるのに、なぜ中間にいる幹部を処刑するのか」と不満の声が上がっている。

今回の検閲と粛清により、暮らし向きが改善すると考える人は皆無であるということだ。北朝鮮の庶民は、金正恩氏が不安心理を抱えており、粛清の目的は権力基盤をいっそう固めるためであることを知っているのだろう。

情報筋によると、2次検閲が4月1日から始まる予定で、地域社会にはそわそわした雰囲気が漂っているという。