アメリカでは「若者の科学離れ」が大きな問題になっており、トランプ政権の移民政策によって海外からの研究者がアメリカに入国できないことになれば、科学大国としての地位が低下しかねないと危惧する声があります。ジョンブラウン大学のサラ・ウィトロックさんが、なぜアメリカ人の若者がサイエンスの道からドロップアウトしているのかの原因について、自身の経験を踏まえて考察しています。

One Reason Young People Don't Go Into Science? We Don't Fail Well - Scientific American

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ウィトロックさんは大学の学部課程では生物科学を専攻しましたが、入学してから4週間後には、細胞学、化学、微積分の追試を受けるなどの洗礼を浴び、「自分には知性があるのか?」「このままで科学の学位を取得できるのか?」など、それまでの自信を打ち砕かれる状態だったとのこと。

ストレスで食が細くなるほど追い込まれたウィトロックさんですが、幸いなことに指導教授や高校時代からの友人などの支援を受けることができ、テストもクリアし、最終的にはAマイナスの成績を取ることができたそうです。このころの学校生活を振り返ると、「失敗しては学び直す」というプロセスの繰り返しで、大学院に進学したその後の生活にも通じるものだとのこと。つまり、科学者の生活とは、「仮説を立てては実験をして確かめる、結果が出なければ考え直す」という、いわば失敗の連続であり、失敗から学ぶことは科学者として求められる素養であり、大学入学当初の生活は、科学者の卵として自分の能力を高めるよい機会だったというわけです。



今では失敗から学ぶことの重要性を理解し、立ち直るすべを学ぶ能力を身につけたウィトロックさんは、振り返ると同じく科学の道を志したのに、志半ばで道から離れていく仲間を見ているうちに、科学の道からドロップアウトした人は「失敗することに失敗する」という特徴があるのではないかと考えています。失敗がつきものの科学の世界では、「うまく失敗する」ということが求められていますが、失敗から立ち直るのに失敗することで、最終的に科学の道から外れていくというわけです。

若者の科学離れの傾向は長年続いており、アメリカ人の科学者が占める割合は減り、海外からの留学生や外国人研究者の割合が増えている状況だとのこと。国外から優秀な科学者が集まる状況はアメリカにとって悪い事ではなく、人種や国籍は関係ないとも言えますが、トランプ政権が打ち出した強硬な移民政策の行方次第では、海外の科学者やその卵を受け入れられないことがあり得る上に、場合によってはアメリカ国内の外国籍の科学者が強制退去処分を受ける可能性まであるため、科学大国としてのアメリカの地位は不安定になりかねないとウィトロックさんは危惧しています。

科学に情熱を持つ学生が失敗から回復できるようにするには何が必要かを考えたウィトロックさんは、「自分の失敗を、誰かが共有してくれたときに初めて失敗から立ち直ることができた」という自身の経験を振り返り、失敗体験の共有が有効だと考えているとのこと。個人的な失敗について話すことは誰にとっても楽しいことではありませんが、同じような経験者からのアドバイスによって、その失敗がアカデミックな世界でのキャリアを台無しにするような大きな問題ではないと学生が知ることは、科学離れの現状を変え得る試みとして機能すると考えています。