ティーラシンのPKを止める川島永嗣【写真:Getty Images】

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 日本代表の3月シリーズ2連戦。ロシアW杯アジア最終予選のUAE戦(23日)とタイ戦(28日)はともに勝利し、ついにグループ首位に立った。

 東口順昭の離脱や西川周作の不調が叫ばれる中での重要な2試合、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がゴールマウスを託したのはベテランの川島永嗣だった。

 2度のW杯本大会を経験しているとはいえ、所属するフランス1部のFCメスで公式戦1試合出場にとどまっているGKを起用することに疑問の声は絶えなかった。しかし、川島は数々の好セーブで日本を勝利に導いて改めて実力を証明。自らの手で批判を称賛に変えた。

 今回の2試合で最も川島の力が発揮されたのは、UAE戦の1対1セービングでなく、タイ戦のPKストップだったのではないだろうか。経験豊富なベテランGKの魅力があの場面に凝縮されていた。

 4-0でリードして迎えた85分、長友佑都がペナルティエリア内でファウルを犯してしまう。だが、PKを川島が完璧なセーブで阻止した。グループ首位に立つため得失点差が重要になる一戦で、勝利を確実にするプレーだった。

 改めてPKのシーンを見直すと、川島はキッカーがボールを蹴る直前に、すでに右方向へ跳び始めていた。相手の動きに対してしっかりとタイミングを合わせ、事前に左右どちらに跳ぶかを決めていたのは明らかだった。

 このセービングは試合前のスカウティングの成果だったのではないかと思われる節もある。タイのキッカーに立ったティーラシン・デーンダーの資料は豊富にあり、失敗例も相当数ある。しかもPKの蹴り方は特徴的だ。

 特に助走で蹴る方向をある程度予想できる。ティーラシンのPKには大きく分けて3パターンあり、予測が立てやすい。

1 ボールの斜め後ろから入り、右足でゴール右隅を狙う
2 それほど角度をつけずに助走をとり右足でゴール左隅に強いボールを蹴る
3 1と同じくボールの斜め後ろから入って右隅を狙う素振りを見せつつ、右足を振りかぶったところで強引に腰をひねり左方向へ蹴る

 日本戦で見せたのは「3」のパターンだった。この蹴り方は腰を強くひねるためコースが甘くなりやすい。タイU-23代表時代の2013年、バルセロナとの親善試合で名手ビクトール・バルデス相手には成功させていたが、やはりコースは甘めだった。

 昨年11月のW杯最終予選オーストラリア戦では「1」でPKを成功させていたティーラシンだが、同12月のAFFスズキ杯決勝のインドネシア戦では「2」の蹴り方で失敗。キッカーをしっかりとスカウティングしていれば、助走や視線の動き、姿勢などで予測を立て、タイミングを合わせて跳ぶことができる。

 さらに川島が素晴らしかったのは、ボールを弾く方向だった。PKは一度止めても、こぼれ球に詰められて結果的に失点してしまう場面が多々ある。しかし、今回は相手の動きを完全に読んで余裕を持って跳んだうえ、しっかりと相手選手のいない方向にボールを弾いた。

 PKという不測の事態が起こる前からの準備を怠らず、実際にその場面がやってきても慌てることなく準備の成果を生かして最適なプレーを選択した川島の完勝だった。本人の口から語られるまで真相はわからないが、完璧なPKの守備だったと言えるのではないだろうか。

text by 編集部