ようやく戦列復帰を果たした藤ヶ谷だが、今度はふくらはぎを傷めて交代に……。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 G大阪対浦和戦は、必ず“何か”が起きるカード、と言っていいかもしれない。3月19日の市立吹田スタジアムでの一戦、ほぼ観客席を埋めたサポーターを騒然とさせ、同時に胸を熱くさせたのが、36歳になった大ベテランの藤ヶ谷陽介、そしてプロ6年目ながらまだリーグ戦未出場だった23歳の田尻健――。ふたりのGKを巡るドラマだった。
 
 日本代表にも選出される正GKの東口順昭が11日の3節・FC東京戦で、PKのこぼれ球に詰めた大久保嘉人との接触プレーで左頬を骨折し、戦線離脱に……。その直後に行なわれたACLの江蘇戦(0-1で敗れる)では、今季加入した鈴木椋大が“新天地デビュー”を果たした。
 
 そして、この浦和戦では、1月に負った右腓腹筋肉離れから戦列復帰した藤ヶ谷が、今季初めて公式戦のピッチに立った。
 
 前半から浦和に押し込まれる劣勢のなか、藤ヶ谷は38分に森脇の鋭いシュートをキャッチ。さらに幾度となく危ない場面で身体を張り、コースを防ぎ、ギリギリのところでゴールを許さない。そして57分、今野の待望の先制ゴールが決まった。
 
 しかし--その後も宇賀神のシュートを止めるなど猛攻に耐えていた背番号1が、63分、ピッチに膝をつく。一旦は立ち上がってプレーは再開したが、再びふくらはぎの裏を押さえて、倒れ込んでしまう。ヒラメ筋が肉離れを起こしたのだ。
 
「情けないですね……。怪我で交代だなんて。チームに迷惑をかけてしまいました」(藤ヶ谷)
 
 チームドクターと藤ヶ谷がプレー続行は不可能だと判断。背番号18は担架でピッチ外へ運び出される。そして72分、ベンチにいた田尻がまさにスクランブルで送り出された。
 
 試合後、藤ヶ谷は無念そうに振り返る。
 
「『あれおかしいな』と思ったら、左ふくらはぎがぴきっと来た。そこから100パーセントでは走れなくなってしまった。肉離れかなと思い、ドクターと相談して、交代を決めました。久々の実戦で、上手く試合に入ることができました。それだけに……情けないですね」
 
 藤ヶ谷は「情けない」という言葉を繰り返した。​​

 一方、交代出場した田尻にとっては、まさかの形で“J1デビュー”の機会が巡ってきた。
 
「(デビューは)緊張するものなのかなと想像しましたが、そんなこともなくすんなりと入れました」(田尻)
 
 ファーストプレーとなったクロス処理に成功。そこで気持ちも落ち着き、「そのあとは物怖じせずにできました」と振り返る。
 
 スコアは1-0のまま刻々と時間は過ぎていき、アディショナルタイムに突入する。ところが、やはりただでは終わらないのがこのカードだった。
 
 宇賀神のミドルレンジからの強烈なシュートが、ペナルティエリア内にいた倉田の手に当たる。主審はハンドのファウルと判定する。田尻にとっては見せ場とも言えるPKの場面を迎えたが……R・シルバにキックを決められ、90+3分に同点とされ、勝点3を掴み損ねた。
 
 プロ6年目にしてようやく掴んだ“リーグ戦デビュー”は、ほろ苦い結果に終わった。そして試合後、田尻は選手たちとともに吹スタを周回して、サポーターに挨拶。そこで、サポーターからの温かいたくさんの激励のエールを受けると、田尻は思わず涙をこぼした。
 
 目頭を押さえて歩く田尻の肩をオ・ジェソクが叩き、他のチームメイトも彼に声を掛けて慰めていた。
 
 藤ヶ谷はヒラメ筋肉離れで3月24日から全治3週間と診断された。日本代表のワールドカップ・アジア最終予選による中断期が明け、4月1日には5節・新潟戦を迎える。
 
 ゴールマウスを守るのは、果たして田尻か、鈴木か--。もちろん、東口も、藤ヶ谷も、彼らを全力でサポートする。GK陣がまさに総力を結集して、ガンバゴールを必死に守り抜く。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)