欲しい商品が売り場になければ、オンラインショップに顧客が流れてしまう(写真はイメージ)


 一人ひとりの顧客に合わせた、応答性に優れた小売店──。インテル IoTアジア・セールス IoTマーケット・デベロップメントダイレクターの佐藤有紀子氏は、今後、小売業が目指すべき店舗のあり方をこう語る。

インテル
IoTアジア・セールス
IoTマーケット・デベロップメントダイレクター
佐藤有紀子氏


「顧客は店舗により多くのことを望んでいます。店舗への期待値が上がっているのです。それに対してどれだけスマートに応えられるかが重要です」(佐藤氏)

 顧客心理が変化してきていることの背景には、ネットでの買い物が増加の一途をたどっていることがある。「オンラインショッピングでは、基本的に欲しい商品がすぐに見つかります。そうしたネットでの買い物に慣れた顧客は、店舗での体験を不自由できわめて応答性の悪いものに感じてしまうのです」(佐藤氏)

 実際にTime Tradeの調査によると、「製品が見つからない/店員に聞けないときはその場を去る」と答えた回答者が90%にのぼったという。「購入意欲はあるのに実際の購入につながっていない。つまり機会損失しているのです」(佐藤氏)。

 

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小売業が抱える3つの課題

 では、小売業は何をしなければならないのか。佐藤氏は3つの課題を挙げる。

 第1に、顧客とのエンゲージメントを高めることである。

 AmazonなどのEコマースサイトに比べ、実店舗では顧客の購入体験がパーソナライズされておらず、顧客別の対応ができていない。そのため顧客は双方の体験に差を感じてきている。どれだけオンラインのように顧客別の対応ができるかが実店舗の課題になっているのだ。

 第2に“人的資本”の管理を最適化することだ。

「店員がなかなか来てくれない」「長い列に待たされる」「向こうには手の空いているスタッフがいるのに・・・」など店舗で不満を感じたことがある方もいるだろう。「場所ごとに必要なスタッフをリアルタイムに把握して、最適に配置する店舗を作ることが求められています」(佐藤氏)。

 第3に、在庫精度を高めることである。

 小売業の中には商品の位置情報を収集しているところもある。しかし、それらは「工場から出荷」「トラックで運送中」「現在、どの店舗にあるか」を示すほどの精度に過ぎない。今後は「色やサイズは?」「同じ店舗のどこにあるのか、バックヤードか、どの棚の何番目?」などまで把握できる精度が求められてくる。

リテールテック インテルブース
(リーバイス社の在庫管理の事例を紹介している)


複数のデータを統合して活用する

 インテルは、POS、商品管理システムなどへのICチップやプラットフォームの提供を通して、小売業の効率化や経営改善に寄与してきた。そうして蓄えられた知見を基に、インテルでは小売業を変革するソリューションとして以下の3つを提示する。

(1)既存のシステム、複数のデータを統合する

「ほとんどの店舗にはすでになんらかのシステムが入っています。ただしシステムの用途は様々で、導入時期やメーカーの種類なども店舗により異なります。それらを統合し、一元化することで、店舗のあらゆる角度からの情報を入手できるようになります」

 インテルでは、「インテル・レスポンシブ・リテール・プラットフォーム(RRP)」というシステムプラットフォームによって、商品、顧客、労務管理、プロモーションなどに関するさまざまな情報を統合、連携して活用することを提案している。

(2)ネットの体験と実店舗の体験をつなぐ

「たとえば、オンラインショップで商品を検索したお客さんに、クーポンを発券してもらいます。そのクーポンを持って来店したら、そのお客さんに最適化した特典やサービスを提供できるようにし、エンゲージメントが高まるはずです」(佐藤氏)

(3)売れどきと売れ筋商品をリアルタイムに予測する

 今までコンビニエンスストアの多くは、「気温が○度下がるとおでんが売れる」という予測はしていたが、それは“季節の変化”という長期的なスパンでの予測だった。また、近くでコンサートが開かれるのならばいつもより仕入れを増やしたり、雨が降れば傘を店頭に並べるなどの対応もしていたが、それはあくまでも人の判断によるものだった。

「これからはデータを基に、この商品は今日の〇時に売り切れる、〇時からこの商品が売れるようになる、といった細かく正確な予測が可能になっていきます」(佐藤氏)。インテルは今後、現場で売れどきと売れ筋商品をリアルタイムで予測できるようなソリューションの基盤を提供していく予定だという。

 例えば、アメリカのリーバイス社では、インテルのRRPを在庫管理に活用している。

 デニムなどは一見すると同じように見える商品が多いが、サイズや種類別にどこにあるのかをリアルタイムで分かるようにしている。RFID(=非接触で、電波によりデータを読み書きできるタグ。電池が不要)がそれぞれ商品とサーバーで紐づけされていて、天井に取り付けた読取機でリアルタイムに読み取れる。

 カメラがついているので、顧客の動向もデータとしてとることができ、生産工場やPOSデータとも連携できる拡張性を持つという。

加速するパーソナライズとリアルタイム化の流れ

 小売業で進むパーソナライズとリアルタイム化の流れは、今後ますます加速していくとみられる。顧客ごとに最適化した商品やサービスをいかに迅速に提供するかが、今後の小売業の取り組みとして欠かせない。

 また、現在、約73%の消費者がインターネットで商品情報を閲覧してから店舗で購入するという。ネットと実店舗をいかにシームレスにつなぐかもポイントだ。

 IoT、ビッグデータの活用で、小売業はまだまだ顧客体験を高められ、新しいサービスを生み出す可能性が広がっていると佐藤氏は見ている。

 

筆者:IoT Today