死後離婚する妻

写真拡大

“死後離婚”。このインパクトのある言葉が、最近メディアや巷で話題になっています。配偶者が亡くなった場合、死別になるので義理の両親やきょうだいとの姻族関係はそのまま継続します。この姻族関係を、どうしても切りたい事情がある人は、“姻族関係終了届”を役所に出すことで姻族と縁を切ることができるというのです。

「配偶者の死後に縁を切ることから、“死後離婚”という造語が生まれたといいます。そして近年、“死後離婚”をする妻が増加しています」

そう話すのは、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さん。この手続きをするのはほぼ女性だそう。では、どのような事情が妻たちをそこまで追い込むのでしょうか? 実際に高草木さんのもとに相談に訪れた2人の妻のケースについて話してくださいました。

●夫亡きあと、同居中の義理の両親に“子どもをつれて実家に戻りたい”と言った妻。彼女にふりかかった悲劇とは?

【ケース1/Aさん(37歳)、子ども(5歳)、夫(享年39歳)】

Aさんは、2年前に夫を39歳の若さで亡くし、その後は義理の両親と子どもと4人で暮らすようになったという。

「義理の両親は、5歳の子どものことを可愛がってくれていたので、Aさんも感謝していたそうですが、ずっと一生この家で暮らさなければならないのか…と、将来のことを考えると不安になったそうです。自分の扱いもほぼ家政婦状態だったため、おもいきって“実家に戻って、そちらで暮らしたい”と義理の両親に伝えました」(高草木さん 以下同)

ところが、その言葉を聞いた義理の両親から返ってきた言葉は信じられないものだったという。

「ものすごい剣幕で『息子も奪い、孫まで連れ去るのか!』と言われたそうです。つまり、夫が病気で亡くなったのは、Aさんのせいだと言い放ったのです。立ち直れないほどのショックを受けたAさんは、私のところに相談に訪れて“姻族関係終了届”の存在を知り、今、前向きに“死後離婚”を検討中だそうです」

●夫の生前から嫌味ばかり言ってきた折り合いの悪い義母が、今になって自分を頼ってきて悩んだ妻は…。

【ケース2/Bさん(45歳)、長男(22歳)、長女(20歳)、夫(享年43歳)、義母(73歳)、義理の妹(40歳独身)】

3年前に夫を亡くしたBさんは、夫の生前から近くに住む義母と折り合いが悪かったという。

「義母は、たびたび近所に住むBさんのもとを訪れては、小言や嫌味を言い、干渉や詮索も激しくかなり精神的にも苦痛を感じていたそうです。ところが、夫が亡くなって1年ほど経ったころ、態度が急変して“今後はよろしくね”と、老後頼ることをにおわせるようになったそうなんです」

義母は、8年前に夫(義父)を亡くし、現在は独身の義理の妹と同居していたため、まさか自分に頼るバズはないと思っていたBさん。その考えは甘かったという。

「ある日、義母と義理の妹の話になったとき“娘が結婚したら私は一人になってしまうから”と言った義母。そこで、Bさんをアテにしていることが決定的になったため、慌てたBさんは、何か対策を講じなければと姻族関係終了届をひっそり提出したそうです。これで、事実上の縁は切れたので将来的には少しホッとしたBさん。しかし、義母は縁を切られたことは知らないので、相変わらず連絡してきたり訪ねてきたり、Bさんへの様々なチェックも入り精神的ストレスはそのまま。しかし、今住んでいる家は亡き夫が遺してくれた家なので手放せないと苦悩していたといいます」

結果的に、Bさんは家を貸すことにして義母の近くから引っ越したそうだが、Bさんのように夫の死後、義母や義父が自分を頼ってきて悩んでいるケースも少なくないという。

今後、“死後離婚”したい女性は増え続けるのだろうか?

「今、増加傾向にあるのは、姻族との縁が切れるというこの制度自体が周知されてきたという背景があると思うんです。つまり、同居などにより姻族関係に悩んでいた人たちが逃げ道を見つけたわけです。しかし、すでに核家族化や女性の社会進出などが進みつつある日本の現状を考えると、今後は“女性が家に縛られる”という考えや悩み自体が減っていくことも考えられますので、世の中の流れが大きく影響していくと思われます」

人の死は突然です。だからこそ、遺された者だけが苦悩を抱えこむことのないよう、夫婦間で自分たちの将来の考えやホンネを日ごろから話しておくことは相手への思いやりであり、その後のトラブル回避につながるのかもしれませんね。

(構成・文/横田裕美子)