タイ戦は結果的に4−0で大勝したが、甘さは至るところに見えた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[W杯アジア最終予選] 日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉

 ホッと胸をなで下ろしたのは、19分に決まった日本の2点目、岡崎慎司のゴール直後のことだ。
 
 日本はベンチから選手が飛び出し、ピッチサイドで祝福した。それは素晴らしいことだが、その時間があまりにも長い。日本はピッチ中央に山口蛍、酒井高徳、酒井宏樹の3人が立っていたが、センターサークルの中にいたわけではないので、キックオフに支障はない(ちなみに長谷部誠がよくやる、センターサークルに入ってキックオフを阻止するのも、やり過ぎると遅延行為で警告)。
 
 当然、主審の合図で、試合が再開されてしまった。日本はまだ配置についておらず、反対側の左サイドには誰もいない。あわてて走り出した日本の選手たち。タイにキックオフカウンターを食らい、いきなり自陣に深く押し込まれた状況からスタートすることになった。
 
 ブラジルがこんな様子を見たら、キックオフと同時に全速力で走り出し、攻め切ってシュートまで行っているだろう。むしろ、タイがお人好しで良かった。ブラジルじゃなくても、UAEやサウジアラビアでも、シュートまで行くかもしれない。
 
 前半に2点目が決まった後は、日本がミスを連発し、タイに押し込まれる時間が増えた。集中力のなさ、ゆるみ具合を何人かの選手が反省していたが、それは2点目を決めた瞬間に始まったと言える。もし、メンタル面を反省するなら、この場面の行動からだろう。
 
 内容は今ひとつでも、4-0で勝利。
 
「4-0」と聞くと、どうしても日本とブラジルの試合を思い出す。2012年にポーランドのヴロツワフで戦ったブラジル戦。ザックジャパンは本田圭佑の1トップなどを試しつつ、上手くポゼッションして戦った。ブラジルを押す時間帯もあったが、結果は0-4で完敗。今は広州恒大でプレーするパウリーニョらの決定力にやられた。

 2014年にシンガポールでブラジルと戦ったときも、アギーレジャパンは控え主体にもかかわらず、悪くない試合だった。それなりにチャンスを作ったが、しかし、結果は0-4で完敗。ネイマール無双だった。
 今回のタイは、あの時の我々と似たような感覚になっただろうか。良い試合をしても、シュート力と、それを防ぐDFとGKの力量差で0-4。善戦したタイにとっては、1ゴール・2アシストで暴れ回った、理不尽な久保無双に負けた試合だったかもしれない。結局サッカーというスポーツは、シュートに持ち込んで打つところ、それを止めるところで、結果の大半が決まる。
 
 ドイツサッカーは1対1を重視することで知られるが、彼らの古くからの考え方は、どんなに中盤を支配されても、突破されても、極端に言えば最後の1対1さえ勝てばいい。どんなにやられてもGKが止めれば勝てる、シュートを決めれば勝てる、というシンプルな発想だ。
 
 もちろん、世界が競争的になり、そのアイデアだけでは勝てなくなったので、近年のドイツはいろいろと改革されたわけだが、サッカーの本質的な出発点として、彼らの古い考え方に学ぶところはある。
 
 内容に合致しない「4-0」に、サッカーの原点を感じた。そんなタイ戦だった。
 
 とはいえ、日本がブラジルに善戦しながらも0-4で負けた、ふたつの試合は、あくまでも親善試合だ。2013年のコンフェデレーションズカップでは、結果も内容もコテンパンに叩きのめされた0-3の完敗だった。
 
 そういう意味では、今回のタイ戦は最終予選。しかも日本は得点を取れば取るだけ、今後の順位テーブルが有利になる。それなのにホームでこの内容で、しかも2点目の後のゆるみも明らかだった。たとえで並べてみたものの、日本とブラジルほどの差が、日本とタイの間に存在するとは言えなそうだ。
 
取材・文:清水英斗(サッカーライター)

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