タイは3人のストライカーを並べる攻撃的な布陣を敷いてきた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 [W杯アジア最終予選] 日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉
 
 タイとの試合は、タイの奇襲からスタートしました。

 タイはここまで、オーストラリア戦で突如3バックを導入したことはありましたが、それも彼らのメンバーを見れば理に適った変更で、基本的にはここ数年継続して作ってきたチームを崩さず、最終予選を戦ってきました。
 
  しかし、タイのスタートのメンバーには8番シロー、9番アディサク、10番ティーラシンと3人のストライカーが同時に起用されていました。4バックでの戦いや、全体をこれまでより高い位置に設定するのは可能性として考えられる変更でしたが、この3人のストライカーの同時起用は予想だにしませんでした。
 
  確かに、3バックを採用することになった要因のひとつでもある、4バックを採用時のウイングプレーヤーの人選に悩まされた面もあったとは思います。ただ、全体を高く構えて3人のストライカーを置く、というのは奇襲に近い狙いがあったと思われます。
 
   というのも、前節タイはホームでサウジアラビアに0-3で敗れています。この試合に対する国民の期待も大きかったので、チーム内の落胆も大きかったはずです。あわせて、キャプテンのティーラトンが出場停止で、さらにタイがリスペクトする国・日本との対戦ということで、普通に挑めば勝ち目はないと思ったのではないかと。そこに勝機を見出すための奇襲だったのだと思います。
 
   タイの選手たちのメンタルを前向きにする。日本の選手たちにちょっとした驚きを与える。そこで何かしらの事故を起こせれば、何もしないで挑むよりは勝つ確率を増やせる。そう考えたとすれば、ギャンブルではありますが、勝つためのひとつの方法として論理的だったとも言えます。
 
   実際、その効果はありました。
   最初の5分。タイは高い位置でボールを何度か奪取し、18番のチャナティップが前を向いてプレーする場面を作れました。そのようなシーンは前半半ばまで見られないと予想していたので、奇襲はある程度成功した形になりました。
   しかし、香川選手の先制点は、その矢先でした。
   サッカーでは立ち上がりの重要性をよく説かれます。流れるスポーツですので、入り方を失敗すると流れを取り返すのが難しいからです。
 
   一方でよく起こるのが、「良い入りをした」と思った矢先に失点する、ということです。香川選手の得点は、まさにそうしたタイミングでした。
 
 日本が上手だったと思います。5分間で相手の出方を見極めたうえで、4バックでハイプレッシャーをかけてくるチームの泣き所である、サイドバックの裏を森重選手のパス一本で久保選手が突き、相手選手の背中で動き出した香川選手が彼独特のエリア内の冷静さを見せました。
 
 試合前に整列した時、ハリルホジッチ監督が久保選手にさりげなく、「足下でもらうふりをして裏へ」というようなジェスチャーをしていたように見えましたが、試合前からそうした狙いもスカウティングの中でしていたのかもしれません。
 
 その後も、タイ代表の健闘が光る場面が見られたかと思うと日本が得点する、という現象の中で試合が進んでいきました。
 
 試合運びや流れのコントロールで日本が大きく上回ったということだと思います。
 
 また、ゴール前での「際」の部分でも大きな差がありました。
 
 得点のためには、ゴール前のほんの小さなスペースと、ほんのわずかな時間でゴールまでの道筋を見つけなくてはいけません。逆に守る側は、相手が見つけた道筋を最後まで冷静に1センチでも消しにいく作業が求められます。