By Daniel Parks

近年の進歩が特に著しい人工知能(AI)が人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるのもそう遠くないと考えられている現代において、AIやこちらも開発が進められている量子コンピューターを使うことで、人類はこれまで以上のペースで新しい物質を発見することになるとIBM Researchの副所長が語っています。

AI, Quantum Computing Will Accelerate Materials Discovery - MIT Technology Review

https://www.technologyreview.com/s/603943/ai-quantum-computing-will-accelerate-materials-discovery/

2017年3月27日にサンフランシスコで開幕したMITのイベントEmTech Digital 2017において、IBM ResearchのScience and Solutions部門で副社長を務めるダリオ・ギル氏が登壇してAIや量子コンピューターが実現するであろう将来について語っています。

ギル氏は今後、ノートPCで動作するマシンラーニングのソフトウェアがあらゆる学術研究論文にわずか数秒で目を通し、膨大な分野にまたがる知識を体系づける処理を数週間から数カ月で完了させる時代が来るだろうと語っています。そしてこの知識を活かすアルゴリズムやシミュレーションを用いることで、特許技術や論文に記された情報からインサイト(洞察)を短時間で抽出するという、人間にとっては非常に時間を要する一連の行為をAIや量子コンピューターに肩代わりさせることが可能になると展望を語っています。



By IBM Research

ギル氏はこの将来が訪れるタイミングについて明言は避けたとのことですが、同時にIBMでは同社の人工知能である「Watson(ワトソン)」を使って新素材を発見する取り組みを進めていることを明らかにしました。しかし、現在の世界で最速レベルのスーパーコンピューターを用いてさえも、物質を構成する分子レベルのシミュレーションなどを行って新物質の素性を計算する処理には非常に長い時間がかかっている状況とのこと。ここでIBMが着目しているのが、ほかならぬ量子コンピューターというわけです。従来のコンピューターとは全く異なる仕組みで動作する量子コンピューターは極めて複雑な処理でも一瞬で完了させることができると考えられており、コンピューターにおける次のブレークスルーとも期待されています。



By IBM Research

IBMでは、AIによる機械学習と量子コンピューターを実現することによる高い処理能力を活かし、極めて複雑な量子物理学の世界をシミュレートすることで新物質の発見につなげることができると考えているとのこと。すでにIBMは2017年内にも企業向けの「IBM Q」という量子コンピューターを使ったクラウドサービスを提供すると発表しており、これらの技術が軌道に乗り始めるのもそう遠い将来ではないと考えているようです。ギル氏はこれらの取り組みについて「我々は今年か来年のうちに、量子コンピューターが持つパワーについて飛躍的な変化を目の当たりにすると期待しています」と語っています。

IBMがクラウドを通じて量子コンピューターにアクセスできる商業サービス「IBM Q」を発表 - GIGAZINE