BIZREACHが運営するウェブメディア「BIZREACH FRONTIER」では、FinTech、VR/AR、人工知能など、最先端の分野にチャレンジし、いま、ではなく未来、「次の時代の当たり前」になるサービスや技術を作らんとする日本の企業を紹介しています。

ライフハッカー[日本版]では、毎週その中から1本の記事をセレクト。前人未踏の領域へとチャレンジする日本企業をご紹介していきます。

スマートフォン1つで、あらゆる家電製品を制御する


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現在、IoTは住宅業界でも重要なキーワードになっている。住宅内のあらゆる設備や家電がインターネットとつながることで、どのような暮らしが実現するのか。大手ハウスメーカーや住宅設備会社がさまざまな実証実験を行っており、電機メーカーやIT企業、自動車メーカーなども相次いで参入を果たしている。

しかし現状はまだ各社が可能性を模索している段階であり、IoT住宅のスタンダードがどのようなかたちになるのかは見えていない。そのようななか、スタッフ20名ほどのベンチャー企業が、未来のIoT住宅の羅針盤ともいうべきサービスを展開している。株式会社グラモのiRemocon事業である。

「iRemoconは、スマホでエアコンやテレビなどの家電を制御できる便利なツールです。家庭のあらゆるリモコンを学習機能によって集約し、スマホで操作できるようにします。外出先から照明やエアコンを操作して、家についたときには快適な部屋にしておくこともできます。ハードに温度、湿度、照度のセンサーを搭載しているので、外出先から部屋の状態を知ることもできます。ペットを飼っている方が外出先でエアコンを調整したり、お子さんの帰宅を照明の点灯で知ったり、高齢者住宅では熱中症予防のための空調制御をしたりと、さまざまな用途で使われています」

グラモ代表取締役社長の後藤功氏はこのように語る。

音声認識機能も使えるので、料理中などで手がふさがっていてもテレビやラジオなどの操作ができる。GPS機能を使えば、家から100mに近づいた時点で自動的にエアコンを入れるといったことも可能だ。他にも朝、起きたときにボタン1つで照明、エアコン、ラジオを一斉につけるといったことも可能になる。現時点では、ホームオートメーションを実現するためのもっとも安価で手軽な方法といえるだろう。

「照明をつける、テレビをつける、エアコンをつける...その都度私たちはスイッチを押しています。それが日常になっているからこそ、それほど違和感を覚えないでしょうが、これが省ける体験を一度してしまえば、きっと煩わしいものだと気づきます。そこに私たちは着目しています。」


ネットと家をつなぐゲートウェイに


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iRemoconは2011年に発売され、当初は量販店等で個人向けとして提供していたが、その後、ハウスメーカー向けにカスタマイズしてOEM提供するなど、さまざまな企業と提携しながら普及を進めてきている。2015年にはiRemoconと連携するHEMS(Home Energy Management System/家庭エネルギー管理システム)機器を開発し、事業者向けに販売を開始。ソフトバンクコマース&サービス株式会社と提携し、スマートメーターと連動して電力使用量と料金をリアルタイムで確認できるサービスも展開している。

さらにレオパレス21の新築全戸に標準装備され、NTT東日本の電力見える化サービス「フレッツ・ミルエネ」にも対応。HEMSの標準インターフェースである「ECHONET Lite」にも対応し、住宅の消費エネルギーをゼロにすることを目指して国が推進しているZEH(ゼロエネルギーハウス)においても、重要な役割を果たすツールとして期待されている。もともとは家電を操作するツールとしてスタートしたものの、今では住宅のIoT化を支えるインフラといってもいい存在になっているのだ。

「私がiRemocon事業を始めた理由は、単にリモコンをまとめるだけでなく、このツールが将来的にはインターネットと家を結ぶハブになる可能性があると感じたからです。私はIT業界で長年働いてきて、競争の激しいレッドオーシャンで戦い続けていく厳しさを痛感していました。でもあるとき、家のなかが何十年も前から変わっておらず、そこに大きなビジネスチャンスがあることに気づきました。私たちが目指しているのは、住宅のIoT化の核となるゲートウェイを担うことなんです」

今後もiRemoconは新しい機器や技術との連携を深め、ハードやソフトウエアもさらに進化していく。最近では人型ロボット「Pepper」に話しかけることで家電を制御できるアプリも開発。まだ一般家庭での実用には遠いが、いずれ家庭に家事用ロボットが普及する時代を見据えての布石といえるだろう。一方、住宅や家電製品のIoT化は積極的に進められており、海外に目を向ければAmazon Echoなどの製品も存在している。だが、そうした市場の移り変わりについても、後藤氏は強気な姿勢を崩さない。

「Amazon Echoは基本的に家のなかで、家電を制御するためのインターフェースです。家の外から家電を制御することはできません。むしろPepperのように我々が連携していくべき1つのアイテムだと考えています。いずれにしろ、ああいった新しい製品やサービスの登場で、IoTやホームオートメーションのパイが広がっていくことは、我々にとっても歓迎すべきことです」

今後は音声認識やAIなどの技術もどんどん取り入れていく。グラモは2013年に音声認識やAI分野の高い技術をもつ株式会社アドバンスト・メディアの子会社となったが、今後はそのシナジー効果も期待できる。

「グラモはスマートフォンというツールにこだわってはいません。スマートフォンに依存している限り、おじいちゃんやおばあちゃん、小さな子供は使えませんからね。これから5年も経てばどんな新しい製品や技術が登場するか分かりませんし、スマートフォン自体が時代遅れのツールになっているかもしれません。いずれにしろ今後はITや機械のことがよくわからない人が、何も意識しなくても快適な生活が送れる製品やサービスがますます求められます。私たちが目指す理想のIoT住宅とは、人が何もしなくても、いつのまにか便利で快適で安心な暮らしを実現してくれる、そんな家です」


プロダクトへの強い思いが「絶対に失敗する」という評価を覆した


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iRemoconは、2007年に発表されたiPhoneを見た後藤氏が「これで家電が制御できたら面白いかも」とひらめいたことから生まれた。当時、ソフトウエアの開発会社に勤めていた彼は、休日に自らはんだごてを握って回路をつくり、試作機とアプリを完成させた。その後はコマンド仕様を公表し、ユーザーが独自にソフトウエアを開発し、使い勝手を改良できるようにした。さらにさまざまな企業と提携し、カスタマイズや改良を重ね、機能も追加してきた。

まずは自分ができる小さなところから始め、外部パートナーと連携しながら少しずつ改良を重ねていく。その手法は、まさにIoT時代にふさわしい「開かれたものづくり」、オープンイノベーションというべきものだろう。

「私はもともとハードの知識はまったくなくて、必要なことはその都度、専門書を読んで勉強しました。今のようにハッカソンやIoTに関する勉強会があったわけでもなく、それでもどうしてもつくりたいプロダクトがあったから必死で勉強したわけです。何ごとも必要性がないとなかなか身につきません。そういった意味では、これからの技術者に最も必要なものは単なるスキルよりも、自分はこういうプロダクトをつくりたいという強い思いかもしれません」

実は後藤氏が「iRemocon」をつくり始めたとき、周囲からは「そんなものは売れない」「やめたほうがいい」と言われ続けたという。それでもその将来性を確信していた彼は自己資金をつぎこんでまで1人開発を始めた。

「ハードを開発するのは初めてでしたし、いざ製品をつくるとなるとアダプターや説明書、梱包の箱の用意など細かな作業が山ほどあります。時間もお金も当初想定していた3倍はかかりました。毎月、何百万円ものお金が出ていく恐怖との戦いでしたね」

最終的に、あと1カ月遅れると生活費が底をつくギリギリのところで何とかリリースにこぎつけた。製品を発表するとテレビや新聞、雑誌で好意的に紹介され、量販店の代理店からも取引の依頼が相次いだ。その数カ月後には全国の家電量販店での販売が開始されるが、そのころになってようやく、社員を採用し、オフィスを借りたという。

「私が創業したころに、家電ベンチャーという言葉が出てきて、ビーサイズ株式会社やガラポン株式会社も誕生しています。振り返れば、あのころからそれまで高価だった部品がインターネットで安く買えるようになり、電子回路を簡単につくれるようになったんですね。さらに今では3Dプリンターがあり、プロダクトを支援するサービスまである。私のころよりうんと恵まれた環境です。製品をつくるにはまだそれなりのお金が必要ですが、最近のベンチャーキャピタルは投資意欲も高いので、資金調達も以前よりやりやすい。まだ世の中にない製品を自分で生み出したいと思う人にとって、今はすごく良い時代ではないでしょうか」

IoTの分野でいまだ際立ったコンシューマー向けのビジネスが確立されていない要因としては、大手家電メーカーが自社で完結するネットワークにこだわり、他社製品と連携する製品を積極的につくってこなかったこともあるだろう。

そのようななか、グラモのようなベンチャー企業が、ユーザーの視点に立って、さまざまな企業や製品と連携しながら新しいサービスを生み出してきた。IoT分野に限らず今、後藤氏のような開かれたマインドと新しい発想をもつ技術者や経営者がますます求められている。

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