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映画「3月のライオン」の主題歌、CMタイアップも決定したぼくりり


2015年12月にリリースしたメジャーデビュー盤『hollow world』で音楽シーンにおける話題を一気にさらったぼくのりりっくのぼうよみ(以下ぼくりり)。今年に入って、その勢いをますます加速させています。


1月には2ndアルバム『Noah’s Ark』を発表。前作以上の音楽的な広がりを見せ、またボーカルに関しても格段の進化を遂げたこの作品は、「情報に溢れる世の中、これを聴いていていれば救われる(=「ノアの箱舟」)」という挑戦的なメッセージがこめられたものになっています。


さらに、3月からは大型タイアップを続々と展開。神木隆之介主演の映画『3月のライオン』の主題歌に起用されるとともに、資生堂「アネッサ」のCMソングも担当。「アネッサ」はある意味「ヒット確約枠」とも言うべきタイアップで、この先もさらなる支持拡大が期待できそうです。



ここまでであれば「ネクストブレイクが見込まれる若いアーティストが頑張っている」という普通の話にすぎませんが、それだけで終わらないのがこの人の面白いところ。というわけで、ここでは最近ぼくりりが展開しているユニークなトライについて取り上げてみたいと思います。


 


クラウドファンディングで自分でメディアを開設


『Noah’s Ark』のリリースと合わせてぼくりりが立ち上げたのが、オウンドメディア「NOAH’S ARK」です。開設にあたって必要な資金をクラウドファンディングで募ったことも話題になったこのサイトは「自分が考え方に影響を受けたり、尊敬している方々と対談していく、という趣旨のもの」。その背景には「情報が氾濫する、まさしく『情報の洪水』の時代で、きちんとものを考えることが出来るようになりたい」「情報を自分の知恵とするための武器が欲しい」という想いがあります。


また、公開されている対談のなかではこのメディアを通じて若い人たちがチャレンジできる環境を作りたい、というようなメッセージも語られています(「今回の企画の目的のひとつとして、このメディアを通して、中高生の子たちがやりたいことに挑戦する抵抗感を減らせればいいなと考えているんです」)。


現時点で公開されている対談は4本。アルバム『Noah’s Ark』と同様、ジャンルを越境する顔ぶれが登場しています。ぼくりりの音楽の面白さは彼自身とトラックメーカーの協業による化学反応から新しいものが生み出されるところにありますが、「NOAH’S ARK」において展開されているのもまさにそんな光景です。


例えば「現代の魔法使い」とも称されるメディアアーティストの落合陽一との対談では、ぼくりりがひとつのキーワードとして考えていた「自由意志」という概念に対して「そもそも産業革命以前の人類は自由意志なんて考えていないんですよ」「自由意志を大切にするというのも、一種の刷り込みでしょうね」というまったく異なる角度からの意見が示されます。


また、歌人の穂村 弘は「表現のハードルが下がっているので、みんなに挑戦してほしい」というぼくりりに向けて「いやあ、ぼくりりさんにはわからないよ」「18歳でこんなふうに世に出た人にはわからない心理があると思う」「下手でもいいと言われても、どうしても怖いんです」「表現そのものは才能がなかったとしてもやめることができないから残酷なんだよね」「音楽という強いジャンルであっさり才能を開花させたぼくりりさんのような人は、ぼくからすれば羨ましいを超えて『一回雷が落ちたらいいのに』って(笑)」と、やんわりした口調ながらも「てめーに何がわかる?」という論を展開。


お互いに誉め合って終わり、というような予定調和に陥らないやり取りからは、読者以上にぼくりり自身が刺激を受けているのではないでしょうか。


 


落合陽一、紗倉まな……多様な表現者らとハイブローなトークを展開


また、ぼくりりの「メインの生息地」とでも言うべきSNSへの論考が随所に散りばめられているのもこのサイトの面白いところです。ともすればメタ視点の無限ループに迷い込んでしまいそうな問いに対して積極的に向き合っています。例えばこんな感じです。


紗倉まな(AV女優)「私のキャラだったらこう言わないだろうなとか。(中略)そうやっていると、だんだん窮屈になっていきますよね」


俺(わかりづらい名前ですが、フォロワー数31万人の人気ツイッターアカウントです)「(ツイッターについて)『それは独り言ですから』と否定する人もいると思うんだけど、俺はそうじゃないと思っている。本当に独り言だったら『はあ、疲れた』って言えばいいだけ。わざわざアプリを立ち上げて、文字入力してつぶやいているんだから、見てほしいんだよね」


ぼくりり自身からも「ぼくもTwitterで『おなかへった』とか『ウケる』というツイートを繰り返すことによって、“歌詞では語彙が豊富なのに、Twitterでは語彙力が消滅している”、というギャップを作ってほのぼの感を演出しています。」という身も蓋もない話が飛び出したりもしますが、多くのアーティストが日常的に活用しているSNSというものの本質について平易な言葉で掘り下げようとしています。


前述した落合陽一との対談では「未来の人間性のあり方」とでも言うべき壮大なテーマも登場しますが(「今の人間は脳みその中を探す感覚でGoogle検索をしている」「いずれ人間と機械の区別がつかなくなる」)、個別の政治イシューではなくより抽象的な「社会というもののあり方」に対して言葉を尽くすミュージシャンはここ最近ではなかなかいなかったのではないでしょうか。


 


音楽以外の方法でもオピニオンを発し始めたぼくりり


デモに足を運ぶなど行動的な側面が称揚されがちな風潮のなか、ある意味では「ふわっとしたテーマ」をああでもないこうでもないと考える「NOAH’S ARK」の姿勢は異色です。明確な敵を見出すような活動に比べると成果を感じづらいもののようにも思いますが、こういう話をしていくことにこそ本質的な価値があるという考えがぼくりりの中にはあるのかもしれません。


『hollow world』リリース時のインタビューでは「(わかってほしい、というような気持ちがあるのかという質問に対して)もし僕が本当にわかってほしいと思ったら口で説明しますよ。曲にする必要がない(笑)」なんてコメントをしていたぼくりり。音楽以外の方法でオピニオンを発し始めた彼は、音楽を基点にしながら自身の影響力をより広い範囲に行使するタームに入ろうとしているようにも見えます。


元々ミュージシャンであることそのものにそこまでこだわりを持っていないのが彼の表現者としての特徴ですが、「NOAH’S ARK」はそんなスタンスがいい方向で形になっている取り組みだと感じます。いろいろな人と出会って得た多様なインプットを今度は音楽活動に還元する、というサイクルをぜひ確立させてほしいと思います。



【引用元】

NOAH’S ARK http://noahs-ark.click/

ぼくのりりっくのぼうよみ、自分でメディアを作る予算を集めたい https://camp-fire.jp/projects/view/16906

Power Push ぼくのりりっくのぼうよみ http://natalie.mu/music/pp/bokuriri


 


TEXT BY レジー(音楽ブロガー、ライター)