右足でも左足でも遜色なく正確なシュートを放ち、クロスを供給。右サイドからの多彩なフィニッシュワークは、今や不可欠な武器となった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[W杯アジア最終予選] 日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉
 
 たとえ本田圭佑が万全の状態だったとしても、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は久保裕也を右ウイングのファーストチョイスとするのではないだろうか。
 
 UAE、タイに連勝した今回の3月シリーズで、計5ゴールに絡んだ働きぶりはもちろん、右サイドから繰り出したそのフィニッシュワークは実に多彩だった。
 
 1得点・1アシストを記録したアウェーでのUAE戦。まずは裏への抜け出しで酒井宏樹からのスルーパスを引き出し、そのままダイレクトでニアをぶち抜く。
 
 後半に追加点を挙げた今野泰幸へのアシストでは、右サイドでキープすると、左に持ち直して、逆サイドに正確無比なクロスを供給した。
 
 1得点・2アシストを記録したホームでのタイ戦。右サイドから、今度は縦に仕掛けてマイナス気味にグラウンダーのパスを通し、香川真司の先制点をお膳立て。さらに、ワイドに張り出して足もとに収めると、DFに詰め寄られる前に素早くクロスを入れ、岡崎慎司のゴールを演出した。
 
 そして自身の得点場面では、バイタルエリアでスローインを受けると、右足で持ち出してカットインし、コンパクトな振りで左足の強烈ミドルを叩きこんだ。
 
 5つのゴールシーンはすべて異なる形だった。サイドから多様なクロスパターンを備え、裏への抜け出しやカットインでゴールを狙う。
 
「両方使えたほうが、バリエーションが増えると思う。(相手が)どう来ても、どうにでも対応できるようになりたいですね」
 
 言葉にするのは簡単だが、実際にそれをピッチ上で苦もなく表現する。とりわけ、左右両足で質の高いクロスやシュートを放てるのは、レフティの本田と比べても大きなアドバンテージになる。
 
 サッカーダイジェスト誌のインタビューで、今回の3月シリーズに関して、「具体的に、この2試合ではどういうプレーをしたいですか?」という質問に久保はこう答えている。
 
「ゴールに直結するプレー。積極的に仕掛けて、とにかく得点に絡みたい。もちろん、自分がゴールを奪うことも含めてです」
 
 まさに有言実行。日本代表の大黒柱である本田がミランで出場機会を失い、招集の是非が問われるような事態に、指揮官の口癖になぞらえれば、勝利への“ソリューション”は、久保という23歳の成長著しいアタッカーの存在そのものだった。

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 また久保は同誌のインタビューで、オマーン、サウジアラビアと戦った昨年の11月シリーズを振り返り、「少し浮いているのかな、という感じはありました」と語っている。
 
 4-0の完勝を収めたタイ戦を終えると、その心境に変化が生まれていた。
 
「前回よりは、徐々に馴染めてきているかな、と。ただ、プレー面も含めて、もっともっとフィットできると思います」
 
 誰もが認めるハイパフォーマンスを見せても、本人は少しも満足していない。むしろ、その存在感を高めるほど、さらに活躍するための材料を見出そうとする。
 
「崩しの部分も、回しの部分も、もっと良くなる。改善点はいろいろあります」
 
「足もとでもらうのもそうだし、裏への抜け出しも、タイミングが合ってくれば、もっとチャンスは作れるはず」
 
 UAE、タイとの2連戦を通じて、本人は「目に見える結果が出たので、すごく良かった」と安堵するが、「これからかな、という感じです」とさらなる高みを目指す。
 
 代表の右サイドでのプレーイメージも、それなりに固まってきていると言う。ただ、記者とのやり取りで久保が最も多く口にしたフレーズは「まだまだ」だった。
 
「もっとピッチで存在感を出せるようになりたいし、中心的な選手になりたい。そういう意味では、まだまだ」
 
 ハリルホジッチ監督からは「質と決定力の高さを見せてくれた」と評価される一方で、「終盤に消える時間がある。フィジカルコンディションを上げるように要求している」と注文をつけられた。
 
 所属するヘントでは、今後は4月から5月にかけて、来季のチャンピオンズ・リーグやヨーロッパリーグへの出場権、そしてリーグ優勝を賭けてプレーオフが待っている。
 
 スリリングな戦いにその身を投じ、間違いなく逞しさを増すであろう久保は、次の代表活動となる6月シリーズ(シリアとの親善試合、イラクとの最終予選)でも、際立つプレーを見せてくれるに違いない。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)