広辞苑に「つきじです」という言葉が載っている。以下の5つの選択肢のうち、1つが広辞苑の語釈(言葉の意味の解説)で、残り4つはそれっぽく作られた偽物だ。さあ本物はどれ……?

1:結晶体の一つ
2:マレー語で鳥の卵
3:グリム童話『魔女の森』に登場する怪物
4:アテナイの歴史家
5:古代アッカール王朝のアッカール王の長兄

築地でも豊洲でもない、さっぱり見当がつかない意味ばかり。こうして広辞苑の語釈で騙しあうゲーム「たほいや」のイベントが、3月27日に東京カルチャーカルチャーで行われた。その名も『たほいや甲子゛園(たほいやこうじえん)2』である。


レジェンド達が渋谷に集結


『たほいや』は、元々1993年にフジテレビで放送されていた深夜番組。その知的ゲームの面白さには熱心なファンも多く、番組終了後も復活を望む声が高い。『たほいや甲子゛園』主宰の眞形隆之氏も、そんな熱心なファンの一人。クラウドファンディングで資金を集め、当時番組に出演していた「レジェンド」達を呼び、「たほいや」の復活にこぎつけたのだ。


第1問の親(出題者)は松尾貴史さん。「昼に大阪でお酒を飲むロケをしてきたのでフワフワしている」とハードルを下げながら出題した言葉は「におべ」。出揃った回答がこちら。


1:ギリシャ神話でタイタロスの娘
2:お漏らしをした子供
3:臭い場所
4:刑場の手伝いをする下人を言う
5:四国松山で桃の節句に七歳児が着る着物

親以外はその場で初めて「におべ」という言葉を聞いて、ものの2,3分で偽の意味を書いていることに驚く。しかも、どれもいかにもそれっぽいのだ。「におべ」の「にお」の部分を「臭い」ととるか、「べ」を「おべべ(着物)」ととるか、はたまた「ニオベ」という外来語なのか迷うところ。

「5を書いたのが森さんじゃないの?(大高)」と他のプレイヤーの傾向も踏まえつつ、3,4,5に予想が集中。果たして正解は……


なんと誰も選ばなかった「1:ギリシャ神話でタイタロスの娘」が広辞苑!


誰も正解を選ばなかったので、賭けられたチップは親の総取り。「嘘をついても偽証罪には問われません」と時事ネタでご機嫌な松尾さん。レジェンドの横綱相撲から幕を開けた。

ヨン様が出題する「つきじです」の意味とは


冒頭の「つきじです」を出題したのは、ぺよん潤さん。コンビ時代(ハロ)は『エンタの神様』にも出ていたヨン様のモノマネ芸人である。登場時は自前の雪スプレーを宙に振りかけてスマイルしていました。


「学生時代に見ていた『たほいや』の方々と一緒にできるなんて」と興奮するぺよんさん、この日のために出題候補を27個もストックしてきたそう。満を持して出題した「つきじです」はレジェンドたちも悩ませる結果に。「です」が単語の末尾につくのはおそらく日本語ではない。それなら「ツキジデス」という外来語だろう、という推測で偽の語釈も出揃ったのだが……。


森「言葉でびっくりするけど中身はたいしたことない、山田五郎パターンじゃないかな(1を選択)」

松尾「1は結晶体なら炭素となんとかが結合したとか特性を書きそう。2のマレー語で鳥の卵って載せる必要あるかな? 3は「登場」がなんか辞書っぽくないでしょ。4は「アテナイ」なんて紙もない時代に歴史家がいるか? で、5はまどろっこしい感じとか「長兄」ってワードが広辞苑っぽいかなー」

大高「松尾さん、自分が書いた答えまで批評してるのスゴいね」

蓋を開けてみれば4人中3人が「5:古代アッカール王朝のアッカール王の長兄」を広辞苑と予想。正解は……


またしても誰も予想していない「4:アテナイの歴史家」が広辞苑! アッカール王の長兄は森さんの回答だった。親の総取りが続くダイナミックなゲームに会場も沸く。

「まんまんで」の「で」ってなんだ


前半の第1ラウンド(全5問)は「におべ」「あなにく」「つきじです」「ころんぶ」「そでのうめ」と5人が親を持ち回り、最終的に松尾さんが優勝。休憩を挟んだ第2ラウンド(全3問)は「めさび」「はくちょうはんこく」と出題が続き、いよいよ最終問題。

出題者は主宰の眞形さん。「最後だからキレイな言葉で終わるんだろうなぁ」とレジェンドたちからプレッシャーをかけられる眞形さん、出題は「まんまんで」。前回「まんすじ」を出題し会場をざわめかせた記憶がよみがえる(※参考:伝説の深夜番組『たほいや』が復活した夜 - デイリーポータルZ)、

大高「『〜な月曜日』とかだったらいいよね。なんとかマンデーで」
ぺよん「あ!今日月曜日ですよ!マンデーだったらすごいきれいですね」

やる気満々などの「まんまん」ならわかるが、最後の「で」が余計な「まんまんで」。マンデーで処理したくなる気持ちもわかる。出揃った語釈がこちら。


1:しかたなく
2:千両箱
3:のろいさま ゆっくり
4:喜びに満ちあふれたさま
5:状態が十分に整っている様子

きれいなエンディングを期待されての出題である。2や4だったら美しい。5を選んだ森さんは「眞形さんはとてもハートが熱い人。仕方ないとか、のろいとか、そんな言葉は選ばないよね」と会場の拍手を誘う。さて正解は?


美しさより「まん」を優先した結果、大方の予想を裏切り「3:のろいさま ゆっくり」が正解に。それにしても、あの余計な「で」はなんだったのか。広辞苑で確認してみると……。


なんと「まんまんで」の正体は中国語!どうりで日本語で考えてもわからないわけだ……。

最後の敵は広辞苑にあり


レジェンドたちの言葉のチョイスは、予想外のところから矢を放ちながら、いかようにも解釈できる絶妙なもの。回答を並べるときの配置の妙や、場つなぎのトークによる翻弄など、ベテランならではの駆け引きをたっぷり楽しんだ2時間だった。

しかし、経験を重ねれば勝てるわけでもないのが「たほいや」の面白いところ。時には広辞苑に足下をすくわれることもある。例えば森雪之丞さんが出題した「そでのうめ」。

1:あざ、青たん
2:江戸時代 吉原名物の酔い覚ましの薬
3:財布の隠語
4:紅一点
5:浄瑠璃の演目のひとつ

「吉原『名物』って辞書が言うかなー。『酔い覚ましの薬。江戸時代 吉原にて〜』ってしない?」と松尾さんが消去した、まさに2番が広辞苑の語釈だった。いわゆる「辞書っぽさ」からたまにはみ出してしまう広辞苑。手なずけるのはなかなか難しい。

『たほいや甲子゛園』は現在ニコニコ生放送でタイムシフト視聴が可能。次回開催は未定ながら、年間チャンピオンを決める構想もある。最終的にはテレビで復活する姿を見てみたいなぁ。

(井上マサキ)