おわり(泣)「けものフレンズ」福原P絶賛「たつき君、本当にすごいな!」

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大好評の中、最終回を迎えたばかりのアニメ「けものフレンズ」
制作スタジオ「ヤオヨロズ」の取締役で、アニメーションプロデューサーも務める福原慶匡インタビューの後編では、人気の秘密も探っていく。
(前編はこちら


疲れている大人も癒される作品を目指した


──「けものフレンズ」を作る上で、「こういう作品にしたい」といった全体的な方針のようなものはありましたか?
福原 夕方とかに放送したら、大人も子供も観てもらえるような作品にしたいと思っていました。そういうアニメって、今はあまり無いですよね。そう考えた時に思い浮かんだのは「アイカツ!」なんです。僕が「アイカツ!」を好きな理由って、観ているとすごく癒されるというか。娘を見ているような感じになるんですよね。(主人公の)いちごちゃんに対するやましい気持ちとかは全然無くて(笑)。遠くからほんわかとした気持ちで見守る感じ。
──いちごちゃんたちが頑張っている姿を見られるだけで、幸せになりますよね!
福原 そうそう! 観ていて、どんどん自分の心が洗われていく感じがすごく良いんです。「けものフレンズ」も、頑張って働いて疲れている大人も癒される作品にしたいというテーマは、かなり初期からあって。そこはクリアできていると思います。しかも、たつき君が深みや苦味も加えてくれて。本当にすごく良い作品になっていると感じています。
──作品の深みを楽しむという点では、「考察班」と呼ばれるファンの存在も大きいですよね。フレンズの細かな仕草と動物の生態の類似点や、隠された伏線を見つけてはSNSなどに投稿することで、作品の人気や注目度がさらに高まりました。
福原 「けものフレンズ」を観てくれているお客さんは、本当に頭が良いですよね。僕ら製作委員会の人間よりも、よっぽどしっかりした目で観てくれていると思います(笑)。それに、たつきくんも非常にファンを信頼した作り方をしているんですよね。例えば、伏線的なものを仕込む時も、誰もが気づくくらい簡単では面白く無いけれど、難しすぎると誰にも気づかれないわけで。たいていの人は、気づかれないのが怖いから、つい分かりやすくしてしまうんです。でも、たつき君は、一流料亭の料理人が、舌の肥えたお客さんなら塩や出汁だけでも美味しさを分かってくれると信じているみたいに、「ちゃんと分かるお客さんがいるから大丈夫」と信じていられるんです。むしろ、僕ら委員会の人間が「こんな薄味で大丈夫!? もっといろいろ入れたほうが良いんじゃない!?」って不安になってる(笑)。「観たらIQが下がるアニメ」とか言われていますけど、実際にはお客さんのIQが非常に高いことを前提に作っている作品だと思います。


主題歌には、ゴン太くんの声の楽器も


──コアな考察とはまた別に、「すごーい!」「たーのしーい!」といったゆるくて可愛いセリフも人気を集めています。アフレコの時点から「このセリフ面白い!」などと思っていたのですか?
福原 収録中に「これは流行るぜ!」とかは全然思っていなかったです(笑)。口癖として流行らせようと仕掛けたわけでもありません。たぶん、サーバルが「すごーい」と言う時って、本当に「すごーい」と思ってるじゃないですか? だからこそ嫌味じゃないし、大人が仕組んだ匂いもしないのだと思います。
──オープニングの「ようこそジャパリパークへ」も大人気です。主題歌については、福原さんやたつき監督からもオーダーなどは出したのでしょうか?
福原 音楽については、音楽プロデューサーの内田(峻)さんが主にやってくれています。たつき君は、「いつまでも続く日常感とか、大人も癒されるようなものという作品のコンセプト的な部分を大事にしてください」とは言っていましたが、音楽プロデューサーを信頼して任せているところが大きかったと思います。僕としては、「野生の王国」のテーマのように、深夜に聴いたら異物感を感じるような曲にして欲しいというのがあって。「野生の王国」のテーマって、改めて聴くと何か怖い感じもするんですよ。そういうニュアンスを入れたかったので、皆で話し合った結果クイーカというアフリカの楽器、ゴン太くんの声にも使われている楽器を追加してもらいました。あとは、音楽もアフリカンテイストにしてもらいながら、女の子たちの掛け合いがあるようなスピーディーな曲でというところも伝えました。でも、そこから先は、大石(昌良)さんが素晴らしいものにしてくれたんです。
──EDの「ぼくのフレンド」は、アフリカンなOPとは異なるテイストですね。
福原 あんまりポップでアゲアゲな曲だとEDとして合わないと思ったので、ミドルから、バラードくらいの曲が良いですねというオーダーは伝えていて。音楽プロデューサーから提案されたのが、みゆはんさんの「ぼくのフレンド」でした。最初に聴いていきなり良かったので、「もうそれで」という感じだったんです。クリエイティブのチームは本当に気が合っていて。揉め事という揉め事が無いんです。「違うよ! サーバルはこんな時にそんなこと言わないだろ!」とかも全然無い(笑)。「うんうん、たしかにサーバルはこういう時にこう言うね!」という感じが本当に多くて(笑)。議論がなくて不安になりますね。もちろん、ちょっとしたリテイクとかはあるんですけど。そのリテイクも、みんなが「たしかに、そうですね」って納得している感じです。


芝居が良ければ、絵の方を芝居に合わせる


──スムーズに制作を進められた上にファンからの評価も高いと、ますます現場の雰囲気が良くなりそうですね。
福原 アフレコもそうでしたね。回を重ねるごとに、どんどんノってくる感じでした。今回のキャストさんは新人も多いし、最初はスタジオでの動き方も少し不安なくらいからスタートしていて。前半は、キャリアのある(かばん役の)内田彩さんにすごく引っ張ってもらいました。その後、毎回来るゲスト声優には意図的に実力のある方を選んでいて。新人の人たちも感化されていったと思います。あと、うちがずっとプレスコ(先にセリフを収録して、それに合わせて絵を付ける制作方式)の作品をやってきた強みなんですけど。アフレコの時、絵とセリフのタイミングがずれても、芝居が良ければそれを採用して、絵を変えることがあるんです。そうすることにはまったく躊躇がなくて。たつき君も要所要所でキャストさんたちに「ここは、むしろ絵を見ないでやってください」と言っていました。お話の中で重要なポイントのところはそうやって録っているし、そこがネットで流行ってる言葉になっていることも多いですね。
──完成した作品を観て、特に「いいな」と思ったセリフやシーンなどはありますか?
福原 前半のキャラクターは、お話的にもかなり方向付けをしてくれたと思います。例えば、アルパカ・スリ役の藤井ゆきよさんは、自分の考えをしっかりと持ってる方で。僕らの方からは特に「訛ってください」とは言ってなかったんです。でも、藤井さんの芝居を聴くと、「訛っててもおかしくないな」って思ったりして。そういう感じで、ちゃんとキャラクターを守りながらも、より生き生きとさせてくれました。


「たつき君、本当にすごいな!」と思った


──序盤からストーリーの縦軸がしっかりとある作品でしたが、大型セルリアンと戦う中、かばんの正体も判明する終盤の展開はさらに盛り上がりました。
福原 基本的なところはシリーズ構成のままですね。演出や音響に関しては少し足したりしているものもありますが、たつき君が何かのインタビューでも話しているとおり、基本のお話は予定通りに進めました。
──演出や音響で加えた部分というのは?
福原 第9話でキタキツネがやってるゲームのBGMをアプリ版の「けものフレンズ」の音楽にしたりとか。本当に細かな部分です。
──終盤には、アプリ版でサーバルを演じていた野中藍さんも出演しました。アプリ版から楽しんできた人が喜ぶような要素を盛り込むことも意識していたのでは?
福原 入れられたら良いなと思ってはいたのですが、尺的に入るかは最後まで分からなくて。もしかしたら、削らないとダメかもと思っていたのですが、うまく入って良かったです。
──アプリ版との繋がりで言えば、かばんちゃんの声優が内田彩さんであることにも、設定的な深い意味があったのだと驚きました。
福原 内田さんにお願いしたいと言ったのは、たしか吉崎(観音)先生だったはず。それによって、お話の重厚感とかもどんどん増えていったので、良いヒントをいただいたと思います。
──個人的に、かばんちゃんとサーバルの「食べないでください」「食べないよ!」のやり取りが可愛くて好きだったのですが。最後に、そのやりとりで泣かされるとは思いませんでした。
福原 最後は、そのやりとりや木登り、紙飛行機、第1話でセルリアンに食べられたアードウルフとかのネタも絡んでくるんですよね。シリーズ構成には、そこまで細かいことまでは書かれていないので、それらが繋がっていったときには、「たつき君、本当にすごいな!」と思いました(笑)。

終わらないジャパリパークを頭の中で作り続けて


──福原さん自身、「けものフレンズ」の制作を通して、新たな発見や感触などはありましたか?
福原 オリジナルでヒット作を作るために必要なことがけっこう整理できた感じがしていて。今、4月から始まる「ラブ米」という作品も作っていて。それは、たつきくんは関わらない作品なんですけど。「けものフレンズ」で学んだことをすごく込めることができている気がします。
──オリジナルでヒット作を作るために必要なこととは、具体的にどんなことなのでしょうか?
福原 情報のボリュームを最初から大きく持っておかないと、創作ってできないんだなと、すごく思いました。制作期間が少なかったりすると、表面上でストーリーは作れて、そこに伏線的なことも乗せられたとしても、伏線のために伏線を作るような感じで、薄っぺらくなっていくんですよね。そうならないためには、何層にも渡って、おそらく使わず無駄になることもたくさん考えなきゃいけない。そこの手間を惜しまないことで良い作品になるんだなと思いました。
──「けものフレンズ」では、キャラクターやコンセプトを生みだした吉崎観音さんのこだわりもある上に、たつき監督のこだわりもプラスされて、情報量が非常に濃い物になったということですね。
福原 それもあるし、動物がテーマというのも大きかったんです。例えば、ライオンを擬人化しろと言われて、弱々しいキャラを描く人はいないですよね。「ライオン=強い」みたいに、パブリックイメージとしてある動物の情報が前提にあることで情報量が濃くなるわけです。もし、まったく親しみの無いものをキャラクターにしたら、そのお話の中でキャラクターを魅力的にするしかないじゃないですか。そうなると、いろいろな設定を作るしか無いわけで……。だから、結局はノウハウ的なことを理解できたとしても、それが実際にできるかと言うと別の話というか。単に「めっちゃ頑張る!」しか方法はないんですよね……。「プロ野球選手のなり方を教えてやるよ。1日20時間練習するんだ!」と言われているようなものだなって思いました(笑)。
──普通の人は、それができないんだよ、ってことですね。
福原 実際、たつき君と出会ってからの5年間一緒にいて、とにかくずっとアニメのことばかり考えている姿を見てきたので。「神様が見ていたら、こうやって評価される日が来るよな」って思うし、そんな暮らしをしている人なら、こんな風に評価されても誰も怒らないだろうと思います(笑)。
──アニメは大団円を迎えましたが、ファンの皆さんにとって「けものフレンズ」がどんな作品になれば良いなと思いますか?
福原 作品自体は、いったん第12話で終わるんですけど、きっと皆さんの頭の中で続きは考えられると思うんです。まだ登場していないフレンズたちをどんどん登場させて、皆さんの頭の中で続編を作っていただければ嬉しいです。ホームページには図鑑があるし、ガイドブックにはいろいろな設定もあるので、材料はたくさんあるはず。どんどん想像を膨らませていただいて。終わらないジャパリパークを皆さんの頭の中で作り続けてもらえればと思っています。
(丸本大輔)

(C)けものフレンズプロジェクトA