「なんで俺はこんなに下手なんだとか思いながらやってきたんですけど、周りに自分の動きを見てもらって、それを生かしてもらってゴールを取れてきたっていうのを毎回思い返している。今日もいいパスが入って、あのクロスで自分が生かされたと思っている。そのためには自分は何でもしなきゃいけない。だから、50点だからといって(特別な想いは)ないですね」

 岡崎にとって50ゴールは、通過点に過ぎない。むしろ「それよりも」と言って喜びを隠さなかったのが、90分フル出場できたことだった。

「代表でのフル出場なんてここ最近なかった気がする。何年ぶりとかなんじゃないかな。そういうのも個人的には良かったなって」

 フル出場するのは、15年9月のアフガニスタン代表戦以来のこと。「チームを助けられる選手になりたい」と公言する岡崎にとって、チームを楽にさせる追加点を奪ったことだけでなく、指揮官から最後までピッチに必要な選手と思われたことが嬉しかったのだ。

「自分の役割としてはサコがやっているプレーを参考にしたいと思ったし、今日も参考にしたプレーがけっこうできたんじゃないかなと思います。逃げずに戦うことで、逆にチームを助けられる。それが今日、分かった。まだまだですけど、この1トップというポジションを改めて、もっとやりたいなっていうか、ここで耐えて、代表で出て、ゴールを取りにいきたいなって。レスターとはまったく違う役割で、帰ればレスターのスタイルだし、代表に来たらゴールを求められるし……でも、ありがたいですよね、そんなに役割がいっぱいあるのは」

 レスターと日本代表で岡崎に課せられる多くの異なる役割は、成長のチャンスにほかならない。

 大迫にポジションを譲った昨年11月のサウジアラビア戦のあと、「久しぶりにこういう立場になって、燃え上がるものがある」と自身を奮い立たせた岡崎は、こんなことを言っていた。

「今はレスターでも、代表でももがいている。きっかけを掴めるのがいつになるか分からないですけど、そのきっかけを掴むのが自分は得意なので頑張ります」

 実際、清水エスパルスでも、シュトゥットガルトでも、マインツでも、レスターでも、順調に試合に出られてきたわけではない。いつだって打ちのめされ、どうしたら試合に出られるか、どうしたら成長できるかを考え、試行錯誤しながら這い上がってきた。成長するためには、逆境を味わうことが必要だということを、岡崎は知っている。

 8カ月の沈黙の末に得意のヘディングで決めた節目の50ゴール――。日本代表における逆境から抜け出すきっかけとして、これ以上ふさわしいものはない。

文=飯尾篤史