今季は所属のハンブルクでボランチとしてプレーする機会が増えた酒井高。日本代表では初挑戦となったが、まずまずのパフォーマンスを見せた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト編集部)

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[W杯アジア最終予選] 日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉  28日のタイ戦、酒井高徳はボランチに挑戦した。所属のハンブルクで任された経験はあるが、日本代表としては初めて。本職ではないだけに、試合立ち上がりはパスミスが目立った。 前半のパス本数は35本で、成功数は22本(成功率63パーセント)。そのなかで相手にカットされた回数が多かったのは、やはり立ち上がりの10数分だった。 しかし、時間が経つごとに、パフォーマンスは上がった。18分には鋭いサイドチェンジで右ウイングの久保にボールを送り、相棒の山口が左足で強烈なシュートを放つチャンスへとつなげた。また、24分には岡崎との絡みで攻め上がり、好機を演出。オーバーラップで攻撃に厚みを加える場面も増えていった。 だが、本人は「ボランチとして(ボールを)落ち着けたいという意識はあった。(香川)真司くんともボールサイドでリズムを作ろうという話をしていたが、その段階でミスが起きてしまった」と、反省を口にする。  チームも前半で2点のリードを得たが、手放しで喜べる出来ではなかった。  もっとも、酒井は後半、さらに新ポジションへの慣れを見せた。16本中12本を成功(成功率75パーセント)と、前半よりもパスの精度を上げたのだ。  72分にはルーズボールを相手と競り合いながらキープし、華麗なターンから本田圭佑へのスルーパスを狙ったプレーには、スタンドから拍手が起こった。酒井高自身は反省の言葉を並べたが、90分を通じて決して悪いパフォーマンスではなかった。  また、酒井高は前半、後半ともに出場選手全員とパス交換をしている。これは、ボランチとしての仕事をこなそうと、ピッチを広範囲に動き回っていた証だ。  ちなみにパスを出した相手、パスを受けた相手として、最も多かったのはともにCBの森重真人だった。
 ただ、バイタルエリアでの守備では不安も垣間見えた。  例えば77分のシーン。日本ゴール前近くでさびを受けようとした相手選手に引っ張り出された酒井高は、その後のプレーでボールウォッチャーとなり、CBの前のスペースをぽっかりと空けた。そして、ぞのスペースをタイの選手に使われ、あわやの場面を作られてしまったのだ。 こうしたミスを振り返った酒井高は、所属するハンブルクと日本代表でのやり方の違いに戸惑いがあったと明かす。 「クラブでやっているときはコンパクトで、ひとり目、ふたり目が行った後の3人目、4人目が連動できている部分があった。でも今日やってみて(日本代表では)周りにスペースがあったし、ボールホルダーに遅れていっているシーンがあった。もうちょっと取り切りたいプレーが多かった」  一方で、「代表でも機会と時間があれば良くなる自信はある」とも力強く語る。本職のSBで勝負したいとの想いは強いようだが、ボランチとしてのプレーも決して悪くはなかった。チームとして貴重なオプションが加わったのは、今後に向けて喜ばしいことだ。 

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取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)