岡崎をフル出場させたヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:田中伸弥】

写真拡大 (全2枚)

やっと到達した通算50得点…岡崎が辿り着いた偉大な記録

 日本代表は28日、ロシアワールドカップのアジア最終予選でタイ代表と対戦し、4-0の勝利を収めた。岡崎慎司は昨年6月以来の先発出場を果たす。ここまで代表通算49得点を記録していた岡崎だが、なかなか日本代表史上3人目となる大台に乗せることができずにいた。しかし、タイ戦では久保裕也のクロスにらしさ溢れるヘディングでのゴールを叩き込んだ。今年で31歳になるベテランストライカーは、仲間の活躍に刺激を受けて代表通算50得点に到達したのであった。(取材・文:元川悦子)

------------

 岡田武史監督が率いた2009年から日本代表最大の得点源としてコンスタントにゴールを重ね、足掛け8年間で通算49得点を挙げていた岡崎慎司(レスター)。

 ところが、2016年6月のブルガリア戦(豊田)の後、予想外の足踏みを余儀なくされた。2016年での代表年間得点はわずか「2」。大迫勇也(ケルン)や浅野拓磨(シュトゥットガルト)ら若い世代のFW陣の台頭もあって、先発出場も全10試合のうち5試合とプレー時間も減少の一途を辿っていただけに、「50の大台に乗せるのは難しいのではないか」という見方も強まりつつあった。

「自分はフラストレーションは溜まらない方。難しい状況に直面すると、むしろ燃えるという感じ。『そんな時期もあるだろう』と考えていたし、『また入る時期が来るだろう』とも思っていた」と本人は楽観的に構えていたことを強調する。だが、守備やハードワークなど得点以外の役割を多く求められるレスターでの現状も重なり、どこかで焦燥感を覚えていたはずだ。

 気を取り直して迎えた2017年の代表初戦・UAE戦(アルアイン)でも、岡崎はゴールに縁遠かった。大迫の負傷退場でピッチに立った後半アディショナルタイム、原口元気(ヘルタ)からもらった絶妙のスルーパスを外してしまったのだ。

「この代表では『ストライカーとしての自分』を取り戻したい。だけど今、チーム(レスター)でも決定的なポジションになかなかいられなくて、今日も外した場面もそうですけど、ああいうところで自信を持って打ち切れなくなってきている」と彼自身もゴール前の感覚がやや鈍っていることを認めていた。その苦境からどう這い上がるのか。それは非常に難しいテーマだと目された。

 それでもヴァイッド・ハリルホジッチ監督は岡崎を信頼し続け、再びチャンスを与える。28日の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選第6戦・タイ戦(埼玉)では1トップに先発起用。今度こそ高い壁を超えてほしいと期待を寄せたのだ。

50点目は“らしさ”溢れるゴール。「ああいうヘディングも最近なかった」

 開始8分の香川真司(ドルトムント)の先制弾を久保裕也(ヘント)と2人で演出したことで勢いに乗ったのか、岡崎は持ち前のアグレッシブさと泥臭さを色濃く押し出し始めた。大迫がUAE戦で見せた体全体で相手を抑え込むポストプレーも参考にしつつ、自らもDFを背負って時間を作り攻めのリズムを作ろうと試みる。こうした積極的なトライもチームに弾みをつけた。

 迎えた19分、苦悩の日々を強いられた背番号9に待望の瞬間が訪れる。右サイドの久保のピンポイントクロスに反応。ニアサイドで頭を合わせてついにゴールをこじ開けたのだ。記念すべき代表通算50点目を一番得意なヘディングで奪ったところが、いかにも彼らしいらしい。本人の「原点回帰」が実った瞬間だった。

「どうしても(得点)感覚が全然なかったんで、最近(フィリッポ・)インザーギのゴール集とかを見返してイメージを持つようにしたんです。ホントに実際ボールが当たる瞬間まであのゴールをイメージできたんで、自分にとってはよかったし、チームにとっても大きかったなと思います。ああいうヘディングも最近なかった。自分のFWとしての感覚をもう1回蘇らせるって意味でもよかったと思いますけどね」と岡崎は地道な努力の成果だったことを明かした。

 節目の1点のインパクトは大きく、ボスニア人指揮官は最後まで彼をピッチから下げようとはしなかった。岡崎が90分フル出場を果たしたのは、2015年9月の2次予選・アフガニスタン戦(テヘラン)以来、実に1年半ぶりであった。

「ゴールが49で止まっていただけじゃなくて、フル出場も何年ぶりじゃないかと。代表のフル出場なんかホント最近はなかった気がする。先発がなかなかないのもそうだけど、途中から出ても決められなかった。今回は久しぶりにフル出場できて、FWとして悪くない役割ができたんじゃないかなと」

仲間の刺激を受けて達成した偉業。31歳のベテランは新たなスタートラインへ

 ここ数試合の1トップは、大迫が不動になりつつある。しかし、岡崎は4歳年下の大迫のプレーを参考に、ライバルの成長がいい刺激になったことを明かしている。

「自分は同じポジションのサコ(大迫)がやってるプレーを見て、自分も逃げずに戦えばチームを助けられるってことを再認識した。それを参考にしながらやって『1トップ、もっとやりてぇ」って思いましたね。ここで耐えて、代表で出て、ゴールを取りに行きたいっていう。レスターとは全く違って、ゴールを求められるのはホントに有難いことですよね」

 ハリルホジッチ監督体制になってからというもの、日本代表の1トップは大迫、武藤嘉紀(マインツ)、金崎夢生(鹿島)、本田圭佑(ミラン)、浅野と数多くのアタッカーが担ってきた。この2連戦で2ゴール3アシストと爆発した久保も最前線を担えるし、小林悠(川崎)ら国内組にも優れた選手はいる。

 この4月に31歳になるベテランが大激戦のポジションで生き残っていこうと思うなら、今回のように仲間のいい部分をどんどん吸収して進化を遂げ、ゴールという結果を出し続けていくしかない。

「50得点」という偉大な記録も、岡崎にとっては「スタートライン」に他ならない。

「もう1回リセットして、フレッシュな気持ちでまたイチから積み上げていきたい。自分は周りに生かされてここまで来たとつくづく思いますし、今日もあのクロスで生かされた。生かしてくれる人のために、自分は何でもしなきゃいけない」と誰よりも献身的な男はしみじみと言う。

 そのスタンスを変えることなく、背番号9は日本代表の進化のために、2018年ロシアワールドカップでのリベンジのために、高みを目指して走り続けていく。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子