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●てんかんとはどのような病気か
社会的に広く病名を認知されていながらも、その症状の実態まではあまり知られてない疾病は数多くある。脳の病気の一種・てんかんもその一つではないだろうか。てんかんが原因とみられる交通事故が折に触れて報道されることもあり、この名前を一度は耳にしたことがある人も多いはずだ。

先天性のてんかんも多いが、脳のほかの病気がトリガーとなり、後天的にてんかんを発病するケースもある。そのため、今現在発病していない人にとっても、決してひと事ではない。

本稿では、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師の解説をもとに、てんかんとはどのような病気で、何が原因で発病するのかを紹介する。

○てんかん発作を繰り返す病気がてんかん

てんかんとは、脳のニューロンに突如として発生する激しい電気的な異常興奮によって現れるてんかん発作に伴い、さまざまな症状を呈する臨床疾患群のことを表す。

ニューロンは普段、規則正しいリズムで活動をしているが、このリズムが突如として乱れることによって発作が起きるという仕組みだ。そして、てんかん発作は通常繰り返し起きるため、頻繁に発作が起きて初めててんかんと診断される。

てんかんの特徴の一つに、てんかん発作時の症状が実に多岐にわたるということがあげられる。また、てんかんにはさまざまな分類法がある。以下に発作型分類に基づき代表例をまとめたが、これら以外にも複数のてんかん発作がある。

強直(きょうちょく)発作……突然意識を失い、歯を食いしばって両脚が固まるといった症状を呈し、強直したまま倒れこむケースもある。個人差はあるが、症状は数秒から数十秒ほど続くのが一般的とされている。

間代(かんたい)発作……ひざを折り曲げる格好をとり、手足をガクガクと曲げたり、伸ばしたりするけいれんが起きる。

強直間代(きょうちょくかんたい)発作……強直発作と間代発作が起こるタイプ。意識を失い全身が硬直する強直発作に続き、手足のけいれんが現れる間代発作が起きる。

欠神(けっしん)発作……一定時間にわたり意識が消失するといった症状が出る。個人差があるが、消失時間は数十秒ほどとされている。小児に多い発作とも言われており、頻繁に発作が起こると「集中力に欠ける」などと思われてしまう可能性もある。

複雑部分発作……徐々に意識が減衰していき、周囲の状況がわからなくなるような意識障害がみられる発作。上述の欠神発作やこの複雑部分発作のように意識の減衰および消失を伴うてんかん発作は、交通事故を招きやすい。

●てんかんの原因には2つのパターンがある
てんかん発作の種類がわかったところで、次はてんかんの原因について福島医師にうかがってみた。てんかんは原因別に「特発性てんかん」と「症候性てんかん」の2つに大別できる。前者が先天性、後者が後天性に分類できると考えてよい。

まず特発性てんかんだが、頭部CTやMRIなどの画像検査をしても異常が見つからないため、なぜ特発性てんかんを発病するのか、その原因自体は明らかになっていない。発症年齢や脳波所見から診断する。遺伝による家族内発生や、脳の発育形成過程における発育異常などが原因ではないかとみられており、発症年齢の大多数は乳幼児から10歳前後。

症候性てんかんは、別の脳疾患を患った結果として発病するケースが多いと福島医師は解説する。

「症候性てんかんは主に脳梗塞や脳出血などの脳卒中、あるいは脳腫瘍や頭部外傷などといった何かしらの病気やけがに罹患した後、2次的に起きるてんかんのことを言います。そのため成人、特に65歳以上の高齢者では症候性てんかんになる頻度が高くなってきますね」

脳に何らかの傷害を受けた場合は、後々にてんかんを発病する可能性があることも念頭に置いておいた方がよさそうだ。

○てんかんの発病率は1%程度

日本てんかん協会によると、てんかんの発症率は100人に1人だという。単純計算すれば、国内には120万人以上のてんかん患者がいることになる。これだけ多くの人が苦しんでいる一方で、症状への理解が進んでいない現状があるのではないだろうか。

例えば、てんかん発作は見た目のインパクトが強い症状が伴うことが多いため、見ず知らずの人が初めて目の当たりにすると、患者が奇異の目で見られてしまう恐れもある。

「そうなってしまうと患者さんは精神的にひどく落ち込みますし、『また大勢の人前で発作が起きたらどうしよう』と精神的な不安を抱くようになります。そうなると、人目に付く場所に行きづらくなりひきこもりになってしまう可能性もありますよね」と福島医師は危惧している。

有病率が1%台、ないしは0%台の疾病に対して理解が進むような社会へと早急に変革するのは難しいかもしれない。ただ、そのような社会が一日も早く実現できればよいことに間違いはないはずだ。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。

(栗田智久)