1得点・2アシストと出色の働きを見せた久保は、UAE戦と同様に好パフォーマンスを披露した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[W杯アジア最終予選] 日本 4-0 タイ/3月28日/埼玉

 内容に課題は残ったが、妥当な結果だろう。序盤から積極的に攻めたタイに何度かチャンスを与えたが、要所を抑えつつ、チャンスをきっちりモノにした。貫禄すら感じたその戦いぶりは、率直に素晴らしかったと思う。

 結果的に4ゴールが生まれたこの試合において、なにより大きかったのは、前回のUAE戦と同じように、リズムを掴んでいるなかで先制点を奪ったことだ。久保のクロスを岡崎がフリックするような形で香川に預け、フィニッシュまで持ち込んだ一連の流れは非常に良かった。キックフェイントでDFのマークを外し、絶妙なコースにシュートを決めた香川も素晴らしかった。

 ただ、そのきっかけを作った久保の判断とプレーの質も称えたい。右サイドで味方からパスを受け、迷わず仕掛けてグラウンダーのクロスを送ったことで、タイの守備陣は完全にボールウォッチャーになっていた。シャープな動きを繰り出す久保のプレーに、マッチアップした相手のDFも参ってしまったんじゃないだろうか。それくらい、この日のパフォーマンスは際立っていた。

 2点目をアシストしたクロスも見事で、まさに「ここしかない!」というものだった。久保と言えば、両足のシュート精度の高さが持ち味だが、あんなに良いクロスを持っているとは、正直驚かされた。後半に自ら決めたシュートももちろん素晴らしかったのだが、個人的にはそれ以上のインパクトがあったので、今後が楽しみで仕方がない。

 そんな久保の活躍に触発されるように、先発に復帰した岡崎にゴールが生まれたのも好材料だろう。UAE戦では決定機を外すなど良いところがなかったが、久保のクロスにいち早く反応しヘディングで叩き込んだ“らしい”得点で健在ぶりを示してくれた。これをきっかけにレスターでも結果を残してほしい。

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 今回のUAE、タイとの2連戦に臨むにあたって、チームには少なからず不安要素があった。大黒柱の長谷部が負傷離脱し、エースの本田はクラブで出番を失っている状態のなか、苦手とする中東のアウェー戦で、果たして勝利を奪えるのかと……。

 しかし蓋を開けてみれば、そんな不安は見事に消し去られた。むしろ、今後に向けて実りある2試合だったのではないか。特に注目したいのがチームとしての戦いぶりで、ハリルホジッチ監督が目指してきた「縦への意識」は随所に感じられるようになった。そして、それが結果に結びついてきたのはなにより喜ばしい。

 今予選で唯一の黒星となっている昨年9月のUAE戦では、ショートパスをつないで、とにかく崩すことに固執していた。それはハリルホジッチ監督が目指すサッカーというより、ザッケローニ監督時代に標榜していたポゼッションサッカーに近い形だった。

 その頃は、ハリルホジッチ監督が就任して約1年半が経過しても依然としてスタイルが浸透し切れていない印象を受けたのだが、約半年を経た今、ようやく形になってきている。1対1の局面で縦に仕掛けられる原口や久保が活躍できているのは、戦術が上手く浸透している証なのだろう。

 ただ、だからと言ってまだ安心はできない。タイ戦を見る限りでは、攻守の両局面において、ポジショニングや連係に課題ははっきり表われた。ボランチに入った酒井高のパフォーマンスはお世辞にも良いとは言えなかったし、左サイドの原口を効果的に活かせていなかったようにも映る。そこは、6月の最終予選(イラク戦)に向けた課題としてとらえるべきだろう。

 世代交代が進まず閉塞感が漂っていた半年前に比べると、良いムードが生まれつつあるのは確かだ。ライバルの一角であるUAEが敗れるなど風向きも悪くないが、気を緩めず、この良い手応えを次回の戦いへ是非とも生かしてほしい。