昨今、中国を訪れるアフリカ人が増加、中には不法滞在者として違法ビジネスに手を染める者もおり、中国国内で大きな社会問題となっています。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、この事態を「カネにものを言わせる習近平のバラマキ外交」が招いた結果であると一刀両断、さらに「習政権のアフリカ戦略は早晩、破綻せざるをえなくなる」と断言しています。

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中国へ向かうアフリカ系黒人の流れがとまらないようです。

ここ数年、習近平は積極的に外交を進めてきました。欧米はもちろんですが、アフリカ諸国へのアプローチも実に激しいものでした。

その理由は、資源獲得のためだったり、国連で中国支持を取り付けるためなど、さまざまな理由が挙げられますが、大きな目的のひとつに、いくつかのアフリカ諸国と同盟関係を持っている台湾に当てつけ、台湾の同盟国を親中国にして同盟関係に水を差すということも含まれています。

そもそも中国は国共内戦に勝って人民共和国を建国してから、中国は「世界革命、人類解放」を目指してかなり積極的にアフリカに社会主義を浸透させようと工作していました。

文革中、中国が世界から孤立していた間も、アフリカに向けて革命工作をしながら『人民日報』は毎日必ず発行されていました。台湾が国連から脱退した時も、中国と台湾のアフリカを巡っての外交樹立競争は続いていました。

台湾は主に農耕面などでの援助を、中国は主に鉄道建設などの援助を続けていましたが、陳水扁政権後期になるとアフリカによる金銭の要求がエスカレートしてきたため、台湾は付き合いきれないとばかりにアフリカ争奪戦から離脱しました。かわりに日本が登場し、その後は日中によるアフリカ争奪戦が繰り広げられたのでした。

それはともかく、近年、習近平はアフリカの歓心を買うために巨額の援助を申し出ており、上記の記事によれば、中国は2014年にナイジェリアの高速鉄道建設に131億ドル(約1.5兆円)を投資したほか、今年1月にはさらに400億ドル(約4.6兆円)の出資を発表。国策で展開する中国語学校・孔子学院も複数開校させているそうです。

ビザの取得も容易にして、互いに往来できるようになったため、中国にはアフリカ系黒人が急速に増えています。特に、世界の工場と謳われた広州には商売目当てのアフリカ人が急増しており、犯罪も増加しています。中でも広州にいるナイジェリア人は30万人ともいわれています。実際、広州のアフリカ街では人口の8割が黒人だというレポートもあります。

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多くのアフリカ系黒人は、中国製の品質の悪い安物を大量に仕入れ、それを持ち帰って本国で売るために訪中しているようです。扱う商品は何でもありで、衣料品や食品などから電化製品まで様々です。訪中した人々の中には、短期ビザのまま本国に帰らず不法滞在者として中国に居残り、麻薬や密売などの犯罪に加担しているケースも少なくありません。

カネにものを言わせる習近平のバラマキ外交は、国内でも評判が悪く、習近平はその汚名を返上するのに躍起になっているようですが、そこまでして手に入れた同盟関係も、カネでつながっているだけの関係であるため相互信頼とはほど遠い関係です。

もちろんカネにつられて台湾と国交を断絶すると言い出す国もありました。西アフリカのサントメ・プリンシペという小国は、カカオの生産などで財政を賄っていますが世界でも最貧国の一つで、もともと台湾と国交がありましたが、去年末、台湾との断交を発表しました。中国が財政支援をするかわりに「一つの中国」を認めるように圧力をかけたためではないかと報道されています。

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確かに、カカオの生産現場は過酷で、子供の労働も問題視されているほどであり、最貧国にとっては中国の援助は何にも代え難いチャンスかもしれません。

一方で、カネではなびかない国もあります。西アフリカのブルキファソという国は、500億米ドル(約5兆6,900億円)を供与する代わりに、台湾と断交して中国と復交することを持ちかけられましたが、ブルキファソのバリー外務・協力・在外ブルキナファソ人相は、「台湾は我々の友であり、パートナーだ。金で台湾を裏切ることはない」と述べ拒否しました。

それに対して台湾外交部(外務省)も、「(ブルキナファソと)台湾との関係は安定している」と強調したとのことです。

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結局、カネでつながっている中国とアフリカは、人々の関係もカネでつながったものにしてしまっています。商売のために中国に押し寄せるアフリカ系黒人は、べつに中国が好きでやってくるわけではありません。

カネでしかつながっていない関係はとても脆いものです。互いに相手を非難して見下すような関係は、長続きはしません。台湾とブルキファソとの関係のように、互いに相手をパートナーとして認識し、尊重して初めて同盟関係が結べるのです。

そのような意味からも、習近平のアフリカ戦略は早晩、破綻せざるをえなくなるでしょう。

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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』

著者/黄文雄(記事一覧/メルマガ)

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

 

出典元:まぐまぐニュース!