相手DFとの間合いを測りながらタイゴールを射抜いた香川。貴重な先制点となった。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 最下位のタイを相手に4-0と、一見順当な勝利を収めたように見えるけど、ゲームの内容としては、そんなに諸手を挙げて褒められるようなものではなかったね。大差はついたけど、スコアほどの開きはなかったように思う。  印象的にはタイのほうがよく攻めていたと思うし、川島のビッグセーブによって失点にはならなかったけど、危ない場面が本当に多かった。前半のうちに1点返されていたら、あるいは後半の立ち上がりに先にとられていたら……。ゲームの流れが変わっていてもおかしくはなかった。  タイにしてみれば、この試合を落としたら、もうワールドカップは遠退いてしまうという想いもあっただろう。立ち上がりからの積極的な姿勢に、この試合を絶対に取るんだという気迫が感じられた。実際、序盤は日本も少し引き気味になる場面があったからね。  そういうなかで、ゲームの流れを序盤、一気に変えたのは香川と岡崎のゴールだった。香川のゴールは日本のファーストシュートだった。細かいタッチから自分のタイミングに持ち込んだテクニカルなシュートだったね。一方の岡崎はニアサイドで相手DFの前に潜り込んで豪快なヘディングシュートを叩き込んだ。いずれも、欧州で揉まれてきたふたりが見せた“ベテラン”らしい味のある点の取り方だった。さすがは欧州組と言えるゴールだったんじゃないかな。  このふたつのビッグプレーが、その後のゲームの進行を安定させていったように思うよ。岡崎が代表通算ゴールで歴代3位(50得点)? しばらくゴールはなかったけど、これをきっかけに勢いづいて、私の記録(歴代1位の75得点)にも迫ってくるんじゃないかな。  そして、経験豊富な選手たちとともに、前線で輝きを放っていたのが久保だった。UAE戦に続くゴールとアシストで、さらに自信を深めただろうし、なにより3点目は、後半立ち上がりに波状攻撃を食らっていた中で生まれたゴールだったから、より価値のある一発になった。  ただ、やはりこの日は守備陣の健闘なくして勝利はあり得なかっただろう。とりわけ、PKストップなどあわや失点の場面を何度も凌いだ川島は、MVP級の活躍だったと言えるね。 

【日本代表PHOTO】タイ戦の美女サポーターたち♥


 そして、今回のUAE戦、タイ戦を通じて、チーム内競争はどんどん熾烈になってきた印象だ。怪我人が増えてしまったのは懸念材料だけど、ポジション争いが活性化されたのは、日本代表にとって良い傾向なのでは。  前線では、UAE戦で大迫が安定感のあるポストプレーを見せ、タイ戦では岡崎がらしいプレーでゴールを奪ってみせた。中盤でも怪我の長谷部に代わった今野が攻守両面で大車輪の活躍。その今野の離脱によって、ボランチに入った酒井高もまた及第点のプレーでオプションになり得ることを証明したよね。  さらに正GK争いやトップ下の香川と清武の競争も、まだ決着がついたわけではないし、センターバックを除けばほとんどのポジションで確固たるレギュラーはいないように感じる。  そうしたなか、この2連戦でハリルホジッチ監督がなんとなく手探り状態で起用していたように見えたのが本田だ。この2試合はともに勝っていたなかで、ゲームにより安定感を持たせるために投入していたような印象があるけど、久保が好調を維持している限り先発起用はないように思えるよ。  タイ戦では、これまで起用されていた右サイドではなく、左サイドでの起用となった。もちろん、右でプレーしていたのは久保であり、今の優先順位が久保にあることは確かなようだ。このあたりは、なんだか本田のプライドをくすぐるような起用の仕方にも映った。現状のままでは先発の座、従来のポジションを取り返せないのは、本田も分かっていると思うのだが……。  本田に限らず、今後のポジション争いのカギになるのは、やはりそれぞれの所属チームでのパフォーマンスということになるだろう。欧州のシーズンはあと2か月足らずで終わる一方、国内組はシーズンの真っ只中。移籍や負傷離脱した選手たちの状態も含めて、次の6月13日に行なわれるイラク戦をどういった状況で迎えているのか、気になるところだ。