韓国南部珍島・ペンモクギルに立てられた開発事業計画の看板(2017年3月21日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】韓国で2014年に300人以上の死者・行方不明者を出した旅客船セウォル(Sewol)号沈没事故は、現場付近の商業にも大きな打撃を与えた。だが先日船体の引き揚げ作業が完了したことによって、経営者らは、自分たちにも運が向いてくるのではないかと期待を寄せている。

 セウォル号が沈没したのは、韓国南西部沖合の群島のある海域。ここには1700の島々が点在しており、同国最大の海上国立公園である多島海海上国立公園(Dadohaehaesang National Park)に指定されている。岩肌の多い島々が点在し、このうち大きめの島にはビーチやハイキングコース、海に面した宿泊施設などが整備されている他、寺院があり、祭りなども行われている。

 沈没現場に最も近い大きな島、珍島(Jindo)の南側にある港ではかつて、海上に出る釣り客や観光客のためにモーターボートがチャーターされていた。だが今ではモーターボートは桟橋に係留されたままで、所有者らは近くで暇そうに座っている。ある船長によれば、主な顧客だった釣り客らがこの海域を避けるようになったため、客足は半減したという。

 船長は、「釣り客らはここを悪魔の海域と呼んでいる」と語った。「大勢の若者の命が失われ、雰囲気も荒涼としている」

 取れたての魚介類も、かつてはこの地域の名産の一つだったが、事故によって需要は壊滅的に落ち込んだ。

 セウォル号沈没事故は、韓国史上最悪規模の海洋事故で、犠牲者の大半は高校生だった。

 事故は大きな論争を巻き起こし、最終的に捜査チームは、事故原因は人為的な要因が大きく、違法な船体改造や貨物の過積載、乗組員の経験不足、セウォル号の運航会社と規制当局との癒着関係などと結論付けた。

 地元当局者のチェ・ミヌ(Choi Min-Woo)氏によると、最近では一時期よりも観光客も増え、その数は毎週末100人を超えるという。しかし、こうした人々は、ペンモクギル(Paengmok)の神社で犠牲者に手を合わせると、地域に滞在せずに立ち去ってしまう。

■観光開発事業の予定地も空き地のまま

 イム・ジョンスク(Lim Jung-Sook)さんは、事故のわずか1年前にこの島にゲストハウスをオープンさせた。開業後の最初の1年間は、繁忙期にはツインベッドの客室料金を1泊300ドル(約3万3000円)に設定していたが、それでも満室だったという。しかし、沈没事故の後には売上が大幅に落ち込んだ。

 イムさんはAFPに対し、「友人たちでさえ、ここに来ることを嫌がる。こんなひっそりとした雰囲気の中で、サングラスや麦わら帽子を身に着けて休暇を過ごしても居心地が悪いって言うんです」とこぼした。

 ペンモクギルへ行く途中にある空き地の真ん中には、看板が立っている。看板には、2014年12月から2017年12月にかけて、宿泊施設やショッピングセンター、レジャー施設などを備えた文化複合施設をこの場所に建設する具体的な構想が記されていた。

 珍島郡を対象とする数百万ドル規模の観光開発事業の一環として行われたものだ。だがこの場所は、沈没事故で行方不明になった子どもたちの遺族が、遺体が発見されるのを待ちながら寝泊まりするのに使われてきた。

 現時点では、開発計画の終了は3〜4年後になると見込まれている。だが、その頃までには珍島が「悪魔の島」というイメージを払拭できているのではないかとチェ氏は期待を抱いている。
【翻訳編集】AFPBB News